第11話 シュリーの母
インタビューしてからというもの、翔子はすっかりシュリーファンになっていた。「最も敬愛するアーチスト」と和也が言う気持ちがよくわかる。いや、今の翔子にとっては、音楽的な実力というよりも、「ギアー」をアイドルとして捉えていたファンの心理に近い。デスクのパソコンに向かえば、「シュリー・ユステール」か「ギアー」について調べ続けた。
しかし、シュリーの経歴は空白と謎が多く、ネット上で新しい情報を見つけ出すのは困難だった。クラシック音楽から転向した後「ギアー」に参加し、大ヒットを飛ばすまでは共通の記述としてどこにも載っている。そして、最後のワールドツアーでは来日したが、大阪、東京の公演は健康上の理由で出演ができず(本当の理由は、行方不明だったが)、札幌の公演のみ出演したことで話題になったことも確認することができた。だが、その後『Fox Tail』で音楽監修の仕事をするまでの期間については、その経歴を辿ることはできなかった。
「シュリーの父親はユステールブランドの創始者だったわね・・・。」
翔子は、シュリーについての調査をひとまず置いて、その父である「ジャン・デニ・ユステール」をキーワードとし、調べ始めた。ユステール氏は、二十代の前半からデザイナーとして頭角を現し始め、比較的若い時期から世界を舞台に活躍している。プライベートでは、二十二歳で結婚、二十九歳で離婚して以来、今日まで独身ということになっている。そのユステール氏が一度だけフランスのゴシップ誌に取り上げられたことを翔子は偶然知った。それは、ユステール氏には愛人がいる、というものだった。セーヌ川のクルーズで日本人女性と過ごしている様子が記事として取り上げられたのだ。妻の離婚とその記事の時期は一致しており、離婚の原因を明らかにしているように見えた。しかし、ユステール氏は離婚後、誰とも結婚していない。
「へえー日本人の恋人か・・。ちょっと素敵。でも再婚したわけじゃないのね。」
日本人の恋人とも別れたのだろうか、と翔子は考えた。あれこれと思い巡らすうちに、ふと疑問が生じた。シュリーの母は誰なのだろうか、と。ユステール氏は元妻との間に長年子どもがいない状態が続いた。そして、シュリーは、まさにその離婚した年に生まれている。そして、日本人の恋人の記事…。シュリーのプロフィールの中に、母親の名前は一切出てこない。この想像に翔子はなぜか胸が高鳴った。しかし、シュリーには日本人らしき外見上の特徴はないような気もする。それでも記者としての血がさわぎ、どうしても確認したくなった。
翔子は、翌日「ホテル・TOKYO」のロビーでシュリーを待ち伏せようと試みた。その狙いは2時間足らずで成功した。シュリーが一人で外出から戻ってきたのだ。サングラスをかけ、ジーンズ姿で目立たないラフなスタイルだが、やはりどこにいても人目を惹く。翔子は、シュリーを追いかけ声をかけた。
「ユステールさん、こんにちは。」
シュリーは振り返った。そして、サングラスを少しずらして、相手を確認しようとした。
「先日、『Fox Tail』の初日に取材をさせていただいた者です。」
シュリーは、しばらく間をおいた後、思い出したように「ボンジュール」と言った。
「どうしてもお聞きしたいことがあって…。突然で申し訳ありません。」
翔子は、一瞬迷ったが、率直に切り込んだ。
「あなたの母親は、日本人ですか。」
シュリーは、サングラス越しに翔子の顔を見つめたまま黙っていた。その間はとても長いように感じられた。
「どうぞ、こちらへ。」
声は穏やかだったが、翔子は左手首をシュリーにつかまれ、強制的に引かれて行った。ロビーを横切り、廊下の奥にあるセキュリティー付きのドアを通り、エレベータに乗り込んだ。突然の出来事で翔子は自分の置かれた状況に混乱した。扉が閉まると、最上階への直通エレベータは高速で昇っていった。シュリーは操作盤の近くに黙って立っている。薄暗い照明の下でシュリーの背中から冷たい空気が漂い、それが静かな怒りのように感じられた。翔子は何も言い出すことができなかった。
22階でエレベータが止まると、シュリーは翔子を先導して、厚い絨毯引きの廊下を歩いた。最上階はスイート専用フロアである。シュリーは廊下の最も奥まった部屋のドアを開けた。
翔子はとまどったが、シュリーが振り向いて入るように促した時の有無を言わさぬ雰囲気に気圧され、続いて中に入った。室内の長い廊下を抜けると、リビングへの大扉が開けられた。20畳以上もあるかと思われるリビングフロアは、派手な豪華さではなくシンプルかつ都会的なデザインで、品がよいモノトーンの家具や照明が備え付けられている。室内にはおそらくシュリーが仕事で使うのだろう、キーボードを中心とした楽器とオーディオ機器、そして一時的滞在としては相当数のCD類が壁際の棚にぎっしりと並べられていた。カーテンが開け放たれた大きな窓からは、東京の街が一望できる景観が広がっていた。
