第5話 世界なんか大っ嫌ぃ!
夏も終わりが近づいて来た頃、私は今夜も赤と白の鉄骨だけの塔の上から深夜の街を見下ろしていた。別に高い所が好きとか、私の首に巻き付いて呑気にスヤスヤ眠っている
「魔法少女と言えば、鉄塔だよ♪」
とかいう、訳のわかんない魔法少女の
単に高い所の方が、街に蠢く害虫の姿がよく見える。ただそれだけのことだった。
(キャァー!!!)
「グヘヘヘヘ。お嬢さん、逃げても無駄だよ?誰も助けになんか来ないさ。何てったって、あの忌々しい
ホラね?彼処にもまた1匹。。。
私は小さなため息を吐くと、足を踏み外す様に悲鳴のした方へと自由落下を開始する。
クリムゾン・ピーチは死んだ。
そういえば最近、街で暴れる害虫は皆挙ってそう口にする。怪人だけではない。
お姉ちゃんが死んでから2ヶ月。
テレビやネット、新聞、雑誌、ようやく異変に気付いた世界は、まるで巣を落とされた蜂の様に慌て始めていた。
クリムゾン・ピーチ死亡説、怪人に捕まった説、色んな噂が飛び交う中でも私が一番頭に来たのは引退説だった。
「仮の話ですが。。。もし本当に引退説が正しいのならば、何も言わずに突然姿を消したクリムゾン・ピーチは、あまりに無責任ではないでしょうか?」
世界は腐っている。
いくら魔法少女が自分の為に闘っているとはいえ、現状怪人が絡む事件は総て魔法少女に丸投げされている。もちろん、世間は魔法少女が自分の願いの為に闘っていることは全く知らない。
それなのに例え世界を救っても感謝はされるが、実際に報酬や褒賞なんかが貰えたりすることは決してありはしない。
「魔法少女は正体が不明だから贈りようがない」
「力のある者として自発的に、使命を全うしてくれる彼女達に最大限の賛辞を贈る」
こんな屁理屈が大人達、いや世界の言い分。
自分達の身勝手を棚上げして、確証も無いのにお姉ちゃんを批判して、怪人の被害が増えれば魔法少女を非難する。。。
こんなゴミ達が何人も、お姉ちゃんのお陰でその命を拾っていたのかと思うと、ムカつき過ぎて吐きそうになってくる。
「お嬢さん大人しくしてれば、気持ち良く殺してアゲルよ?さぁ、こっちにオイデ」
「い、イヤ!イヤよ!誰か!誰か来てぇ!助けてよ!!!」
「グヘヘヘヘ、グヘヘ、いただきまぁす♪」
「イヤァァァァァァァ!!!!!!!!!」
「。。。。。。クリムゾン・ソード」
「グピャ!?」
私は魔法少女になって、一つだけ驚いたことがある。
「ファ~ァ。。。おはよぅ。。。ありゃ?
て、命っち!また怪人が人を襲うのを黙って観てたのかい?
確かに、助けるのは義務じゃないとは言ったけどさ?魔法少女以前に、可愛い女の子として、それはイイ趣味とは言えないよ?」
「フン。別に楽しんでたわけじゃないわ。。。私はただ、自分で助かる努力もしないゴミをわざわざ拾ってあげる気になんかなれないだけよ」
「そんな、同じ人間をゴミって。。。」
それはどんなに醜く、どんなにおぞましく変異を遂げた怪人も首を斬り飛ばせば、普通の人間と同じように真っ赤な血が噴水のように噴き上がるということ。
ほら、ちょうどそこで頭を食べられて死んでるお姉さんみたいにね。
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