真実の断片2
勇人はまたも夢を見ていた…。
矢城 勇人へと生まれ変わる前の、まだ鈴木 勇人と呼ばれていた時の夢を…。
どうやらアインと始めてあった時の、夢の続きのようだ。
「その神様がですね。
旧約聖書のソドムとゴモラの都市の一節があるでしょう。
あれの…。」
「ちょっと待った!!」
そこで鈴木 勇人は、神様の執事と名乗るアインにストップをかける。
「なんで、人が旧約聖書の一節を知ってるテイで語るんだよ…。
そんなの普通知るワケ無いだろ…?
まずは、その…?え~と…?
ソドコ?とゴムラ?だっけ?
何だよそれは?
ウルトラマンかポケモンか、特撮映画に出てくるモンスターか?」
アインはペコリと頭を下げ謝罪した。
「あっ!?スイマセン…。
ソドムとゴモラを知りませんでしたか…?
イヤ、結構有名なもんで、ついうっかりしてました…。
ホラっ!ジブリのっ…。
ラピュタで、ムスカ大佐様も少しばかり言ってられましたから…。
日本人なら皆さん知ってるものだとばかり…。」
「そういう、人が知っている事を前提に、つい語り出すヤツがいるが、あまり良くねぇぞ…。
まあラピュタのムスカ大佐は知ってるけど…。」
そう言いながら勇人は少し顔を赤らめた…。
アインはその様子を見て、クスッと微笑みながら又説明しだす。
「では、旧約聖書のソドムとゴモラという都市のお話しを分かりやすく説明しましょう…。
ポケモンや特撮の、モンスターの名前ではありませんよ。」
アインは咳払いを一つついて語り出した。
「昔々のお話しです。
ソドムとゴモラという二つの都市があったのですが…。
その都市がまあ酷い都市で…。
人々の荒廃や退廃が酷くて、人のあらゆる罪が集まって出来たような、荒くれ者やならず者が、堂々と闊歩するような都市だったのです。」
「まあ、分かりやすく説明すると…。
北斗の拳の、モヒカン頭のトゲ付き肩パッド姿でバギーに乗りつつ、棍棒や斧を持った方々が、「ヒャッハー-ー!!」って言ってるような。
悪いヤツらが集まってる都市だと想像して下さい。」
急に俗な例えを出すなと、勇人は少し呆れたが、それ以上に…。
『荒くれ者のその例え話し…。
いらねえだろっ!!』
と、心の中でアインにツッコミを入れた。
「そのソドムとゴモラの都市に、ロトという人物が住んでいたのですが…。
あっ!?
今、宝くじかドラクエの事を想像しませんでした…?」
「してねぇよっ!?
そんな無駄な事しゃべらなくて良いから…。
ちゃっちゃと話し進めて…。」
その否定と催促の言葉を聞いて、アインはほんのりつまらなそうな顔をしていた。
だが、勇人は口では強気に否定していたが、確かにドラクエの事を一瞬考えてたので…。
『何かくやしい…。』
ほんの少し負けたような気がしてしまった。
「そのロトの所に、神様の御使いと名乗る人物が2名やって来まして…。
ロトにこう言うのです。
「今よりこの都市を滅ぼします。
当初この都市に、50人の良い人がいたら滅ぼすのを止めようとしてました。
だが、そなたの父親に促され大まけにまけて…。
10人だけでも良い人間がいたら滅ぼすのを止めるようにしました…。
だが、そなたとそなたの家族以外、良い人は10人も居ませんでした。
なのでロトよ。
家族を連れてこの都市よりお逃げなさい。
その際決して、振り返ってはいけませんよ。」
と、忠告したのです。」
勇人はほんの少し興味が湧いてきたのか、アインと名乗る男の話しを聞き出していたが…。
「しかし、50人を10人までまけさせるなんて…。
結構なやり手ですよね?
そのロトのお父さん。
8割引きですよ。80%OFFですよ?
大阪のおばちゃん並みに強引に頼まないとこうはいかない。
神様の御使いさん…。
スッゴい迷惑したでしょうねぇ…。」
『どうしてこう、この男は余計な事までしゃべり過ぎなのか?』
勇人は半ば呆れながらも、静かにアインの話しを聞くのだった…。
「神様がソドムとゴモラを滅ぼす直前、ロトは、妻と娘2人と一緒に逃げ出します…。
神様の御使いの言葉に従って…。
ロト達が都市を離れると、とうとうその時が来ました。
都市を飲み込むように迫り来る地獄のような業火、響き渡る人々の阿鼻叫喚の悲鳴。
ロト達家族は難を逃れましたが…。
ロトの妻だけがその時に、つい振り返ってしまいお亡くなりになられたのです。
と、コレがソドムとゴモラの大まかなお話しです…。」
一通り、ソドムとゴモラの話しを終えるとアインは大きく深呼吸した。
話しに一区切りついたと勇人が認識すると、アインに聞いてみた。
「で、そのソドムとゴモラの都市が滅ぼされた事と…。
俺にいったいどう関係があるんだ。」
アインはそれを聞くと、思い詰めた深刻な表情で語り出す。
「実はマイマスター…。
あっ!神様がですね…。
それと似たような事を、またやらかそうとしてるんですよ…。」
「へぇ…。なんだ良い事じゃん。
悪いヤツらが一掃されて、世界が少しは綺麗になるんじゃない?
で、滅ぼそうとしてる都市はドコなの?東京?大阪?名古屋?福岡?
もしかして…。
大分とかか?
言っちゃ悪いけどあそこ、ど田舎だよ。」
勇人の達観した物言いを聞くと、アインはブンブンと顔を横に振り。
大きな声で否定した。
「そんな地方のどうでもいい田舎レベルの話しじゃ無いんですって!!
今回、神様が滅ぼそうとしてるのは…。
地球!!
地球そのモノを、滅ぼそうとしてるんですよ!!」
っと…。
そこで、またしても視界がぼやけて来た。
どうやら矢城 勇人を誰かが起こそうとしているようだった。
「ゆうくん…。
ねぇ、ゆうくんってば…。
起きてよ…。
ゆうくんが起きないとおやつが食べれないじゃ無いか…。」
アインが幼稚園児状態の思考で、勇人を起こしている最中のようだった。
「…………アイくん…?
今ね昔の…夢…ふぁ~~~~~~。
おおいたけんが…。」
そう大きなあくびをしながらぼそりと言った勇人も、思考が幼稚園児状態へとなっているようだ。
「お、大分県!?
大分県がどうしたの?
す、スッゴい気になるけど…。
ほら、ゆうくん。顔洗っておやつ食べに行くよ…ねっ!?
今日はデカプリンだったよ。
それとも、ぼくにプリンくれるっ!?」
「……あげな~い。食べりゅ~…。」
「うん!じゃあ行くよ。
手出して。ほらっ。
ってやっぱり大分県が気になる!!
ゆうくんっ!!大分県ってなんなのっ!?」
勇人の手を引っ張って洗面所へと連れて行くアインの姿は、端から見たら兄のように見えるが…。
矢城 勇人の方が、矢城 アインより数十分早くこの世に生を受けたのだった。
時は静かに流れてゆく。
二人には小学校の入学式が近づいていた。
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