その時、居間の隣のドアが開いた。
「シュリー、帰ったの?」
顔を出したのは、先日楽屋にいた背の高い女性だった。
「ステファニー、プレスの取材を受ける。席をはずしてくれないか。」
シュリーの口調は早口で吐き捨てるように翔子には聞こえた。
「わかったわ。支社に用事があるから、4時に戻るわ。」
ステファニーは、一度ドアを閉めると、しばらくして大きな鍔のある真っ赤な帽子とサングラスをかけて出てきた。彼女は翔子を一瞥し、怪訝そうな表情を浮かべると、黙って出かけていった。
ステファニーはシュリーの指示で外に出たものの、「取材」のことが気になった。シュリーがプレスを自分から招くことは今まで一度もなかった。さらに気になったのは、女性を部屋に招きいれたことだ。シュリーの行動としては異例だった。シュリーは女性を寄せ付けない、といううわさがあった。もちろん、積極的にシュリーに近づく女性たちは多くいる。常に周囲にはシュリーに興味を持つ女性たちが取り巻いていたが、シュリーは特定の女性との関係を築くことはないように見えた。ステファニーはスティーブの命を受けて、シュリーのサポートのためアメリカから同行したが、女性としては自分が最もシュリーに近い場所にいるという自負を持っていた。日本に来てからの取材はいつも自分が同席して問題がなかったというのに、今日はシュリーの様子が違う、とステファニーは不満に思った。
「どうぞ、おかけください。」
シュリーは、まだドア近くにたたずんでいる翔子に向かって、ソファーを勧めた。翔子は真っ白なソファーの端の方に腰掛けた。シュリーは、バーカウンターの内側から柄の長いグラスを取り出し、シャンパンを注いだ。シュリーは、翔子の前にグラスを置いて、真向かいに座った。
「私、アルコールは…」
翔子は、仕事中なので、と言いたかったが、シュリーの強い視線にそれ以上の言葉が出なかった。
「乾杯しましょう。あなたの取材が成功するように。」
シュリーの声は挑戦的な響きを帯びていた。
楽屋でシュリーに会った時とは違って、翔子はどこか落ち着かず、ここへ来たことを後悔し始めていた。入ってはいけない猛獣のテリトリーに足を踏み込んでしまったように、不安が湧き上がってくる。シュリーは翔子から視線を外さずに、一杯目のシャンパンを飲み干した。翔子はシュリーの視線に耐えられず、うつむいてグラスに口をつけた。シャンパンを飲むことでいくらか気持ちが落ち着き、再びシュリーを見た。暫くすると、シャンパンの酔いが回ったせいか、シュリーの瞳の鋭い光がいくらか和らいだように見えた。翔子もほんのりと顔がほてり、少し緊張感が解けた。
「先程の件ですが、人前で聞かれるのには不向きな質問ですね。根拠があってのことですか。私の父に対する侮辱にもなりますので。」
シュリーの口調は相変わらず強く早かった。
「気分を害されたならば、本当に申し訳ありません。次回、発売する雑誌の特集で『ギアー』を取り上げるので、あなたのことを調べていたのですが、偶然、お父様のユステール氏が離婚された年に日本人の恋人がいたことを知ったのです。」
翔子は酔いも手伝っての弁解で、素直に本当のところを伝えた。シュリーはこれを聞いてますます厳しい口調になった。
「『ギアー』のことを記事にすることと、私の父の、しかも遠い昔の恋人のことに何の関係があるのです。」
「確かに関係ないかもしれません。でも、あなたのことを調べてもこの20年もの間のキャリアが見えてこなかったので、別の角度から調べようと思ったのです。ユステール氏は当時すでにデザイナーとして成功されていたので、日本人女性との恋がゴシップ記事として取り上げられました。つまり、離婚された年とこの記事が書かれた年とあなたが生まれた年が一緒だったので確認したかったのです。」
翔子は臆病になりそうな気持ちを抑えながら、記者としてのプライドを保とうと必死だった。
「あなたたちはいつもそうだ。」
シュリーは翔子をにらみつけた。翔子はシュリーが心底怒っていることを感じ取った。「あなたたち」とは、おそらくマスコミ全体のことを指すのだろう。
シュリーは、二杯目のシャンパンを注ぎ、あおるように飲み干した。翔子は彼のやや荒れた様子にびくびくと脅かされるような気分が続いたが、その表情や体全体から醸し出されるオーラに催眠をかけられたように、相手から目を離せなくなっていた。今まで抱いていたスマートで紳士的なシュリーの印象は失われ、逆に危険に惹きつけられることに快感を覚えるような、今まで経験したことがない感覚が起こってきた。それは逆らい難いマインドコントロールのように翔子を支配していった。
