弐-8




ㅤ初めて会ったのは四歳の時、場所は幼稚園だった。

ㅤ千鶴は一人で部屋の隅にいた瓏衣に一緒に遊ぼうと声をかけた。

ㅤところが、瓏衣は激しく拒否。睨みつけられるという威嚇攻撃をされ、すっかり瓏衣のことが怖くなり、それから極力近づくのをやめてしまった。

ㅤしかし、それから二ヶ月ほど経ったころだったか。ある日、千鶴は同じ組の男子連中にその日つけていたお気に入りの髪結いのゴムをとられていじめられた。そのときはちょうど近くに先生たちがいなくて、返してと何度せがんでも返してくれなくて、千鶴は泣き喚いた。

ㅤすると、その男子をグーで殴り、髪結いのゴムを取り返してくれた子がいた。

ㅤ泣き喚く千鶴が顔を上げると、そこにいたのはそっぽを向いた瓏衣だった。

ㅤそのあとすぐに殴られた男の子が取り巻きの男子二人と共に瓏衣に逆襲をかけたのだが、返り討ち。瓏衣も無傷では済まなかったが、しかし絆創膏の数が圧倒的に少なかった。

ㅤ騒ぎを聞きつけた先生たちが駆けつけてきて、男子たちはなぜか瓏衣が何も言わないのをいいことに、瓏衣が一方的に殴ってきたと言ったが、千鶴の必死の弁護と、周囲にいた子たちの目撃証言から無罪放免。

ㅤあとから知った話、その発端は男子たちが自分に好意を持っていたからだと聞かされた。男子たちは先生と親たちに立て続けに説教をされ、親共々瓏衣と千鶴に頭を下げた。

ㅤそのときから、千鶴は瓏衣に関心を抱くようになった。

ㅤぶっきらぼうなだけで本当は優しい子なのだと思うようになったのだ。

ㅤそれから千鶴は瓏衣にくっついて歩くようになった。

ㅤだが、いつからだっただろうか。

ㅤ瓏衣が好きだと思うたびに、胸が締め付けられるようになったのは。

ㅤ大切な友達だ。そう思うたび、その言葉に素直に頷くことができなくなり始めたのは。

ㅤこの感覚を、覚えるようになったのは。



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