やって来たのは4人め?

時は流れていた。

小学4年生へといざなう春が近づきつつある。

そしてそれは…。

別れの春でもあった。


「「「「わかばやしせんせ~~~~~~!!!!!!!!」」」」


小学3年生3学期の最終日。

明日から春休みだというのに、みんな嬉しがるどころか、悲しんでいた。

クラスの生徒達は、若林先生の周りを取り囲み。

別れを惜しんで泣いている。


「皆さんありがとう。

アナタ達のクラスを受け持つ事が出来て、先生は大変勉強になりました。

何かを学び取るには、人から教えて貰う勉強だけが、全てではありません。

私が教える勉強以上に、皆さんは私に色々教えてくれました。

本当にありがとう。」


結婚した若林先生は、妊娠3ケ月である事が分かり。

小学校低学年から中学年への引継ぎのタイミングにちょうど良く。

産休で学校から一時的に離れる事になった。

若林先生を取り囲む生徒達の輪の中には、アインやしまぽんも居た。


「先゛生゛~~。ひ゛、ヒック…。

う゛~~。」


しまぽんは人目もはばからず、大粒の涙をポロポロと流している。

一方アインの方は…。


「……っ!?゛…ぅ…!?」


声にならない状態で、涙腺は既に決壊していた。

他の生徒達も二人と同程度に泣いていたが、その輪の中に加わっていない生徒もいた。

その生徒は…。

ソナタとカナタと勇人と山田 華の4人であった。

ソナタは…。


『先生に駆け寄りたいけど…。

あんな人の輪に入ったら…。

お、女の子に触っちゃうし…。

おっぱいとか触って…。

痴漢に間違われたらどうしよう…?』


周囲に対する気遣いと気恥ずかしさ。

それに異性に対する意識から、駆け寄り輪に入るのを遠慮していた。

カナタは…。


『若林先生には苦労かけてばかりで、悲しませたからなぁ。

オレには近付く資格は無いよな。』


過去の反省と、若林先生に対する後悔から来る優しさが…。

輪の中に入るのを遠慮させていた。

勇人は…。


『やっべ~~~…。

一瞬、どさくさに紛れて、「若林先生のおっぱい触れんじゃね?」って、思っちまった。

子持ちになろうとしてる人妻に対して…。

幾ら何でも俺、ヒド過ぎだろ…。

最低だ。

俺がオレに対してドン引きだわ。』


自らのゲスな発想の情けなさと気まずさにツッコミを入れ遠慮した。

そして山田 華は…。


『………………。』


その鉄のプライドから、その輪の中へ入る事を拒否していた。


若林先生は周囲の児童達に向け、声をかけだした。

どうやら改善すべき点を一人一人に語っているようだ。


「志摩本さん。

アナタはおだてられて調子に乗り、無茶をする所がありますよ。

行動や言葉には気を付けて…。

矢城あい君。

アナタはお兄さんに頼り過ぎてる所があります。

時にはお兄さんを支えるように頑張って…。」


「……ウンっ。」


「……は…い。」


それを聞いた二人は…。むせび泣き頷くので精一杯だった。

周りに居た全ての生徒に語り終わると…。

勇人達の方へ先生から近づいて来た。


「高松君。

アナタはもう少し行動的になって、人を引っ張れるようになりなさい。

アナタには充分その力があります。」


「は、はい!!」


ソナタはそれを聞くと、涙をこらえ出来る限りの大きな声を出して返答した。


「岩倉君。アナタは随分良い子なりました。

良い目標とする人を見つけたんですね。

その目標を、いつまでも見失わ無いように…。」


「先生、ゴメン!!」


カナタは、若林先生に謝った。

1年生の頃の事をずっと謝りたかったのだろう。


「矢城ゆう君。

矢城あい君が、純粋過ぎて危うい所があります。

感の良いアナタなら、この言葉で分かりますね。

お兄さんのアナタが注意してあげて下さい。」


「はい。」


勇人は若林先生の言いたい事を理解し、その言葉を深刻に真剣に受け止めた。

実際、勇人も薄々危険だと感じているのだ。

その純粋さが…。


「それと…。

アナタ自身は、おませさんな所をもう少し控えたら、女の子にモテるようになりますよ。」


「は…。はい」


勇人は先程のゲスな発想も相まって、気恥ずかしさから顔を逸らすのだった。

そして若林先生は、最後に山田 華に向き合い声をかけた。


「山田さん。

アナタは強くて、その誇りがアナタの良い所です。

ですがその誇りが、トゲのように人を遠ざけ傷つける事があります。

その誇りを持ったまま、まずは人を許す事を…。

人を守り受け入れる努力をして下さい。」


そう言って山田 華に、スッと手を差し出して握手を求めた。


「山田さん、あなたなら出来ます。」


「っ!!!?」


山田は一瞬、躊躇しながらも若林先生の手を握ると…。


「先生!!」


そう言って一気に泣き崩れた。

若林先生はそんな山田の肩をそっと抱き、頭を撫でる。

こうして小学校3年は終わった。