これがカリスマ性というもので、今の自分の状態はそれに魅せられてしまったファンの心理なのだろうか、と翔子は客観性を保ち、自制しようと強がった。しかし、シュリーは過去に多くの自分に興味を抱く女性と接してきた経験があり、今の翔子の心理状態を無意識のうちにキャッチしていた。それを利用してでも、今回は、翔子を自分の都合のよいようにコントロールする必要があった。
翔子は沈黙の間が耐えられなかった。そして語気を強めて言った。
「日本ツアーのあと失踪されて、『Fox Tail』の成功まで何をなさっていたのですか。『ギアー』ファン、いいえあなたのファンだったら、あなたのことを知りたいと思うはずです。どんな些細なことでも。私、この間の舞台を観て、本当に感動して、もし長年のファンだったらもっとその思いは強いと思った。だから、徹底的に調べて、記事にしようと思ったのです。」
翔子のあがきは続いた。
「私の友人に長年あなたを敬愛しているファンがいるの。だからわかるの。彼が偶然ドイツでミュージカルを観て、どんなに感激したか。」
シュリーは翔子を見つめて言った。
「そのご友人は、私自身の出自や生い立ちではなく、私の音楽を愛してくれているのでしょう?」
シュリーの声は穏やかで静かなものに変化した。翔子は、その言葉にしばし考え込んだ。
(たしかに、和也は「舞台に音楽を聴きに行く」と言っていた…。シュリーの母親が誰かということに彼は興味を示さないかもしれない…。)
「私は長い間、自分の名前を伏せて仕事をしてきました。だからシュリー・ユステールは音楽の世界から消えていなくなったと思ったファンがほとんどだったでしょう。その空白期間があっても私のことを忘れずにいてくれるのは、『ギアー』時代の活動に対する評価を持ち続けているということです。それは、私自身への興味ではなく、私を通して表現された音楽に対する評価だと思うのです。」
翔子はシュリーに自分の心を見透かされたように感じた。そして急に恥ずかしさがこみあげてきた。翔子は音楽に対する興味ではなく、シュリーという男性に対して興味を抱いていることを自覚した。
「私、ごめんなさい。会社に戻らなければなりません。」
翔子はソファーから立ち上がった。しかしアルコールと焦燥にふらついて足元が定まらず、ガラスのテーブルに遮られて前のめりになった。シュリーは翔子の体を抱きかかえるように支えた。
「大丈夫ですか。」
シュリーの声がささやくように耳元で響いた。甘くやさしい声だった。翔子は自制心を失い、シュリーの腕に身を委ねた。シュリーはそれをやさしく受け止めたが、狙い定めたように再び彼女の耳元にささやいた。
「私の母親は残念ながら日本人ではありませんよ。」
翔子はホテルから逃げるように外に出たが、その後は放心状態で高層ビルの狭間を歩いていた。腕と背中にシュリーに触れられた感触が残っている。初夏の午後の街中で翔子はさらに体温が上がっていくのを感じた。シュリーの声が耳から離れない。完全にシュリーに「はまって」いた。
そのとき携帯が鳴った。
「もしもし、翔子?」
和也だった。今最も話したくない相手の電話に出てしまった。
「今日、早く切り上げられそうだから、夕食でも一緒にどうかと思って。」
和也の声はいつも安心感を与えてくれる。翔子はやっとのことで答えた。
「ごめんなさい。今日は遅くなりそう。」
「そっか、残念だけど、じゃあ週末にでも。」
「うん。ごめんね。」
「なんだか、元気ないみたいだな。」
「大丈夫、少し疲れているだけだから。」
先ほどまで晴れていた空が雲に覆われ、大粒の雨が降り始めた。陽気に暖められたアスファルトに雨が激しく叩きつけられ、煙ながらあたりの気温を下げ始めた。翔子は雨に打たれながら歩き続けた。火照った体に雨が浸み込んでいく。生々しい感触を消し去りたいと思った。安易な行動をとった自分を後悔し、シュリーに対する興味本位で私情にかられたインタビューを心から恥じていた。それ以上に、シュリーに対する湧き上がるような好意を、どのように処理したらよいかわからなかった。それは容易には消えそうになかった。
その週の金曜日、翔子は朝からデスクの前で特集記事をまとめていた。しかし「ギアー」について書こうとするとキーボードの手が止まってしまう。そこだけ空白のまま時間が過ぎていった。
「松田くん、ちょっと。」
編集長が奥のデスクから呼びかけた。翔子は編集長の石川のところへ行った。
「今、シュリー・ユステールが正式な取材を受けるので、来てくれと彼のマネジャーから連絡があったぞ。」
翔子は驚いて聞き返した。
