三章 4-2

     *     *     *


「……どう見ます」

 イオからの書簡を前にして、ラストは厳しい表情でかぶりを振った。

「わからない、というのが正直なところね。でも、捨て置くことはできないわ」

 イオの書簡には、レゾリーヴに魔法使いがいた、とだけあった。魔法使いは互いの存在を感知できるという。徒人のロヴァルにはわからない感覚だが、気配を察知するのと同じようなものだと思うことにしている。

 ロヴァルとしては、そんなにほいほい魔法使いがいてたまるか、というのが本音である。町に一人、二人と存在するならば、割合としては医者と同じようなものだろう。少ないことは変わらないが、もっと周知されてもいいはずだ。異能だと見なされなくなれば、イーグルやリーフ、イオが己の力を隠さずに済むようになる。

 冗談めかして、しかし半ば以上本気で申し出てみる。

「私が出るというのはいけませんか。ついでに見習たちも回収してきます」

「あなたを出すならわたしが行くわ」

「それじゃ本末転倒です」

「そういうことよ」

 笑顔で返され、ロヴァルは引き下がった。

「大体、誰が調査に行くとしても、それまで、疑惑の対象がレゾリーヴに逗留している保証はないもの。……でも、そうね。もう四の五の言っていられないわね」

 言いながらラストは書簡を折り畳んだ。それをしまい込み、息をつきながら立ち上がる。

「護衛兼監視役に、イオの話を聞くよう鳥を飛ばすわ」

「通じますかね? 監視役はイオが魔法使いだって、知らないでしょ。イオも話したがらないでしょうし。むしろエイリルの方が聞き出せるんじゃないですか」

「そうね。でも彼女に明日帰ってこいというのは無理でしょう。馬の扱いを教えていないもの。ああもどかしい」

 結局、イオから話を聞くには彼らの帰りを待つしかない。武闘大会は今日には終わるはずなので、順調にいけば三、四日後には帰ってくる。

「……仕方ない、監視役にイオだけ攫ってこさせましょう」

「思い切った方法ですね」

「情報は早いほどいいわ」

「了解。鳥は飛ばしておきます」

「そう? ではお願い」

 請け負ってロヴァルはラストの執務室を出た。厩へ足を向ける。鳥舎は厩の隣にある。

(何もなければいいんだ、取り越し苦労であれば……)

 ほいほい魔法使いがいてたまるか、とは思うが、極端な話、イーグルにあだなす者でなければロヴァルにはどうだっていい。願わくば、たまたまれレゾリーヴを訪れていた、アールヴレズルに無関係な誰かであってほしい。

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