その日の学校からの帰り道、勇人とアインの二人は歩きながら話しあっていた。


「勇人様…。

人との別れって、こんなにも悲しいんですね…。

私…。

泣きすぎて、目が痛くなってしまいましたよ…。

目が…。

目が~~~~~~~~!!」


そう言ってアインは、目頭を押さえつつジブリネタ。

いつぞやのお風呂の時と同じく、ムスカ大佐のモノマネをするのだった。


「お前、ムスカのモノマネ好っきだなぁ…。」


そうツッコミを入れながら勇人は、若林先生の言葉と自らが抱く危機感。

「アインの純粋さ故の危険」を少しばかり疑ってしまった。


『本当に、純粋かぁ…?』


そう思いつつ、勇人はアインに答える。


「アイン。

別に若林先生は死んだ訳でも、学校を辞めた訳でも無いんだし。

俺達の担任から外れたってだけだ。

産休が終わったら、まずは臨時職員として学校に帰ってくるんだ。

そんなに悲しむなよ。」


「ですが、若林先生は良い先生だったじゃないですか。

3年間も一緒だったのに…。

悲しくならない方がおかしいですっ!!

泣かない勇人様は涙腺が詰まってるんですよ。きっと!

宝石かなんかでっ!!」


「俺はエルフか雪女かよ…。」


アインは鼻水を垂らしながら、また涙目でそう訴えて来るのだった。

少し怒っているようにも見えるが、それ程悲しかったのだろう。

アインの中での、若林先生の評価が見てとれる。


「確かに良い先生だったな…。

生徒一人一人の改善点を言うなんて、なかなか出来ん事だ。

生徒を良く見ていた現れだな。

あんな良い先生、前の人生でもなかなかいなかったぞ。」


そう言うとアインは、キョトンとして不思議そうに尋ねてきた。


「へっ?勇人様?

中には悪い教師もいるでしょうが…。

教師って大多数が、若林先生のような方じゃ無いんですか?

アレが普通なのでは?」


「あれが普通な訳ないだろ!?

いったいドコからそんな発想になるんだよ。」


アインはそう問われ、言って良い物か悪い物かしばし考え…。

おずおずと答える。


「えっ…?

3年B組金八先生と、ルーキーズの川藤先生なんですが…。」


「そりゃ、ドラマの話しだろうがっ!!」


バスッ!!


勇人の渾身のツッコミチョップが、久しぶりにアインの頭に直撃する。

本当に久しぶりなので、力加減を間違えたようだ。


結構痛かったのか、アインはチョップの痛みから涙目で訴えてきた。


「あ~~うッチ……。

痛いじゃないですか勇人様…。

ツッコミならもう少し上手くやって下さいよ。

それにそうポンポン殴られたら、私いつかMに目覚めてしまいますよ。」


「知るか…。

そん時はそん時だ。

Mに目覚めた事に、Mとして喜べ。」


勇人も自らの手も痛かったのか、少し涙目で突き放したモノの言い方をすると…。

アインは不服そうに顔を膨らませるのだった。

だがアインはある種、納得していた。。


『Mとして目覚めたら、その時点でMとして喜べる。

なるほど、これは盲点ですね…。

確かにその通りです。』


そう変わった納得をしつつ、先ほど浮かんだ率直な疑問を勇人にぶつけてみた。


「では、勇人様…?

教師には、良い先生がいらっしゃらないのですか…?」


「そうだなぁ…。

良い先生が割合的に、圧倒的に少ないってのが正しいかな。」


それを聞いたアインは…。


「では次に来る先生も、若林先生みたいに良い先生だと良いですね。」


そう勇人にあっけらかんと明るく言うのだ。

圧倒的に少ないと聞いても、割合がピンと来ないのだろう。


「ああ、そうだな。」


勇人もコレには同意したが、心の中では、せめて普通の教師が来て欲しいと願っていた。

良い先生が本当に少ない。

ともすれば最低最悪な教師もいる事も、勇人は経験から知っていたのだ。


そして…。

そんな勇人の小さな願いも…。

虚しく脆く崩れさる事になる。



小学4年生の初日の日がやって来た。

体育館で行われた始業式も終わり。

昇級して4年生の教室へと移った生徒達は、出席番号順に座っている。

若林先生の変わりとして、新しくこの学校に来た男の先生が、勇人達のクラスの担任となった。


ガラッ!!


その件の先生が、勇人達の教室へと入ってくる。

30才半ばそこそこの見た目で、高身長で体つきはガッシリとした体型。

その男の先生は、挨拶は穏やかだった。


「今日から、このクラスを受け持つ事になった。

鹿山 猛(かやま たける)。

よろしく。

では早速、春休みの宿題を提出して貰う。

出席番号順に呼ぶから、一人ずつ前に来て宿題を出しなさい。

その時、名前と顔を覚える。」


鹿山先生はそう言うと、教室にある教師用の机にデンと座って、名簿に書かれてる順に一人ずつ生徒を呼んでいくのだった。


宿題を提出する為。

自らのランドセルの中を、ガサゴソとまさぐっていたアインが、驚きの声を上げた。


「あっちゃぁ…!