「正式な取材ですか?」
「ああ、先日、君が彼の取材をしたいので申し込んで欲しい、と言っただろう?」
翔子は思い出した。楽屋で取材をした後、編集長に改めて時間を取って取材をしたい、と頼んでおいた。翔子はそのことを忘れて、シュリーの母親のことを思いついた勢いで直接インタビューへ行ってしまったのだ。
「こちらが何も言わないのに、君のことを指名してきたよ。楽屋の取材で印象が良かったんだろうな。」
翔子は石川の言葉を聞き、さらに驚いた。シュリーの意図がわからない。
「私一人ですか…。」
「なんだ、一人じゃ困るのか。」
翔子はシュリーと再び一対一で向き合うことが怖かった。
「じゃあ、山本君に同行してもらうか。山本君、ちょっと来てくれないか。」
「はーい。何ですか。」
山本は翔子と同期入社の同僚だ。ロックだけでなく音楽全般に詳しく、今は翔子と同じ雑誌編集にあたっている。
「悪いが、これから松田君と一緒にシュリー・ユステールの取材に行ってくれないか。」
「え、今日ですか。」
翔子も取材が今日、しかも今からだとは思わなかった。
「へえ、シュリー・ユステールって元『ギアー』の…。ミュージカル音楽でリバイバルヒットですよね。松田さんが最近ずいぶんと熱を入れていたみたいですけど。」
「そうなんだ、だから取材の正式な申し込みをしていたのだが、一人で行きたくないというものだから。」
山本は翔子の顔を見た。翔子は困ったようにうつむいている。
「いいですよ。僕も彼の音楽は小学生の頃に聞いて結構気に入っていましたから。そのころは幼くて、日本でたった一度の伝説のコンサートには行けなかったですけれどね。」
約束の時間は十一時だった。水道橋の出版社からシュリーの滞在しているホテルまでは地下鉄で二十分もかからない。翔子と山本は指定の時間に間に合うように会社を出た。
「どうしたのさ。なんか今週元気ないみたいだね。夏風邪でも引いたの?それともマリッジブルーとか。」
翔子が十月に結婚式を挙げることは、すでに周囲の知人にも報告していた。
「なんだか記事がうまく書けなくて。」
「記事って、例のロック特集?」
「うん。」
山本とは仕事の帰りに何度か飲みに行ったことがある。人当たりがよく博識な山本には仕事の悩みを相談することもあった。
「さっき、『ギアー』の伝説のコンサートって言っていたけど、85年世界ツアーの札幌公演のことよね。」
「そうだよ。『ギアー』のワールドツアーは、アメリカから始まって、カナダ、ヨーロッパを回って、最後に日本に来ただろ。あの頃は『ギアー』全盛期の時期だったから、どこへ行っても超満員、大成功を収めていたらしいよ。特に中心メンバーのシュリーは、音楽の才能は豊かだし、あのルックスだろ。熱狂的なファンが多かったと思うよ。」
多くの車と人が行き交う交差点を渡った。今日も日差しが強い。真昼になればもっと気温が上がるだろう。
「この間、僕も『Fox Tail』の初日を観に行って、シュリー・ユステールを初めて舞台で見たけれども、若いね。四十過ぎのおじさんにはとても見えないな。ネットの掲示板でも話題になっていたよ。昔のファンたちが、全く変わっていない、と驚いている。再結成の要望も多いらしいよ。おそらく『ギアー』の人気が再燃するんじゃないかな。新しいファンを獲得してね。」
山本もシュリーについてよく調べていた。
「一体彼は失踪した後何をしていたんだろうね。そりゃあれだけアルバムが売れたから生活には困らなかっただろうけど。」
翔子はシュリーが「実名を伏せて活動していた」と言ったことを思い出した。再び疑問がわきあがってくる。なぜ名前を伏せる必要があったのだろう。
「一年前に今回君が取り組んでいる80年代ロック特集の提案を編集長にしたことがあってね、そのときに僕も『ギアー』に関してあれこれ調べてみたんだ。そのときは紙面の都合でボツになったけれど、シュリー・ユステールを調べても20年の空白は謎だね。ただ、彼は日本に特別な思いを抱いているのではないか、と思ったんだ。確信はないけどね。」
「それって、どういうこと?」
山本もシュリーと日本との関係を感じていることを知って、自然と語気が強まる。
「彼らのコンサートはヨーロッパまでは何事もなく進んでいた。でも日本にやってきたとたんシュリーは居なくなったんだよ。」
「え、居なくなったの?体調不良で出演できなかったって…。」
「表向きはそう発表されたようだね。当時、『ギアー』を日本に招いたプロモーターに話を聞くことができて、丸秘扱いだったらしいけど、ずいぶん前の話しだからね。シュリーは日本についたとたん失踪したことを教えてくれたんだよ。」
翔子はその事実に強く関心を抱いた。
