第11話 二人の秘密

彼と半ば、公然の仲になり、毎日の様に、熱いやり取りをしていた頃


私は、ちょっと疑問に思う瞬間が、度々あった。


それは、彼の唯の、趣味的な、性癖なのか


男性経験が、全く乏しい私には、判断しかねたけど


何となく、感じる物があった。


でも敢えて、触れなかった。


そして、ある日、突然彼が、私に言った。


「×××。今度、僕の初体験の話を、してあげるよ。」


「聞きたい?・・・。」


私は、唐突な彼の提案に、ちょっと戸惑いながら


「うん!聞きたい。聞かせて?」


と、半分、楽しみな様な、半分、何か慰める様な、言葉を準備して置いた方がいいのかな?何て、想いながら。


何故って、唯でさえ、恐らく何処の国でも


初体験って、そんなに美しく上手く行った、想い出ではないだろうと、


セオリー通りに、考えて居たし


まして、イタリア人にしては、真面目で不器用な彼から


そんな、上手く行った美しい想い出の、初体験の話が


出て来るだろうとは、


彼には悪いけれど、あまり思えなかったから。


次の日、彼が、彼の初体験の話をしてくれた。


私は、あまりに予想を裏切る、展開に戸惑い、そんな事を、


まだ出逢って間もない、まだ本当に逢った事も無い、まだお互いに、確固とした素性も分からない、


お互いに、外国人の、異国の女に、言ってしまう彼の


ある意味激しくて、危うげな純粋さと、私への誠実さなのか、私の気持ちを試す行為なのか、


一瞬、脳内が、パニックになったが、不思議と次の瞬間には落ち着いて、その事実を受け止め


自分自身の、彼と、似た様な、過去の暗い性体験を、告白していた。


その瞬間から、私達は、何をもの、誰をもの侵入を赦さない、


禁断の二人の秘密の、禁忌の共有の聖域を、


甘美で闇に包まれた、哀しい愛の聖域を、作ってしまった。

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