ランドセルに入れたはずの、漢字ドリル忘れて来ちゃった…。

どうしよ?ゆう君…。」


その後ろの席に座っていた勇人が、アインをからかい気味に言い放つ。


「ほらっ!やっぱり…!

だから、宿題の忘れ物が無いか家を出る前に何回も聞いたのに…。

人の言う事も聞かず確認しないんだから…。

机の引き出しの中を、見ないで良いのかなぁって思ってたんだ…。

あい君の自業自得だよ。」


「思ってるだけで、その指摘は無し?

あっ!?ゆう君…!?

僕が漢字ドリルを忘れてるのを知ってて…。

兄は鬼子です…。」


アインはそあおどけながら言った。

それを聞いた勇人も、ニヤニヤと笑っている。


「先生に謝るしか無いね。

ま、許してくれるかどうか分からないけどな。」


と二人で冗談ぽくじゃれ会う。

この時点では、勇人にもアインにも、みんなにもまだ余裕はあった。

みんなまだ、3年生の延長のように楽しそうだ。

教室の中には、まだ談笑してる子達もいる。

程なくしてアインが呼ばれた。


この時点からクラスは少しずつ変質していく。


「次、矢城アイン!!

変わった名前だなぁ。

親はいったい何考えてんだ…?」


思った事がつい口から出たのだろう。

まだ悪意の無い無邪気な言い方だ。

アインは少し不満に思いながらも

鹿山先生の所に、学校に持って来た分の宿題を持って行った。


「ンっ!?

漢字ドリルの宿題が足らんようだがどうした?」


「あっ!?

先生その事なんですが。

ごめんなさい。

やって来たんですが、学校に持ってくるの忘れてきちゃいました。」


アインはそう言うと、笑顔でペコリと頭を下げた。

鹿山先生はそれを聞くと…。

コレを待ってましたと言わんばかりに、ニヤリと不敵に微笑んだ。


「そうかぁ…。

忘れたかぁ…。

そりゃあ…。」


鹿山先生がそう頭を掻きながら言いかけた瞬間!!


パーーーーーーーーーーーーンっ!!


アインの頬と鹿山先生の手のひらの狭間から…。

はじけるように大きな音が教室をこだました。

その音で教室が一瞬にして静まり返る。

鹿山先生はクラス中に響き渡り聞こえるように、アインを怒鳴りつけ叱責した。


「バカ野郎っ!!

ヘラヘラ笑いながら謝るヤツがあるかっ!!

それが人にモノを謝る態度かっ!?

あっ!?

謝罪をするならな!

それなりに真剣な至誠を見せろっ!!」


アインは打たれた頬を抑えながら、何が起こったのか全く分から無い様子。

だが、鹿山先生に対してまずは謝った。


「ご、……ゴメンナ…サイ…。」


アインは何故、謝ったのか?

 

アイン自身も自分の行動は分からない。

分かっていない。

だがアインは、先生が怒っている事は分かったので…。

とりあえず、まずは分からないが謝ったのだ。

事なかれ主義的な行動が原因だ。

もの事を丸く穏便にすませる日本人的な思考の為に…。

その行動が、本当に良いか悪いかどうかも分からず。


「っ!?」


一拍空けて今、アインは何故自分が怒られたかを理解したようだ。

漢字ドリルを忘れ、謝る至誠が悪かった事をやっと理解した。

鹿山先生は、そんなアインをほっといて、教壇へと向かい。

隣のクラスにも聞こえるように、又も怒鳴るように言い放つ。


「お前らっ…!!!!!!!

まだ3年生気分が抜けきれて無いようだなぁ。

誰が今、おしゃべりして良いと言ったぁ!!

ホームルーム中とは言え、今も授業中と同じだぞ!!!!!!!

黙って、宿題を持って来る事も出来んのかっ!!!!!

お前らわっ!!!!」


クラス中の児童達が萎縮しシンと静まり返る。

鹿山先生の言う事は正論だった。

正論ではあるのだが…。

その言動に隠されている真の意図。


クラス独裁の始まり。


それを告げる合図だった。

だがまだその事は、クラス中、勇人ですら気づいていなかった。

たった一人を覗いて…。


「たくっ…。

このクラスは、生徒の躾すらなってねえな。

教師に対する敬意が全く無い。

前の担任は無能だな。

一から躾せにゃならん。

先が思いやられる。」


そう呟くように言った鹿山先生を、たった一人。

聞き逃さなかった生徒がいた。


その日は1学期の始業式で半ドンだったので、本格的な授業も無く。

その後は、何事も無く終わった。

ただ、アインが叩かれてからの教室は、息をひそめたように静かなっていた。


その日の学校からの帰り道…。

ソナタがアインを心配して聞いてきた。


「アイちゃん大丈夫?