「そして、プロモーターと『ギアー』側でかなり話し合ったらしい。結局シュリー抜きでコンサートをすることになった。シュリーの父、ユステール氏がそのように要望したのだそうだ。」
「デザイナーの。」
「そう、ブランド・ユステールが日本に上陸して人気を集めていたこともあって、ユステール氏の影響力は強かったのだろうね。『ギアー』はシュリーの音楽的才能がなければ成功しなかったけれど、ビジネス的にはユステールブランドとの裏での結びつきはかなり強かったらしい。
ではシュリーは日本に着いて失踪した後どこに行ったのか。日本を離れてどこか別の国へ行ってしまったなら本格的な失踪として理解できなくもない。でも彼は日本公演の最後、札幌会場に姿を現した。そのコンサートに参加したファンたちは、シュリーの現れ方を演出だと思ったらしい。コンサートが始まって1、2曲のところでステージではなく、客席の並ぶ通路を堂々と歩いてステージに上ったそうだよ。でもそれはメンバーも予想しなかったシュリーの突然の登場だったわけ。」
地下鉄のドアが目的地で開いた。二人は降りると、シュリーの滞在するホテルに最も近い地上出口に向かうエスカレータに乗った。
「詳しく調べたのね。最初から山本君に聞けばよかった。」
「はは。それじゃ面白くないだろ。君は君なりに取材したことを記事にしないと。」
「まあ、そうだけど。」
「さっきの話の続きだけれど、シュリーは札幌公演の翌日、再び失踪してしまった。そして、その約1ヵ月後、北海道のある病院に入院した記録が残っているんだ。」
「入院?その間、シュリーはずっと日本にいたの?」
「そうなるね。しかも北海道に。これはどういうことだろう。僕は調べてみたんだが、さっぱりわからない。ただ、シュリーは日本に何か思い入れがある、と僕は考えたんだ。」
翔子はやはりユステールのかつての恋人の日本人女性のことが気になった。
「ねえ、シュリーの前では絶対に言ってほしくないのだけど。」
「うん。」
「私、ユステール氏のことを調べたのよ。そうしたら、シュリーが生まれた年に離婚をしていて、しかもゴシップ誌にユステール氏の恋人の話が取り上げられたの。その恋人は日本人なのよ。」
山本の目が光った。
「なるほど、ユステール氏を調べたか。すごいね。その符号の一致は取材のしがいがあるね。」
「でも、お願い。絶対に本人の前では言わないで。」
翔子の様子にはどこか脅えるような感があった。山本は不思議に思ったが、それ以上何も言わずに頷いた。
二人はフロントで最上階の客に取り次いでもらうと、専用エレベータに乗った。翔子は山本の後ろで小さくなっている。
「何、どうしちゃったの?」
山本は笑いながら振り返って翔子を見た。
「ううん。何でもない。インタビュー、山本君が主導でお願いできる?」
「別にいいけど、僕はあまり英語が得意じゃないからなあ。」
22階についた。翔子は緊張した。呼び鈴を鳴らすと、しばらくしてステファニーが顔を出した。
「どうぞ、お入りください。」
「失礼します。」
翔子はステファニーが自分を見つめていることに気づいた。翔子も彼女を見たが、ステファニーは鼻先で笑った。そしてすぐに廊下を歩き始めた。
リビングでは、ヘッドホンをかけたシュリーが機材に向かって仕事をしていた。三人が入ってくると、シュリーは手を止めた。一瞬、山本の存在に驚いた様子だったが、すぐににこやかな表情を浮かべ、「ようこそ」と声をかけた。
山本はリビングに入ったとたん、部屋中を見回して感嘆の声を挙げた。シュリーは長期滞在のため、仕事に必要な音楽用の機材を部屋に持ち込んでいた。複数のキーボード、小さめのグランドピアノ、シンセサイザー、ギター類、そして、何百枚ものCDがぎっしり並べられたラック。こうしたアーチストの部屋で、取材ができることに喜びを感じているのだ。
「はじめまして。成文出版の山本です。本日は取材を受けてくださり、心から感謝しています。こちら松田翔子が舞台初日の取材ではお世話になりました。あの時は臨時の担当で松田が伺いましたが、音楽が専門ではないものですから、今日は、松田と共に担当の私が同行させていただきました。」
山本は翔子をうまくカバーしようと気を遣ってくれた。
「そうですか。歓迎します。たしか『ギアー』についての取材とお聞きしていますが、何なりとどうぞ。私が答えられることはお答えします。」
シュリーは、後の言葉を述べるときに翔子の方に意味ありげな視線を投げかけた。翔子はシュリーから視線を逸らした。
「それでは、早速取材に入らせていただきます。まずは『Fox Tail』のご成功おめでとうございます。この舞台の音楽監修をなさることになった経緯を教えていただけますか。」
