道楽者、4匹目、結晶の謎
高山地方サービススペース。来るのは初めてだから詳しくまでは分からないけど、レストハウスなんかの主だった施設は外観がほぼ同じだからすぐに見つけられた。サンドスターの結晶のお陰でなんとかフレンズの姿を維持出来たとは言え、ニホンオオカミさんは相当疲労したままの状態だったから、レストハウスのベッドを用意して休ませてあげました。本当、結晶を渡してくれたプロフェッサーさんにはラボに戻ったらお礼を言わないとだね。
さて、一先ず落ち着ける状態にはなったけど、まずは何をしようかな? ビーバーさんが無事にサイガさんを見つけられたかも気になるし、機械型についての調査もしたい。ツンさんにセルリアンが大挙した理由について聞いてみるのもいいかもしれないし……やりたい事はいっぱい出来たなぁ。どうしよっか?
「オーッスイエイヌー。ニホンオオカミの様子はどうさー?」
「あ、アムールさん。一先ずはベッドに横になって眠り始めたから大丈夫だと思います。まずはゆっくり休ませてあげるのがいいと思いますし」
「そだねー。にしても無茶するもんだよ、あの数相手に真っ向勝負挑むなんてさ。ま、ツン含む皆が耐えてたからあたし達が間に合ったんだろうとは思うけどね」
うん、それはきっとそうだと思う。もしツンさん達がセルリアンと戦わずに隠れたり逃げたりするのを選んでたら、多分このサービススペースはフレンズを襲おうとするセルリアンに蹂躙されて、調査どころの状態じゃなくなってたかもしれない。建物を簡単に壊せるくらいの力があるのは、詰所でアムールさんに会った時に既に証明されてるもんね。そうなったら、サービススペースに隠れたフレンズさん達も襲われて、被害はもっと増えてただろうな。
「真っ向勝負が無策な行いだったのは否定しないが、状況も切迫してしまって致し方無かったのだよ。まぁ、たった三匹で状況を打開してしまった君達から見れば、そう切迫した状況にも見えなかったかもしれないがね」
なんて言いながら私達に近付いてきたのはツンさんだった。私達が来るまでずっとセルリアンの相手をしてた筈なのに、疲れてる様子が見えないのは凄いなぁ。というか、カフェで一休みしてくるって言ってタカさんと一緒に行った筈だったんだけど、どうしたんだろ?
「あんれ? ツンってタカと一緒にカフェに行ったよね? なんでこっちに?」
「ふむ、最初はタカ君に連れられ行った、君達の言うカフェでなかなか香りの良い飲み物を振る舞ってもらっていたんだがね。その香りに釣られたフレンズの皆に占拠されてしまい休むどころではなくなってしまったのでこっちの様子を見に来たというところさ。フレンズは未知なる物への興味も深いからね」
あー……ここではそうなっちゃったか。いやまぁタカさんにもお茶の淹れ方は教えたから任せちゃったけど、これは後で救援に向かわないと不味そうかなぁ。温暖地方では本当、フレンズの皆が押し寄せなかったのは偶然だったんだろうなぁ。
「改めて、あの大挙したセルリアンから無事に此処を守れたのは君達のお陰だ。感謝しているよ」
「これで被害無しの完全勝利なら、踏ん反り返るくらい胸も張れるんだけどねぇ……」
「あの数のセルリアンが一か所に押し寄せるなんてそうそう起こるものではない。その状況からこの場所自体を守り切れた時点で上出来さ。あの子達の事は悔やまれる事ではあるが、ね」
結局、助けられたのはツンさんとニホンオオカミさん、それとこのサービススペースって事になるのかなぁ……なんでも出来る訳じゃないって事は分かってるつもりだけど、もう少し何とか出来たんじゃないかって思っちゃうよね……。
「……そうして俯いた様子を見ていると、あの戦闘中の勇ましいフレンズと同一のフレンズなのかと思ってしまうね」
「え? あぁいえ、私は別にそんな、勇ましいなんて言ってもらえるような者ではないですよ。あのセルリアンの大群と戦えたのだって、アムールさんやバイクさんが居てくれたからですし」
「けど実際、セルリアンと戦うって決めてからのイエイヌは頼もしくなったと思うけどねー。ってかツン? その言い方はちょーっと失礼なんじゃなーい?」
「あぁ失敬。興味深いフレンズと久々に出会って、つい観察に気を取られてしまったよ」
「か、観察?」
「ふむ、これも語弊があるな。私はこのパーク内にある興味深い物を見聞して回っている道楽者でね、そんな私でも君、というか君達のようなフレンズは見掛けた事が無いもので、出来ればお近付き、というのになりたいものだと思っていたのさ」
「……あ、なるほどあんたか! 噂で珍しい物があるって聞いたらそこにフラッと現れる変わり者の旅するフレンズが居るって聞いた事あるけど、それが確かツンドラオオカミってフレンズだった筈!」
「ほぉ、私もそのような噂が流れる程度には有名なのか。変わり者であるのには自覚はあるがね」
へぇー、ツンさんも旅をしてるフレンズさんだったんだ。で、噂を追って旅をしてるって事はタカさんが言ってた噂を追って高山地方に来たってところかな?