まだ、ほっぺた痛む?」


「大丈夫だよソッ君。

もう痛く無いから…。」


「そう?」


ツンツン


アインがそう言ったので勇人は、アインの叩かれた方のほっぺたを指先でつついてみた。


「いっ!イッツっ----ッ!!

痛いよゆう君!!」


「やっぱり痛いんだ…。アイちゃん…。

てか、ゆうちゃん…………?

な…、何やってんの?」


まだ、そんなに時間も経っていない。

アインがいくら強がって痛く無いフリをしても、痛いのは当たり前であった。

それよりもソナタは、勇人の不意をつく行動に少し引いている。

そんなアイン達に対して勇人は言った。


「宿題を忘れたアイ君が悪い。

もう少し真剣に真面目に謝ってたら、許してもらえたかもしれないだろ?」


「うん、そうだね…。

ゆうくん。

僕が悪いんだよ。」


そう言い合ってる二人に対して、ソナタも…。


「とにかく、明日からは気をつけようよ。アイちゃんゆうちゃん。

今度の先生は厳しいみたいだし。」


そう二人に注意を促すのだった。

教師という存在を、まだ若林先生しか知らないアインとソナタには…。

尊敬出来ないクズ教師もいる事を知らない。

だが、勇人は尊敬出来ないダメな教師がいる事を知っていても…。

鹿山先生の正体にはまだ気づいていない。


何故なら…。


ソナタと別れた後、勇人はアインに対して…。


「なんかゴメン。アイン。

こんな事になるなんて思わなかった。

ちゃんと宿題を忘れている事を教えてれば………。」


まずはそう謝罪した。

かなり後悔しているようだ。


「イエ…。良いんですよ勇人様。

宿題を忘れたのは私(わたくし)ですし。

謝罪の仕方も悪かったのは私ですから。」


そう自己否定するアインに、勇人は一つの疑問を聞いてみる。


「なぁアイン…。

先生はどうやってお前にビンタしたんだ?」


「どうやってって…?

先生はしゃべりながら頭をかいてる途中で…。

いきなり間髪入れずに…。

こう…、大きく手を降って、ずばーんって感じで…。」


アインの身振り手振りを見た勇人はこの時点から、鹿山先生を疑い始めた。

だが、それはまだまだ軽い疑いだった。

体育会系教師か、最悪でも軍隊系スパルタ教師か…。

その程度の発想だ。


アインのそのビンタの説明を聞いた勇人は…。


「やたらビンタ慣れしてやがるな。

見た目が若いだけで、もっと年が行ってるのか…?」


少しばかり深刻な顔になりつつあった。

そんな勇人をしり目に、アインは疑問に思った事を質問してきた。


「勇人様?

ビンタ慣れってどういう事です?

鹿山先生はビンタされる事に慣れた超ド変態ドM男だと…。

一発で見抜かれたんですか?」


ズっルッ~~~~~~~ん!!


アインのスッとぼけたボケを聞いた勇人は、踏み出してた足を思い切り滑らせる。


「何でされる方で、考えてんだよ!!

ビンタする方の慣れだよ!!

それともアイン…。お前やっぱり…!?」


勇人はそう言いながら、少女マンガ風にハッと口を押さえる。

そんな勇人の疑惑にアインは…。


「あっ!?

それでしたら勇人様!!。ご安心下さい。

今回のビンタでつくづく自分が分かりました。

鹿山先生にビンタされた時、痛くて不快で気持ち悪いだけでした…。

やはり私(わたくし)はMでは無いようです。」


そう言って何故か両手を腰に当て、エヘンと威張るのだ。

威張る事でも無いのだが…。

勇人はそんなアインをあしらう用にほっといて説明し始める。


「良いかアイン。

3年の時若林先生が、カズヤをビンタした時の事を思い出してみろ。

まず一旦、頬に手をやってから叩いてただろ?

ビンタってのは、耳に行ってしまうと風圧で鼓膜を破る事もあるんだ。

だからそれを防ぐ為にも、一旦頬に手のひらを触れてから、当たりを決めてビンタするんだ。

児童の安全を考えると、ダイレクトの直球でビンタをするなんて、めったにやらないんだよ。」


「そう言われてみると…。

若林先生のはそうでしたね。」


そう!

勇人は知っていたのだ。

教師が時に、生徒に見せる為に体罰で叱る事を…。

児童はそれを見せしめだと感じるが、その叱る意味合いを…。

勇人は知っていたのだ。


「おやっ…!?

不思議ですね。

若林先生にビンタされたと想像をすると…。

不思議とこの頬の痛みも心地良いような。」


「アイン…。お前やっぱり…!?」


勇人はそう言いながら、少女マンガ風にハッと口を押さえた。


アインはやはりドMなのだろうか?