「『Fox Tail』はヨーロッパに伝わる昔話を題材に、原作者ジッター・マイセンが書いたベストセラー作品です。私も以前読んだことがあったので興味を持っていました。それをミュージカル化するにあたって、マイセン氏が直接私に音楽監修を依頼してくれたのが、90年代の半ばのことです。」
「たしか、マイセン氏はあなたの父上、ユステール氏のご友人ですよね。」
翔子は突然の取材にも関わらず、山本が事前にここまで知っていたことに驚いた。
「ええ。マイセン氏とは私も幼い頃から面識がありました。彼からお話をいただいたときには、『ギアー』はすでに遠い過去のものだと考えていたので一度はお断りしました。しかし、彼は私の音楽が使用できないならばミュージカル化はしない、とまで言ってくださったこともあり、再度考え直しました。」
「失礼ですが、あなたはそのお話が来た頃、どちらにいらしたのですか。」
「アメリカです。」
「アメリカでは音楽活動はなさっていたのですか。」
シュリーは間を置いた。
「それについては、ノーコメントよ。」
ステファニーが口を挟む。
「失礼しました。では次の質問…。」
「いや、お答えしましょう。私はアメリカで音楽活動を続けていました。実名はもちろん使用していませんが。」
ステファニーと翔子は、揃ってシュリーの発言に驚きの表情を浮かべた。
「正直にお答えくださってありがとうございます。」
山本は、持参した半透明の書類ケースの中から、数枚のCDを取り出し、ガラステーブルに並べた。
「これらは、私の大好きなCDばかりですが、作曲者はすべて違う名前になっています。」
シュリーは嬉しそうな笑顔を浮かべた。シュリーには書類ケースの中のCDが見えていた。だからこそアメリカでの活動について応える気になったのだろう。翔子は山本の巧みな作戦に感心した。
「違う作曲者なのに、なぜこんなに共通点があるのだろうと不思議に思っていたのです。このうちの3枚はアルバムチャートで上位を占めましたね。これほど完成度の高いアルバムを作れるアーチストはあまりいません。でもあなたならば納得がいきます。」
シュリーは微笑むだけで山本のコメントには答えなかった。
「なぜ、実名を伏せられたのですか。」
「それは…。」
「これは、私の憶測ですが、あなたが最後に日本に滞在され、その後、失踪されたことと関係がありますか?」
シュリーの表情が一瞬こわばった。山本はその表情を見逃さなかった。翔子は山本の追求にはらはらした。
「当時、私は『ギアー』での役割を演じることに限界を感じていました。作曲に専念したくても『ギアー』はマスコミへの露出度の高いグループだったので、そのイメージを維持するためにかなりの労力を取られていたのです。言い訳と思われるかもしれませんが、私はアメリカで実名を伏せて仕事をすることで、自由に音楽活動ができたのです。」
「なるほど。それはわかるような気がします。」
「おかげで、今回の『Fox Tail』では、『ギアー』で使用した曲を過去のものとして思い切り編曲することができました。もし私がシュリー・ユステールのまま活動を続けていたら、過去の栄光にこだわって、難しかったかもしれません。」
シュリーの発言には一貫性があり、すべてが真実に思われた。だが、その奥にはまだ別の秘密があるような直感が山本には働いていた。
「あなたが取った行動は、われわれ80年代ロックファンにとって幸せな結果をもたらしたようですね。」
「そう言っていただけるならば幸いです。今回日本に来た甲斐があります。」
その後の山本の質問は、シュリーの今後の音楽活動を中心に聞くことで、型通りのものに収まった。プライベートな質問や、もちろん出自について聞くことはなかった。
「今回の来日ですが、いつまで日本に滞在されるのですか。」
「少なくとも『Fox Tail』の公演が終わるまでは。仕事の関係でもう少し延びるかもしれません。」
翔子は小さなため息をついた。シュリーはインタビューの最中、ほとんど翔子を見なかったが、そのため息が聞こえたのか、彼女に向かって言った。
「ですから、必要でしたらまたインタビューをお受けすることができますよ。雑誌が発売されましたら、ぜひ拝読させていただきたい。」
シュリーは自分の母について、記事にするのかどうかを疑っているのだ。翔子は先日の出来事によって、すでにそのような気持ちは消え去っていた。『ギアー』に関することを記事にすることさえ今の翔子には困難な気がした。
「ありがとうございます。もちろん雑誌が発売されましたら、すぐにお持ちしたいと思います。」
時計が正午過ぎを指していた。シュリーは二人が辞する際、自分も外出するため一緒に部屋を出た。
「山本さん、松田さん、もしお時間があるならば、ランチをご一緒にいかがですか。」
