◆第八章-真と偽のはざま-
第27話*空疎-くうそ-
「どうか」
「あの
リュートは合流したベリルを一瞥して答えた。
「味方が増えたのは頼もしい」
返答を聞いてベリルはマノサクスとセルナクスに目を向けず発し、今度は躊躇わずにハンドガンを握る。
「あれは何なんだ?」
「初めて見るよ」
二人はやや
「ボナパスだ。コルコル族が名付けた」
「俺たちは、あいつを倒すために召喚された」
それに、マノサクスとセルナクスはハッとする──コルコル族たちが勇者を召喚したとは聞いていても、その理由までは知らずにいた。
魔導師たちはそこまで知っていたのだろうか。
いや、そんな事よりも。評議会はどうして、勇者が呼び出された理由まで知ろうとしなかったんだ。
いつもなら、すぐさま追求していた事柄ではなかったのか。
知っていれば放置などせず、対処しなければならない案件だ。なのに、評議会は議題にあげることも、報告すらしなかった。
「──ウェサシスカの方針か」
セルナクスは苦々しく舌打ちした。
長らく続いた静観の姿勢が、ここにきて悪法となっている。今回の件に関してウェサシスカは怠慢、極まりないじゃないか。
要石の件がなかったら、こんな獣がいることを俺たちはまったく知ることがなかった。
ウェサシスカ自体に危険が及ばない事柄には関心がないのであれば、それはもうウェサシスカの存在意義を無くしているも同然だ。
「本当、オレたちって情けないよな」
それにマノサクスを見やる。
「無関係な人間を生け贄にしようとしたり。なんでもかんでも知らんぷりしたりさ」
困ったような笑みにセルナクスは顔をしかめ、ボナパスに視線を戻した。
「ああ。そうだな」
つぶやいて、自分たちの度量の狭さに奥歯を噛みしめた。
悪いのは評議会だけじゃない。それに頼り切りだった俺たちにだって責任がある。レイノムス様に談判するのは、こいつを倒してからだ。
「私は人以外とあまり闘った事がない」
ベリルは前置きし、決して視線を外さずボナパスとの距離を保ちつつ以前との違いを探る。
「お前たちの経験と感性が頼りだ」
私はそれを感じ取り、対応していけるように努力しよう。
そう言って右に移動すると、リュートは左に移動した。マノサクスたちは、やや後ろで瞬時に動けるように全体を視界に捉え体制を整える。
「風は有効だ。使いどころを見逃すな」
「解っている」
答えてベリルを一瞥した。
構えた剣の切れ味だけではボナパスは倒せない。とはいえ、どこまで通用するのか。あまり強力だと周囲を巻き込んでしまう。
元より、それほどの力を使うつもりはないが──リュートは目にしただけで強さを増したと感じるボナパスを前に、剣の柄を強く握りしめた。
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見せかけだけでしっかりした内容や実質がないこと。また、そのさま。空虚。
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