第63話 色褪せる世界なんか大っ嫌ぃ!



「みぃちゃん!!!!!」



 突然に聴こえたお姉ちゃんの悲鳴。

 訳もわからず、急にお姉ちゃんの温かなお胸の中へと強く抱き寄せられたみこの眼に映るのは、プスプスと焦げ臭く黒煙を上げる無惨に変わり果てていくお姉ちゃんの。。。左腕?



「良、かっ。。。」



 爆炎と爆風に巻き付く黒煙が晴れるまで、ギュッとみこを抱き締め続けたお姉ちゃんは、これまで見せたことの無い。今にも消えてしまいそうなくらい弱々しい優しい微笑みを向けながら地面へと沈んで行く。



「。。。!?お姉ちゃん!?どうしたの?お姉ちゃん!!!」



 みこは一瞬、何が起こったのか解らなかった。

 ぅぅん、らないより目の前の光景をじられない!の方が強かったかも知れない。。。


 だって、みこのお姉ちゃんが。。。

 お姉ちゃんはね、みこのお姉ちゃんなんだょ。。。?

 綺麗で、カッコよくて、優しくて、世界を何回も救っちゃう様な、最のお姉ちゃんなんだょ?


 。。。なのに、それなのに。




「ハッ!この程度も防げ無え様な雑魚が。ノコノコ出しゃばんじゃネェ!!!!!」




 お姉ちゃん蹲るみこ達を見下ろす怪人誰かは追撃の黒い火炎の球を振りかぶり、仲間であるはずの怪人害虫背を討たれた裏切られた怪人生ゴミ達は、巣を突つかれたハチさんみたいに慌てふためきアタフタと逃げ惑っていスゴくウルサイる。



 みこの、みこのね。お姉ちゃんがこんな大変な事になってるんだょ?

 それなのにこんなにワーワーギャーギャーと、ウルサくてウザいのはどうして?皆はお姉ちゃんの仲間が心配じゃ無いの。。。?


 誰もお姉ちゃんの仲間じゃ心配もしてくれ無いのなら。。。。。皆、今すぐ死ねば良い。

 割りと本気でそう思った。だけど、今はそんなことも外野のことなんて後回し。。。



 。。。だって。

 こんなに外野の雑魚どもはウルサイのに周りは賑やかなのに、みこの腕の中のお姉ちゃんは苦しそうに眠ったまま、全然起きてくれないの。。。



「お姉ちゃん!お姉ちゃん!!!」



 みこが抱き起こして何度揺すっても、お姉ちゃんが起きてくれないの!!!!!!


 ジワジワと。忘れていた涙の代わりに流れ溢れ落ちて来るのは、思い出したくない忘れようとしていたとてもイヤな思い出既視感。。。そしてジンワリと熱を帯びるみこの目の前は、鮮明になって来るあの光景トラウマとは真逆に、だんだんと暗鈍モノクロに色褪せて行く。


 それはまるで、灰色の雨でも降っているみたいに冷たくて淋しくて。

 景色や音、怪人どもにみこ、そしてみこの腕の中のお姉ちゃんまでも、空間の総てを飲み込んでいく。。。




 ************




「降伏。の間違いでは無いのかな?ホッホッホ♪」




 お姉ちゃんが叫んだあの瞬間。

 みこは偉そうな怪人達とお話をしているお姉ちゃんにピッタリと寄り添って、そのいい匂いに酔いしれてを満喫していた♪


 だってみこには、怪人同士のいざこざゴミの分別なんて興味もいし関係もい。

 それに大好きなお姉ちゃんが


『お姉ちゃんに任せて!』


 こう言ったのだから、余計なこと邪魔しないのは当然だった。

 大体、お姉ちゃんの言うことに逆らう愚かな怪人腐った生ゴミ達なんて、後で皆纏めてブチ殺せばポイすればいいのだから恭順するのも死を選ぶのも、話し合いがどうなろうがみこには結局興味無かったどうでも良かった

 だからお姉ちゃんが、



「みぃちゃん!!!!!」



 急にみこのことを強く抱き締めてくれた時、みこには何が危ないのか全然解らなかったの。。。


 みこを強くギュッ!て抱き締めるお姉ちゃんは、何重もの障壁ありったけのバリアをみこに掛け。更にほんの数枚の障壁を纏った自分の身体をみこを護るための盾にした。

 お姉ちゃんの匂いに酔いしれている隙だらけだったみこが気付かなかった危険を、お姉ちゃんが察知してくれたのかな?♪初めは、そう思った。。。。。


 でも、それは違ったの。。。。。


 みこの目の前でお姉ちゃんの左腕を焼いた黒い炎。

 コレは太陽の逆光の中に隠れていたちょっと強そうな怪人とても臭い生ゴミが、黒くて大きな火炎のボール下らないゴミの塊ゴォゴォとイイ気になって此方に投げただけのモノ。


 もちろんそんなただのヘロヘロボールに、みこが気付かないはずはない。。。

 だけどあんな程度の攻撃、ただのみこみこパンチやキックでも簡単に弾き飛ばせる対処出来るんだから、わざわざお姉ちゃんのいい匂いみこの特等席♪から離れてまでどうにかする必要も無いって、無視したの。。。



 。。。全部、みこのせいだ。

 みこがちゃんと、あの黒い火の玉ヘロヘロボールをどうにかしておけば、お姉ちゃんがみこを庇ってこんな大怪我をしなくても良かった。

 あの時も、今も、全部全部。

 全部みこが、みこが悪いんだ。。。せっかくお姉ちゃんと同じ魔法少女になったみたいに強くなれたと思ったのに、みこまたお姉ちゃんの邪魔しちゃった。。。みこのせいでまた大好きなお姉ちゃんが、お姉ちゃんが。。。。。



『アハハハハ、スゴく不様だね良い顔してるね命っち♪

 キミが大切な人を殺すのは、これで何度目だい?』



 灰色に染まりきった世界の中。そんなムカつく笑い声が聴こえた気がして、みこの目の前は真っ黒になった。。。

 みこもお姉ちゃんも怪人ゴミ怪人ムシも、全部全部全部。


 真っ黒に、なった。。。。。





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