第93話 黒々眼鏡なんか大っ嫌ぃ!



「アァァァァァァ!」


「先輩!!!先輩しっかりするッス!コレは一体何なんスか?どうして先輩の魔力が!?」


「ァァァァァ。。。スミちゃん、助け。。。。。」


「先輩!?先輩!先輩!!!このままじゃ先輩が。。。。。待ってるッス先輩。

 スミレが、スミレが絶対先輩のこと助けてみせるッス!」




 少女は、気を失った眼鏡の少女にキスをする。

 何の予兆も無く突然始まり、止まる気配も無い魔力の流出。。。まるで立て続けに大魔法を放つかの如く漏れ続く彼女の魔力が、誰にどの様に奪われているのかなど、少女は知らない。しかし彼女は自身のすべてを捧ぐ憧れの眼鏡ッ娘魔法少女不幸苦しみが、誰の所為で齎されるのかを知っている。




「待ってるッスロリッ娘。。。今日こそスミレが必ずアンタをブチ殺してあげるッス」




 ************




『火よ、水よ、風よ、土よ、雷よ、木よ。我が身に宿りし総ての魔力チカラを贄と捧げ、新たなる混沌。が生まれる。。。我こそは漆黒の裁断者、闇を司る新なる精霊の姫王。

 我がみちを塞ぐ愚かなる人間ムシどもよ、恐れて死ね。震えて死ね。汝のすべてを悔い、苦しみ死ね。。。黒紅姫ノ球遊戯(ダークネス・クリムゾニア)!』




 モフ×10怪人ナメクジババアの九本の光魔法尻尾レーザーも、委員長メガネ氷魔法氷の矢も、一欠片残らずみこの右手の小さな闇魔法黒ボールに吸い込まれていく。。。みこは、この黒い魔法が嫌い。

 だって、この黒い魔力を使う度にみこの魔法のドレスからお姉ちゃんの紅色面影が無くなっていくのが判るから。。。そして今、みこの魔法のドレスから綺麗な鮮血色は全部無くなった。それが、



 寂しいけど、淋しくは無い。。。

 哀しいけど、悲しくも無い。。。



 初めて自分の意思で使う、全力全開の黒々魔法に自然とみこのお顔が笑っていく。ちょっぴり恥ずかしいけど。。。あぁ早く目の前の魔法少女虫ケラどもを、ブチ殺したいプチってしたい♡って、ワクワクが止まらないの。フフ♪




「アァァァン🖤これほど。。。これほどまでとは♪アァァァ、可愛い可愛い戦乙女ダークネス。やはり貴女様は想像以上にございますれば、此処は潔く一旦退くことと致しましょう♪ささ、可愛い眼鏡ッ娘バーミリオン?行きますよ」


「ハイ先生♪。。。みこちゃん、ごめんね?私もう行かなきゃ。そうだ♪最後にみこちゃんに私のとっておきの魔法、見せてあげる🖤

『我と繋がりし氷の乙女よ、その魔力いのちの総てを差し出しなさい。我は正義の代行者、聖なる暁の祈り子。。。『雷帝ノ怒槍(アメジスト・グングニル)!!!』」


眼鏡ッ娘バーミリ、ギャァァァァ!」


(バチバチバチバチ!!!)




 と鳴り響いた紫電の魔法は、斜め上から魔法少女眼鏡ッ娘を串刺し、その体内から紫電の龍を四方へと走らせる。


 ???失敗したのかな?


 。。。ピキッ!とヒビ割れた眼鏡が、あの可哀想綺麗魔法少女お姉さんみたいに落ちて行く。ゆっくりと、見覚えのある赤と白の鉄塔目掛けて落ちて逝く。



グサッガン!)



「。。。エホッ。たぃょ、痛ぃょ。。。。。」



 眼鏡の落ちた先、鉄塔の天辺に背中から突き刺さった引っかかった魔法少女眼鏡ッ娘は、生きて泣いていた。生きたい痛い生きたい痛いと泣いていた。

 どうしてそうしたのかは、分かんない。

 でもみこは、ひっくり返ったゴキゴキみたいな死にかけの名前も知らない魔法少女眼鏡ッ娘をナデナデしてあげた。。。あんなに叩き割りたかった、ムカつく委員長メガネのオデコをナデナデしてあげた。



「。。。さつ、き。ちゃん!?。。。った、良かっ、た。エホッ!さつき、ちゃ。。めんね、ごめんね。。。」



 逆さまのまま、みこにごめんなさいと涙を流す笑顔を見せる魔法少女ウザメガネ。。。さっきまでは苦しそうにジタバタカサカサとしていた手足も、だんだん大人しくなって逝く。


 みこは動かなく静かになった眼鏡のオデコに一度だけキスをする。キスをしてから、もうみこのお顔も映らなくなった委員長メガネの眼鏡に、ずっと持ったままだった当て損なっていた闇魔法スーパーみこパンチをソッとお見舞いした。。。



 さようなら、名前も知らないみこのお友達。委員長メガネの眼鏡は気に入らなかったけど、そんなに大嫌ぃじゃ無かったょ。。。。。


(。。。パリン!)






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