真実の断片3

勇人は深い眠りの中、また夢を見ていた…。

矢城 勇人がまだ鈴木 勇人と呼ばれ…。

アインに始めてあった頃の夢の続きを…。


勇人は、アインから神様が地球を滅ぼそうとしてると聞かされたが、感慨も感情も無く冷たく言い放つ。


「なんだ…。

だったらしょうがないんじゃないの?

神様の決定なんだし。

都市レベルで破壊されて…。

中途半端に生き残って地獄のような光景を見ずに済むだけ、逆にラッキーなんじゃない?

赤信号みんなで渡れば怖く無いだ!

みんなで一気に死ぬんだったら、どうって事無いよ。」


アインはそれを聞くと、ため息混じりに首を振り出した。

この人は何も分かっていない、というムカつく態度だ。


「事は地球だけの問題じゃあ無いんですよ…。

私(わたくし)、最初に言いましたよね?

宇宙を救ってくれませんかと?

宇宙を救う話しで、なぜ地球が滅ぼされる話しをしたのか分かりますか!?」


そう言うとズイっと顔を、勇人に近づけて聞いてきた。

かなり近い。


「知らないよそんな事…。

てか顔近えよ…。

ってお前!?

男のクセに香水降ってんじゃねえよ!」


先程のアインの態度に、イラッとしてた勇人だったが、顔を赤らめながらまたそっぽを向いた。

結構良い香りだったようだ。

そんな勇人をほっといて、またアインは語り始める。


「男のクセにとは偏った考え方ですね。

コレは紳士としてのたしなみです。

ところで、勇人様はバタフライ効果をご存知ですか?」


「ああ、それなら知ってるよ。

蝶の小さな羽ばたきが、遠い海を越えたら、嵐になってるってヤツだろ?

どんな小く些細な事でも、時間と共に影響が大きくなって出てくるって事の例えだよな?」


「そうです。

地球が滅びる事で後々の宇宙全体に、多大な影響が出る事が分かりまして…。

その結果、バタフライ効果に近い事が起こり、宇宙の存在すら無くなってしまう事になりかねないのです。」


目を瞑り眉間にシワを寄せ、涙目になりながら語るアインを見て、勇人は少し真剣に聞いている。

ある疑問が生まれたのでそれを聞いてみた。


「無くなるって…。

宇宙はどれくらい後に無くなるんだよ?。」


アインは、息をのみ思い切って答える。


「ざっと地球の年数で答えると…。

20億年後位ですかね。」


「………………。」


勇人はバカバカしくなって、どうでもよくなってしまった。


「ハイ、ハイ!

お話しお~わり。

20億年も生きられたら、宇宙だって大満足だろう。

それ以上、長生きしてどうすんの。」


勇人は手をバタバタ振りながら、この話しの終わりを宣言する。

そんな勇人に、アインも必死で引き下がらない。


「20億年なんて宇宙さんの感覚からしたら。

あっという間、なんですってばっ!!

宇宙さんの気持ちで、考えてあげて下さいよ。

そうだ勇人様!

擬人化で例えてみましょう。

ちょっと儚げなメガネっ娘ろり顔巨乳の女子高生な宇宙さん。

そんな宇宙さんが、余命3年と宣告されたらどんな気分になります?

悲しいでしょう?

ねっ?可哀想でしょ?

ねっ?助けたいと思うでしょう~~~~ぅ?」


「宇宙を無理やり擬人化しても、余計分かりにくいわ~~!!」


もっともなツッコミである。


「それに俺もう死んでるからさ。

関係無いじゃん。

他のヤツに手伝ってもらえよ。」


「マイマスターが言うには勇人様じゃ無いと、絶対にダメなんですって。

お願いしまっす。

助けて下さい!

助けて下さ~いっ!!

私の事は嫌いでも、宇宙さんの事は嫌いにならないでくだしゃい。」


ドコかで聞いたような口調と、ウソ泣きだとバレバレの演技で訴えつつ。

言うが早いがアインはまたアクロバティックな勢いで土下座して頼み込んで来た。


それを見た勇人は、アインが必死過ぎて全体的に痛々しく思えてきた。

勇人はほんのもう少しだけ、アインの話しを聞いてやる事にした。


「それで…。

もし!!

もし仮に…。

もし仮にだぞ!!

アンタの言う、その宇宙助けをする事にしたら…。

俺は何をすれば良いんだ?」


アインはパッと明るい顔に早変わりすると。

勇人の手を取ってブンブン振り、満面の笑みで感謝しだす。


「ありがとうございますっ!!

宇宙助けをされる気になられたのですね!!

いや~良かった~…。

私(わたくし)、最初から勇人様は良い人だと気づいておりました。

つれない態度は、ツンデレ属性だからだと睨んでたんですよ~。」


『人の話しを聞いてねぇのか、コイツは!!

耳の穴に、ようかんでも詰まってんじゃねえのかっ?』


勇人はそうツッコミを入れたかったが、めんどくさかったので、黙ったままにした。

ボケが早過ぎて、ツッコムのも疲れてきているのだ。


「それではまず勇人様には、もう一度、人へと生まれ変わって貰いまして…。

そこから…。」


「悪いなアンタ!!

絶対ソレ無理だ!!

他を当たってくれ。」


ズガーーーーーーーーーーン!!川orz川


速攻の否定により、稲妻のような衝撃を受け絶望しうなだれるアイン。


そんな夢を見ていたら、また視界がぼやけて来た。


『又か…。』

 

遠くで矢城 勇人が誰かに呼ばれている…。

この声は天美(あみ)母さんの呼ぶ声だ。


「勇人~!アイン~!ご飯よ~!!

早く来ないとハンバーグ冷めちゃうわよ~。」


その言葉が聞こえて来ると…。

ハンバーグの香りがほのかにしてくるのが、勇人には分かった。

匂いに釣られて頭の中が覚醒し始めたが…。


「ほら~!!

ゆうくんハンバーグだってハンバーグ!!

小学校入学祝いのジャンボハンバーグ!

やったねパパ!!

明日はホームランだ!!」


ドスっ!!


「ぐふぅ~~~~~~~!?」


疲れ果てて一緒に眠ったはずのアインに、懐かしの吉野家CMネタを言われながら。

ボディプレスを喰らわせられて、有無を言わさず叩き起こされる勇人。

それにしても、アインは何処からこんなしょうもないネタを拾ってくるのか…。

お腹をさすりながら、勇人はそこに疑問を抱くのだった。

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