「え、本当ですか?」
山本はもちろんというようにすぐに同意した。
「ちょっと、山本くん…。」
翔子は困った表情を浮かべる。
「こんな機会めったにないんだから、もちろん行くでしょ。」
山本は小声でささやいた。
ホテルの2階に到着すると、広い廊下の奥にレストランがあった。シュリーは係りに頼んで先に二人を案内してもらった。窓際の眺めの良い席に案内され、二人は着席した。シュリーは5分ほどして戻ってきた。食前酒から前菜を食べ終えた頃、係りがやってきて、山本にメモを渡した。山本はそれを見ると困ったようにシュリーに告げた。
「大変申し訳ないのですが、急用が入ってしまいました。食事の途中で席を外すのは大変失礼とは思うのですが…。」
翔子は、自分だけ取り残されるのは敵わないと思ったのか、山本の袖を引っ張った。
「松田さん、悪いけど、あとは宜しく頼む。今担当している記事の取材先が今日の1時なら大丈夫らしいんだ。」
「残念ですが、またの機会もあるでしょうから。どうぞお気になさらないでください。」
シュリーは笑顔で山本を送った。
「山本氏はお忙しいのですね。」
シュリーは翔子を見据えた。インタビューに対する作られた表情と違い、シュリーの翡翠色の瞳には相手を誘惑するようなゆらぎが感じられた。翔子は先日もその視線に心が乱されていたのだ。
「なぜ、彼を連れてきたのです?私はあなたと話をしたかったのに。」
翔子は答えることが出来なかった。
「私のことが怖いのですか。」
言葉が自分を弄ぶように聞こえる。
「私はあなたに興味があるのです。だからこうして二人で話しをしたかった。」
翔子ははっとした。山本は意図して中座させられたのではないか。
「あなたが私の秘密を知りたいというならば、お教えしてもかまいません。でもそれはあなただけにしかお伝えしない。それを記事にするもしないもあなた次第です。」
「木下くん、レストランに予約してあるので、博士をご案内してくれ。」
「かしこまりました。」
和也は「ホテル・TOKYO」にインドのノーベル賞学者の接待のため来ていた。お昼時の人気レストランはほぼ満員だった。和也は入り口で予約の名前を告げ、案内に先導させ、客人の後ろに続いてテーブルに向かった。その時、窓際に見覚えのある人影を見つけた。
(あれ、翔子じゃないか?)
遠目ではあったが、翔子の斜め横顔を確認した。
(仕事かな。)
和也は翔子と向き合っている人物に視線を移した。見覚えのある後ろ姿だった。和也は驚きでその場に立ち止まった。
(シュリーが…なぜ、翔子と一緒に?)
再び和也は翔子の顔を見た。翔子の視線はシュリーに注がれていて周囲の様子は目に入っていないように見えた。
その時、後から入ってきた上司の教授が和也の近くまで来ていた。
「木下君、どうした。さあ食事にしよう。」
「は、はい。申し訳ありません。」
和也は二人の様子が気になりながらも、促されて歩き出した。和也の席からはかろうじて翔子の座っているテーブルが見えた。和也は食事が喉を通らず、右手奥の二人の姿ばかりが気になった。しばらくして、シュリーが席を立ち、翔子もそれに続くのが見えた。翔子は和也の存在に全く気づかないまま、レストランの出口に向かって行った。和也の動揺はピークに達した。
「申し訳ありません、少し失礼いたします。」
和也は食事を中断して、翔子たちを追いかけた。レストランを出ると、2階から1階に降りるエスカレータに二人の姿を認めた。和也は走ってエスカレータに乗った。二人は、1階ロビーからフロント前を通り、さらに奥へと続く廊下に進んでいった。和也はその後も追いかけ、廊下奥のセキュリティードアの前で足止めされた。二人はすでにスイート専用ドアの奥に入ってしまったようだ。和也は混乱していた。翔子があの舞台以来シュリーに強い関心を抱き始めていたのは知っていた。このところ仕事が忙しく、最近は毎日の連絡も怠りがちになっていた。だから翔子がどんな状況なのかを知らずにいた。秋には式を挙げるという安心感を言い訳にしていたのだ。
いや、仕事の関係だろう、と楽観的な声が聞こえてくる。翔子は雑誌の特集で80年代ロックの特集を担当していると言っていた。おそらくそのための取材をしているのだろう。和也は必死に自分を落ち着かせようとしていた。
和也はその場を立ち去りがたく、そのままその場に立ち尽くした。
自分の秘密を教えるというシュリーの言葉に誘われて翔子は再びシュリーの部屋へ上がっていった。相手に騙されていようといまいと、今の翔子にはシュリーに抗おうという意志が失われていた。シュリーの魔力にかかって理性に反する心地よさの中に浸りながら、秘密を知りたいという一抹の好奇心も捨てられずにいた。