若林先生が生徒をビンタしたのは…。

家庭科の調理実習で、カレーライスを作っていた時の事だった。


須藤カズヤが野菜の皮剥きの時、ピーラーで…。


「ひげ剃り~!!」


と言いながら、おどけて自らの頬をなぞるような仕草をしていた。

直接触れてはいない。あくまでもフリだ。


小学3年生とは言え、そこまでバカでは無い。

自らの頬にピーラーが触れたらどうなるか…。

それ位の予想は、須藤カズヤにも出来た。

だが、須藤カズヤは調子に乗り、隣りにいた子にも悪ふざけで今度は包丁を顔に近づけた。

その時!!

若林先生がその光景に気づいた!!


「須藤君…。

ちょっとその刃物を置いてこっちに来なさい…。」


「何っ?先生?」


若林先生は須藤カズヤの手を取ると、家庭科室の黒板前まで連れて行く…。

当の須藤は事の重大性にまだ気づいていないようだ。

そしてそこで若林先生なりに思い切り…。


パ~~~~~ン!!


ビンタした。

更には他の関係無い児童達にも聞こえるように…。


「刃物を持ってる時に、ふざけちゃいけません!!

人の顔にふざけて刃物を近づけるなんて、しちゃダメでしょっ!!」


若林先生なりの大声で怒鳴った。

直接的、間接的に怖さと痛さを演出する事で…。

事の重大性と過ちを演出し。

本人に…。

また他の児童達にも今後、同じ過ちを犯させないようにする為に、ビンタをして怒鳴りつけたのだ。


コレが罰による知識の共有である。


若林先生の場合、児童が刃物で人を傷つけるような。

また命に関わるような過ちを犯した場合。

ビンタの体罰をすると心の中で決めていた。

無自覚に考えもせず人を刃物で傷つけたり。

命を奪うか、自らの命を失ってからでは完全に遅いのだから。


この叱り方を、どの時点どの場面で使うかは、先生個人の思想や考え方で大きく変わる。


頻繁にやたら使う暴力ダメ先生もいれば…。

全く使わないダメな先生もいる。

体罰など使わず、言って聞かせれば良いとの考え方もあるが…。

肉体的、精神的に何ら痛みも苦痛も伴わない罰に、子供は残酷に無情な理解をしてしまう。


その行為は、バレなきゃやってもいい大した事のない行為なのだと…。


罰とは何かを認識せぬまま…。

取り返しのつかない罪で罰を受け…。

罪と罰を、事が終わった後で認識したのでは、あまりにも遅い…。

それゆえに、大人として罰を使いこなし、子供に何が罪で過ちなのかを教える。


そんな叱り方がある事を、勇人は知っていた。


そして知っていたが為に…。

鹿山先生が独裁教室を行おうとしてるのをまだ見抜けない。


次の日。

勇人とアイン二人が登校していると、しまぽんと会った。

しまぽんは二人を見かけるなり明るく手を上げ。


「おっはよー。ふったり共!!

ゆうあいコンビっ!!」


そう挨拶し駆け寄って来た。二人もしまぽんに挨拶を返す。


「あっ!しまぽんさんおはよう。」


「おはよ。しまぽん。

その呼び方、どうもしっくり来ないんだよな~…。不思議と…。

良い意味のはずなのに、悪い感じしかしないんだよ。」


勿論、あの首相の言動の成果であった。


「そおう?不思議ねぇ…?

使い方間違えたかな…。

それよりそっちこそ。

アイン君いい加減、あだ名にまでさん付けしなくて良いのに…。」


「ゴメン、なんかコッチのが言いなれちゃって…。」


そんなアインをしまぽんは、仕方ないテイで諦めて…。


「まあ、いっか…。

そうだ!!聞いて聞いて二人共!!

ビッグニュース!!ビッグニュース!!」


自分の仕入れてきた特報を、二人に聞かせたがってうずうずしていた。

それを見た勇人は…。


「おいおい、どうしたってんだいしまぽ~ん!

まるで朝ッパラから、幻のポケモンでもゲットしたかのようなテンションだね!?」


アメリカドラマ風のノリボケで聞いてみる。

しまぽんも乗って返すかと思いきや…。


「そうそう、まるでミュウツーをゲット出来た時のようにって…。

違~~~~~~~う!!」


『ゆ、勇人様のアメリカ風ノリボケに対して、大阪風ノリツッコミで返すなんて…。

しまぽん様…。お、恐ろしい子…。』


しまぽんの大阪風ノリツッコミに、アインは何故かライバル心を燃やすのだった。

そんな事には全く気づかず、しまぽんは二人に明るく語りだす。


「聞いて二人共!

今日うちのクラスに転校生が来るんだって!!」


「えっ!?転校生!?」


「ホント?しまぽんさん?」


「ホント、ホント!

昨日の放課後にさ。

残ってた男子が、教室に机を運ばされてて…。

詳しく聞いたら転校生が来るんだって言ってたのよ!!

しかも、可愛い女の子らしいわよっ!!

