第8話 お姉ちゃんの友達なんか大っ嫌ぃ!




「えっと。。。お久しぶりやね?元気。。。しとった?」


「別に」


「えっと、今日もええ天気やね?」


「別に」


「えっと、、、そや!夜ご飯な」


「あの、私に何か用ですか?」




 わざわざ身体がくっ付きそうなくらい私の近くに座った氷碧色の戦乙女・眼鏡ッ娘お姉さんサファイア・アイシクルは、とてもウザかった。

 彼女から伝わって来る暖かさも、お姉ちゃんとは違ったいい匂いも、久しぶりにあった元恋人を前にした様なモジモジも全部全部、私の嫌悪感を的確に逆撫でしている。

 正直今すぐに、首を切り落とし黙らせたい。。。それぐらいウザかった。




「あはは。。。ごめんな?お姉さん世間話苦手で。。。それじゃあ、早速本題!

 キミ新人ちゃんやのに、なしてこの地域のグループに入らへんのかな?お陰でお姉さん、キミのこと探すのメッチャ苦労したんやからね!なんてな♪

 。。。何か入りたない理由、あるん?」


「。。。別に」


「研修会でも言われたやろ?魔法少女は危険やから、一人で闘ったらあかんて」


「だったらなんで!!!!!!」


「キャーーーーー!」


「。。。チッ!」




 爆発した私の不満。

 けれど、力の限り握った魔法の杖が眼鏡ッ娘お姉さんアイシクルの頭に炸裂することはなかった。自分でも驚いたのだが、気が付くと私は悲鳴の聴こえた方へ飛び立っていた。



「あーぁ、気絶しちまいやがった。俺様は泣き叫ぶ女の子が喰い、オブベラ!!!」



 私は害虫の醜いカエル面のど真ん中に、クリムゾン・メイスを叩き込み、昏倒したソイツの足、脛、膝、手、腕、肩と一本一本、全力でクリムゾン・メイスを振り下ろし続ける。



「ウルサイ、ウルサイ、ウルサイ、ウルサイ、お姉ちゃんのことは助けてくれなかった癖に!ウルサイ、ウルサイ、ウルサイ、ウルサイ!!!」


(グチャ!グチャ!グチャ!グチャ!グチャ!。。。。。。)


「もうええ。。。もうええよ。もう死んどる。。。」



 初めは悲鳴にも似たうめき声を挙げていた害虫が静かになって、辺りにはグチャ!グチャ!と肉の潰れる音しかしなくなった頃。

 不意に私は後ろから拘束された。



「ごめんな、見付けるのが遅なってほんまにごめん。。。」



 敵の新手かとも思ったけれど、私を抱き締める拘束するその声は泣いていた。



「やっぱりキミは、クリムゾン・ピーチの。。。姉賀 桃の妹なんやろ?

 お姉さんを、助けられへんやったウチら魔法少女のことが、憎くて嫌いで、許せへん、やからグループにも入りたない。そうやんな?」


「。。。」


「ええよ。言わんでも判る、キミの魔法には憎しみと哀しみが隠っとる。自分自身も傷付けてしまいそうな、激しい怒りが隠っとる。そんな魔法の使い方は、したらあかん。。。そんな魔法は、いつか必ず身を滅ぼしてまう」



 この偽善者が!!!

 自分でもどうしてこの時、こう言わなかったのかは解らない。むしろこの魔法少女偽善者をここで殺しておけば、後々あんな面倒なことには多分なっていなかったと思う。



 ************



「桃。。。やっと会えた。。。ずっと心配しとったんよ。。。?

 住所くらい教えとってくれな、探されへんやん。。。ほんまに桃はもぅ。。。。。。

 ウチ、結局桃になんもお返し出来ひんままやったな。。。ほんまにごめん、ごめんなさい。。。遅なってごめん」



 それからサファイア・アイシクルは、ウザいことに私の家にまでついてきた。


 本当か嘘かは知らない。

 私のお姉ちゃんの手を握りながら涙を流すこの人は、お姉ちゃんのお友達。

 そして、お姉ちゃんにもしものことがあったら私の事を頼まれていた人、なんだそうだ。

 正直その話の真偽なんて、私にとってはどうでもいいことだった。


 だって、この人は生きていてお姉ちゃんは死んでいる。お姉ちゃんのお友達のくせに、結局お姉ちゃんを助けてはくれなかった。

 ただこれだけが、私にとって何も変わらない真実なのだから。。。

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