第23話 初デート

 明日は待ちに待った初デートの日だ。


場所は彼の贔屓にしている料亭『錦』だ。

18時30分に予約している。


彼は私を自宅まで迎えに来てくれた。


私は車に詳しくないが彼の黒い車のハンドルは左側についていた。


彼は車のドアを開け、エスコートしてくれた。


今日は、この日のために新調した、淡いパステルブルーのワンピースに白いパンプスを合わせている。


彼の反応が気になった。


しかし彼はファッションについては特に触れてこない。


ただ、ひたすらに運転しているだけだ。


彼の頬はとても血色が良かった。


やがて彼は言った。


「温度は大丈夫ですか?」


私は「丁度良いです。」と答える。


「、、、、、。」


沈黙が車内に広がる。


私は少し不安になる。

何か話題を振るべきだろうか。


「あの、好きな芸能人は誰ですか?」


私は、この時、自分の質問が的外れであることに気づかずにいた。


彼は言った。


「YURIKAさんに決まってるじゃないですか。」


確かにその通りだ。

私は次の質問を考えた。


しかし妙な緊張感が私の頭の回転を遅くする。


すると彼が口を開いた。


「百合華さんの好きな有名人は誰ですか?」


私は即答した。


「ワン太郎秋村です。」


ワン太郎秋村は人気急上昇中のピン芸人である。

40代後半の小柄なオジサンだ。


運転席の彼を見ると、何故か難しい顔をしていた。


ワン太郎秋村のことがあまり好きではないのだろうか。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る