喜べ二人ともっ!!」


しまぽんはそう明るく発表した。

それを聞いた勇人とアインは、別の意味で喜びを隠せなかった。

二人同時にお互いの目を見合い、ある事を思うのだ。


『『神様(マイマスター)が選んだ子供かもしれない!!』』


朝のホームルーム前。

昨日のアインの事を意識してか、クラスのみんなは緊張しているように見える。

だが、それだけが緊張の原因ではあるまい。

緊張と同じくソワソワとした雰囲気も伝わってくる。

鹿山先生が教室に入って来た。

件の転校生は、まだ教室の外に居るようだ。

名前を呼ばれるのを待っている。


「お前ら喜べ~。

今日からクラスの仲間が一人、増える。

おい、入って来い。」


そう言われて入って来た女の子は、勇人とアインの思った通り。

一目見ただけで神様が選んだ子供だと分かる、例の強烈な違和感を感じたのだった。


『そうそう、こんな感じだったな。

あんまり久しぶりなんで、忘れかかってたわ。

しかし…。

本当に、この子がそうなのか…?』


『うっわ~。懐かしいですねぇ…。

まるまる3年ぶりのこの妙な感覚に、違和感を感じますね。

ですが…。この女の子…。

まさしく、違和感を感じます!!』


二人は一応確認の為、前後に座ってるお互いの顔をチラリと見合って、違和感があったかどうかを確認した。

お互いの目が、どうもやはり、その子を神様の選んだ子供だと言い合っていた。

二人が疑問に思ったのも、そのハズ。

その子はどう見ても…。

犯罪とは縁遠い見た目をしていた。

そして何より…。


『相変わらず女の子の可愛いって言葉は、映画予告の面白かったってコメント並みにアテにならんな。』


勇人がそう思いながらしまぽんを見てみたら、しまぽんもバツが悪そうに目を伏せていた。

正直見た目はあまり可愛くは無い。


「じゃあ自己紹介しろ。手早くな。」


「は…。ハイ…。あ、アノ…。えと…。

な、な、な、ななな名前は…。

どどど、土那高(どなたか)…ま、マキです…。

よよ、よろしくぅお願っ…ます。」


酷いどもりな上、妙に甲高い声で始まったその子の自己紹介は。

最後の所で、裏返った声になっていた。その自己紹介を聞いていたクラスのみんなは…。

し~~~んと静まり返る。

みんな悪いと思って、こらえているのだろう。

だが、誰かがこらえきれずに、プッと笑い出すと関を切ったように、どっと一斉に大笑いしだした。


「ご、ゴメン…。ホントゴメン。ゴメンゴメンゴメンゴメンドナタさん…。で、でも…。

ぷっ、ぷっふぅ~。」


「ハッハッ!!ドナタちゃんだ!!ドナタちゃんだ!!あだ名決定~~~!!。」


「えっ!?ドナタさんって名前?

どなたかさん?」


教室中が、笑いの渦でざわついていると鹿山先生が教師用の机を…。


バーーーーーーーーーーーン!!


と思いっきり叩き。


「ぅるせえっ!!お前ら!!

いちいち自己紹介で笑ってんじゃねぇ!!

失礼だろうが!!」


そう正論で怒鳴った。

流石にクラスのみんなも、悪いと思いつつ先生の怖さもあって、一斉に黙ってしまう。

当のドナタはと言うと…。

鹿山先生の怒鳴り声に怯えているようで…。

思いっきり腰が引けていた。

生徒達は必死に笑いをこらえ、クラス内はちょっとした罰ゲームのようだ。

そんなドナタに鹿山先生もイラついてる。


「おい、土那高…。

オレはお前の為にクラスの連中叱ってんだぞ。

それなのにその態度は失礼だろう。

まあ、お前の格好が既に、人をバカにして失礼だがな。

他に言う事は無いのか?

土那高…?

好きな事とか言わなくていいのか?。」


「あっ!?す、スミマセン。

す、好きな事ですか…?

あ、えっとその…。

あ、アニメとかマンガとかゲームが好きで…。

アニメだったらワンピと銀魂、マンガだったらブリーチとナルト、ゲームだったらモンハンとテイルズ…。

な、なんかが好きでして…。

い、いわゆる一つの…

お、ヲタクっ…!!!

な、な、なん…です…け、ど…。」


『『見れば分かるよ、そんな事…。』』


クラス中、また鹿山先生も心の中で土那高に総ツッコミを入れた。

それもそのハズ…。

ボサボサ三つ編みに眼鏡姿。

エヴァのロゴとネルフのマーク入りシャツ。

ランドセルの横にはワンピのサンジのミニ人形。

更には日曜朝に悪と戦う女の子アニメのキャラバック。

見た目、言動、行動、全てが、彼女が明らかにオタクである事を全身から物語っていた。

勇人は思った


『どうみても人畜無害のオタクではないか…。

こんな子が、何をやらかせば将来凶悪犯になるっていうんだ?』


その日の授業はその後、ちょっとしたアンケートを取ったり。

学級委員長や各種係決めを行った。

鹿山先生から、理不尽に怒鳴られたり、ソナタなどはビンタをされたりもした。

独裁体制の片鱗を少しずつ見せ始めていたのだが…。

やはり勇人は気づけない。

クラスのみんなも気づけない。

だが少しずつ少しずつ、毒が回るように…。

追い詰められていく。

ゆっくりと確実に…。


その日の夕方。

学校から帰って来た二人は、自室で件のオタクっ子について話し合いをしだした。


「ようやく見つかったな。

4人目…。

しかし見つかったのは良いが、あんなオタクっ子娘が4人目とは…。

いったいどんな犯罪を犯す事になるんだアイン?