部屋に戻ると、翔子はステファニーが出てきたドアを気にした。
「彼女は出かけた。」
シュリーの言葉に翔子はほっとすると同時にこの広い部屋で再び二人きりで向き合っている今の状況から逃げ出したくもなった。
シュリーは翔子にソファーを勧め、自分は窓際のデスクに寄りかかった。そして、外を遠く眺めながら、独り言のように語りだした。
「これからお話しするのは、真実かもしれないし真実ではないかもしれません。ただ私が記憶している話だというだけです。
私は母の顔を知りません。たとえ知っていたとしてもその人が母であると私は告げられたことがないのです。私は幼い時を父と二人で過ごしました。すでに父は仕事で多忙の毎日でしたから、私の慰めは音楽だけでした。子ども時代に一度だけ父に同行して、ユステールブランドが進出している世界中の都市に旅をしたことがあります。その旅の途中、東京のあるデパートで父の展示会が行われていました。そこへ、ある一人の日本人女性が訪ねてきたのです。父の様子から、おそらくその女性は、父にとってとても大切なのだろうということはわかりました。やさしい表情で私に語りかけるその女性に私は心を惹かれ、その人が母だったらどんなにいいだろうと思ったものです。しかし、女性の傍には小さな男の子がいました。
次にその女性に会ったのは、私が音楽学校に通っている頃でした。私はもちろん彼女を覚えていました。私は彼女のためにパリの街を案内しました。なぜか心が温かくなり、浮かれていました。まるで恋をしているかのように。たった一日のことだったのですが、一生忘れることのできない思い出になってしまいました。なぜなら、その直後、彼女とその夫の乗った飛行機が事故にあってしまったからです。日本には以前展示会で見かけた彼女の息子がたった一人で残されました。
当時は自分のせいで彼女が事故に巻き込まれ、彼女の息子から母親を奪ってしまったと思い込み、私は荒れました。やり場のない気持ちを落ち着かせるためには、やはり音楽しかなかった。しかし私の中の激しい感情を表現するにはクラシックでは行儀が良すぎ、そのことが元でロックの世界に転向したのです。」
シュリーはただ淡々と語った。
「しかし、時は流れた。それらの出来事も私の外では風化してしまった。」
声はさらに小さく静かに響いた。
「85年のツアーで日本にやってきたとき、彼女の息子に会って謝りたかった。そして日本に到着した後、いつの間にか地理もわからない東京の街をさまよっていました。」
「会うことができたのでしょうか。」
やっとの思いで、翔子は声を出した。シュリーはデスクから離れ、翔子の座るソファーに近寄った。
「ええ。」
心なしかシュリーが微笑んでいるように見えた。
「彼は両親を亡くしたにもかかわらず、明るく多くの仲間たちに囲まれて毎日を過ごしていました。私は彼がうらやましかった。私が母と思いたかった人と共に暮らし、思い出を刻んで、彼女が居なくなった後もそれを満たすだけの愛情に包まれていたのです。だから、彼に対して素直に接することができなかった。逆に彼を傷つけたいとさえ思ったのです。私の心は荒み、手がつけられないほどでした。」
シュリーは沈黙した。音楽の世界では大きな成功を収め人の羨む環境にあっても、シュリーの心の奥には深い孤独が広がっていたことを翔子は知った。
「エイジは、私を仲間にしてくれました。当時、彼とその仲間たちは幻の生物を追って北海道へと渡っていきました。」
(エイジ?名前かしら。)
「私もそれに同行し、そして札幌での公演に出演することができたのです。その後、北海道でひと月を過ごし、私は怪我をして入院をしました。」
(山本君が言っていたことだわ。)
「入院中に私は病院を抜け出し、そのままアメリカへ渡りました。もう二度と祖国へは戻らず、日本にいる仲間の元へも戻らないと決めて。」
翔子が気付かぬうちにシュリーは彼女の左側に近づいた。翔子は驚いてシュリーの方に向き直った。
「今の話を信じますか?」
シュリーは彼女の目を覗き込んで聞いた。翔子は金縛りにあったように動くことができなくなった。彼は翔子の細い肩を抱いた。栗色がかったブロンドの長い髪が翔子の顔を覆った。翔子はシュリーに身を任せていた。翔子はシュリーの体中から伝わってくる孤独の感情とともに何か美しいメロディーが聴こえてくるような気がした。
「美しい音が…」
言葉を遮るように、さらに強く翔子を抱きしめた。そして再びその目を見つめて言った。
「私のことを簡単に信じてはいけません。あなたのことを傷つけたくなってしまうから…。」
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