独り言
春風月葉
独り言
自分のことが嫌いとまでは言わないが、幼い頃から今に至るまで私は自分のことが全く好きになれなかった。
そんな私に好きだと一言、声をかけてきたのが君だった。
私は君が自分のどこを好いたのかもわからなかったけれど、初めて自分を好きになってくれた君に少しの興味を持った。
そうして君と過ごす時間が増えるとやがて、私は自分を好きでいてくれる君を好きでいたいと思うようになった。
そうやって私は自分の中にあるはずの君への好きを探して、それでも好きという気持ちを自覚はできなくて、君を好きにならなければと焦るようになった。
がむしゃらに好きを探すうちに、いつのまにか私は君という居場所を失って、そうしてようやく自覚した。
好きがそこにあったことを。
自分が空っぽになったような感覚と共に、私は脱力する。
好きを知る代わりに、私は自分が嫌いになった。
それを伝える先の君はもういない。
独り言 春風月葉 @HarukazeTsukiha
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