早速見てくれるか。」


そう言われたアインだったが、もじもじしながら恥ずかしそうに…。


「実はその~勇人様。

もう見てしまいました私…。

学校の掃除の時間中に…。」


そう告白してきた。


「あっ!?

掃除の時間中、何かボーっとしてたと思ったら…。」


「スミマセン、勇人さま。

どうしても…。

ど~~~しても…。

気になってしまったもので…。

我慢出来なくてつい。」


「まあ、アインの気持ちも分からんでも無いがな。

やっぱ気になるよな…。

あのオタクっ娘。」


「で・す・よ・ねぇ~!!」


そう言って二人で笑いながら同意した。

勇人も気になってうずうずしていたので、早く聞きたかったが…。

不意に不謹慎に思えたので、少し落ちつかせる為に、一つ咳払いして質問した。


「コホっ!

で、どんな事やらかすんだ?

あの子は?」


そう聞くと急にアインも深刻に語りだす。


「彼女、土那高 マキ様が起こされる罪は…。

クスリによる錯乱の通り魔…。

自室でクスリが切れた際、ショックの幻覚症状に陥り…。

通りを歩いていた母子を鎌で殺害。

更に車で逃亡する際に数人を轢殺。

逃げ込んだ先の高速バス車内で人質を取り、立て込もっりましてそこで…。」


「ストッ~~~~~~~プ!!!!!。

アイン止めてくれ、

あんまり久しぶりなんで忘れていた。

俺はこの感覚を忘れていた!!

何で俺はこんな不快な感覚を、ワクワクして待ち望んてたんだ…。

くう~~~~~っ!

バカだった…。

オレは本当にバカだ。」


勇人はそう言って後悔に駆られ鬱になっていた。

しかし、勇人は同時に疑問にも感じる。


「何故だ?

何故あんなオタクっ娘がクスリに走ったんだ?

何故そんな子に変わった?

オタクってのは、自らの食費を極端に削って断食してすら、グッズやコレクションを集めたがる人種だ。

それが何で!?

クスリなんて金のかかるもんに走った?

きっかけは何だアイン!?」


そう質問してきた勇人に対して、あくまでも静かに冷静にアインは答える。


「原因は男のようです。

成長されお綺麗に成られたマキ様は…。

大学時代に一人の男性と、初めてお付き合いをし出します。

イヤとは言えない性格らしく。

その男性に勧められるまま、クスリを打たれ。

止めようと決心されても、その男性の言うままズルズルと…。

少し経つと自ら求められるようになりまして…。

後はその男性の食い物と言って過言では無い状況です。

しまいには自らのコレクションすら売り払って、全てクスリにつぎ込むようにズルズルと…。

あんなお綺麗だったのに、最後の方は見る影すらありませんでした…。」


「そう…。

…そうか…。

女を食い物にする…男が…原因か…。」


アインの説明を聞いた勇人は、がっくりと肩を落とした。

久しぶりの事で少しショックが強かったようだ。

だが、内心ホッとしていた。

原因が男であると分かった事は、対処がし易いと思えたからだ。

しかし、それとは別に何かモヤモヤした感じがあった。

それが何か気づくや、急にアインに質問しだす。


「んっ!?アイン…!!

お綺麗になられたって…。

あのオタクっ娘が綺麗になるのか?

どこからどう見ても綺麗になれる要素が皆無だろ…。

まあお前の綺麗は、森三中の大嶋ですらキレイな部類に入るから信用出来んが…。」


「失礼なっ!!

それは私よりも、マキ様に失礼ですよ勇人様。

ちゃんと、秋葉原にいるメイド服が似合いそうな。

可愛くて綺麗な女性になられてましたっ!

そこいら辺は、彼女の将来性と合わせて信頼して下さいよ。」


「何でメイド服ありきの語りなんだよ。

ますます信用出来んわ。」


そう言われたアインは不満そうな顔をしていたが、フっと何かを思いたち。

何かを取りに1階のリビングの方に行ってしまう。

しばらくすると、デジカメを手に自室に帰ってくる。


「このカメラで、彼女の将来の姿を念写してみましょう。」


「お前そんな事も出来るのか!!

何でそれを今まで言わなかった?」


アインの思いもよらぬ特殊能力がある事を知らされ、勇人は驚きを隠せない。


「イエ、やれるか分りませんし…。

やった事もありませんが、モノは試しです!!

