第19話 優しい人

 そのカフェにはテラス席があった。

今日みたいな晴れた日はテラス席に人気が集まるらしく、屋内の席はほとんど空いていた。


彼は屋内の窓際ではない端のテーブル席に、ちょこんと座ってコーヒーを飲んでいた。


私を見て礼儀正しくペコリと頭を下げる彼は、やはり可愛らしかった。


私も同じようにペコリとお辞儀して彼の向かいの席についた。


私の方から口火をきった。


「あの、本当に失礼な言動をしてしまって申し訳ありませんでした。」


私は、そう言って頭を下げた。


丁度、その時ウェイターが注文を取りに来た。


少し変な空気が流れている。

ウェイターはタイミングを間違って気まずそうにしていた。


私は速やかに彼と同じコーヒーを注文した。


ウェイターも速やかにカウンターへと戻って行った。


彼が言った。


「あの、僕は本当に何1つ、不愉快な思いなどしていないんです。

僕は本当に嬉しかったし夢のようだと思いました。

だから、あの、、、。」


彼は明らかに緊張していたが、やがて決心したように言った。


「YURIKAさんが望むなら、僕は喜んで執事になります!

結婚を前提に僕をあなたの執事にしてください!!」


おそらく私はポカンと口を開けていたと思う。


そして、何故か肩の力が抜けたような気がした。



やはり彼は優しい人なのだ。

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