ジョジョでやってるの見ました。」


「ただの思いつきかよ…。

で、ジョセフかよ…。」


アインのただの思いつきの特殊能力である事を知らされ、勇人は呆れた顔を隠さない。


アインは、勇人のそのツッコミにも気づかず、自らのおでこにデジカメのレンズを当て…。


「念写っ!!」


パシャリっ!!


その掛け声と共に、シャッターを切った。

勇人は呆れた表情で…。

と、言うよりも完全に呆れていた。


「アイン…。

お前…。

んな事で念写が出来たらな…。

世の中…。」


「あっ!?出来てるっ!!」


「出来ちゃったのっ!!??!」


思いがけないアインの言葉に驚愕した勇人は、ツッコミ以外の他の言葉はしばらく出せなかった。

だが、それよりもドナタの未来の姿が気になり、すぐさまデジカメの液晶画面を覗きこむ。


そこに映し出されていたのは…。


「オイ…アイン。

コレがオタクっ娘の未来の姿か…?」


「イエ、勇人様。

これはその…。

何と言ったら良いか…。その俗に言う…。」


「ガチャピンだな。アイン。」


「ガチャ様の写真ですね…。勇人様。」


そこに映し出されていたのは、あのガチャピンの全身写真だった。

だが良く見ると、どこかおかしい。


「何でガチャピンの腕と足の部分だけ中の人がうっすら見えてんだよっ!?

腕と足ほっそガリガリじゃん!

中の人倒れないか心配になるわっ!!

念写より、この中の人のがスゴいわ!!」


「あっれ~!?念写っ!!!」


パシャリ!!


アインは、ドナタの未来像を念写しようと、二度三度と何度も挑戦したが…。


「タモリ風の坂本竜馬に…。

又ガチャさんとムックさんの中の人。

ガリガリ君の当たり棒をくわえたネコに。

ジャイアンの格好した西郷隆盛。

サザエさん風のガチャピンにエヴァンゲリヲンみたいなガチャピン…。

アイン、お前どんだけガチャさんをリスペクトしてんだよ。」


「イエ、尊敬はしてないと思うんですが…。私、どちらかと言えばムック派ですし…。

ハッ!?まさか心の奥底ではガチャ様を…!?」


その後も念写しようと何度も挑戦したアインだったが。


ピカソのゲルニカ風のドナタの姿しか、念写出来なかった。


「人なのか…?コレは…!?

もう、人と呼べるレベルの姿じゃねぞアイン…。」


「人に近い人ならざるモノ…。

今はコレがせいいっぱい…。」


エヴァとルパンの隠れた名セリフを、爽やかに言うアインにイラっとした勇人は…。


「使えねー能力だな……。」


ズガーーーーーーん!!


勇人のその一言で…。

アインは、念写をするのを止めた。


ショックを受けていじけてるアインはほっといて…。

勇人がドナタについて対策を語り出した。


「さてアイン。

長い事モテなかった人間が、初めて異性と付き合うと…。

舞い上がって視野狭錯を起こし、無駄にラブラブになる事がある。

ドナタのも、それに近い事が起こったと推測出来る。

それを防ぐ為に、ドナタとオタ友になって男慣れさせとく必要が出てきた訳だが…。」


勇人がそう言うとアインは自信のある表情で…。


「そこいら辺は心配無いでしょう。

我々とかなり話しが合いそうです。

モンハンもやってますし…。

良い狩り友になれそうですよ。」


そう自信を見せるのだ。


「確かにそれはそうなんだが…。

とりあえずは未来を変えるには、二つの方法があるな。

一つは男慣れさせると同時に、ダメな物はダメとはっきり言える人間に変えるか。

もう一つは、三次元の男に見向きもしないパーフェクト腐女子にするか…。

さあ、どうする?」


勇人のその問いに、アインはしばし考えると、一つのケツ断を下した。


「マキ様をパーフェクト腐女子にするのは、あまり気乗りはしませんね。

それってつまり…。

「男はやはり二次元に限るっ!!」や、

「サンジは私の婿っ!!」や、

「ホモの嫌いな女子はいないっ!!」の、名言をおっしゃる喪女的存在にする訳ですよね勇人様…。

自然とそうなられたなら、別に構いませんが…。」


「…が?が、なんだよアイン?。」


「私達の手で…。

「このヤオイ本、面白いから見てみて、サスケ君陵辱総受けだから…。」と、薦めるのは…。

流石の私も、いささかドン引いてしまいますよ。

男慣れさせつつ、ダメな事はちゃんと断れる腐女子に変えた方が良さそうですね。」


「アインお前…。

お前のその発言にドン引くわ…。

友情ごっこの次は恋愛ごっこか…。

そう考えると、確かに両方ともあまり気乗りはしないがな。」


勇人とアインの方針は決まったが、その方針を実行する前に、クラスに大きな問題が出てくる。

鹿山先生の独裁体制が、ソナタの人生を狂わせ始めた。

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