そう尋ねてみると、予想的中でした。ふぅん、タカさんが言ってた噂ってかなり広がってたみたいだね。
「ほぉーん? タカも見に行こうとしてたって言ってたけど、珍しい物ってそもそも何なのさ?」
「私が聞いた限りでは、見た事も無い不思議な洞窟だと言う話だよ。まぁ、残念ながらまだ私は足を踏み入れられていないのだがね」
「不思議な洞窟、ですか?」
「うむ。入る事が出来た者曰く、足を踏み入れた途端に中が眩しく光って、岩ではない白い壁や、ここの建物にも使われている透明な壁が中にあったそうだよ」
「! イエイヌ、それって……」
多分アムールさんが思い浮かべたのは、ラボやターミナルだと思う。眩しく光ったのは恐らくセンサーと連動したライトだね。予想通りならそこは洞窟じゃなく、何かしらの施設の可能性が高い。
けど、高山地方の上層に施設? 地図を確認しても、そんな所に施設があるような表記は無い。そもそも利便性が薄いし、どういう事なんだろ?
っと、地図を広げた私をツンさんが訝し気に見てる。ま、まぁ、ツンさん的にはいきなり何かが細々と描かれてる紙を広げて唸ってるんだからおかしく見えて当然か。
「ふむ? それは一体なんだい?」
「えっと、このアンインエリアを上から見て、そこに何があるかを描いた紙、地図って言います」
「これがあればパークの何処に何があるかって言うのが描かれてる物なら分かるんだってさ。ま、今のところまともに使えるのはイエイヌだけなんだけどね」
「なんと、そんな便利な物があるのか! ……見ても何がなんだかさっぱり分からないが、本当にそんなに便利な物なのかい?」
地図は文字と図形を理解してないと意味がほぼ無いからねぇ……けどじっくり見たいってツンさんが言うから、とりあえず渡してみました。唸りながら真剣に見てるけど、分かるのかな?
「恐らくなんだが……今居るのは、ここかい?」
「え? ……そ、そうです。どうして分かったんですか?」
「前にこの模様、文字……と言ったかな? これについて知っていると言うフレンズに会った事があってね。この形が確か、サ。こっちがスという文字だった筈。それで君達がここを確かサービススペースと言っていたなと思って聞いてみたのだよ」
ツンさんカタカナが読めるの!? と思ったけど、文字を無理矢理周りのフレンズに教えようとしてるのを傍目から見ただけだからほんの少し知ってるだけなんだって。文字を教えようとするフレンズさん……まさか、そんなフレンズさんが居るなんて。何処で会ったか聞いてみたら、平原地方のサービススペースで偶然見かけたんだって。平原地方か……。
「ただ、鳥のフレンズのようだったから今もそこに居るかは残念ながら分からないよ。まぁ、あの辺りを縄張りにしている可能性はあるがね」
「ほほぅ、イエイヌ以外の文字が読めるフレンズか……気にはなるね」
「はい。けど居るかも確定していないのに、この高山地方の問題を解決する前に行けはしないですね」
「だーねぇ。ともかく、そんだけでちょこっとは文字が分かるってツン凄いじゃん?」
「これでも物覚えは良い方だと自負しているよ。というか、さらっと言っていたが……イエイヌ君だったね? 君、文字が読めるのかい?」
「あ、はい。全部とは言えませんけど、大体の文字なら読めますよ」
あれ、なんかツンさんの目が光ったような? どうかしたのかな?
「それならば、君達は本という物を知っているかい?」
「本? 何それ?」
「えーっと、なんて説明すればいいかな? 絵や文字が書かれた紙を重ねて一つに纏めた物、ってところですかね」
「ふむ! イエイヌ君は本の事も理解しているようだね! いやぁ、実は旅の道すがらで見つけた本を一つ持っていてね、何やら動物の姿が描かれているようなんだが、如何せん書かれている文字が読めなくて一体何のために動物の姿が描かれているのかが分からなくて気になっている物があるんだよ!」
そう言って、おもむろにツンさんは毛皮服の上着をめくり上げた。ちょっ!? っと思ったけど、お腹の辺りにはどうやらツンさんが言っているらしい本があった。あ、そういう持ち運び方をしてたのね……いやそうか、基本的に私達みたいにポーチを身に付けるなんて発想は難しいだろうから、何かを持ち運ぶとなるとこうなるのか……。アムールさんもこれはやった事あるみたい。まぁ、大抵の物は落ちちゃうから大概は諦める事になったって言うのがアムールさんの弁です。
で、手渡された本は……開く前に何か分かった。単純に動物図鑑だねこれ。そう書いてあるし。大分色褪せて擦り切れてるけど、ツンさんが大事にしてたのか読む分には大丈夫そう。
「どうだい? 何か分かるかい?」
「はい。これ、動物図鑑ですね。文字はそのままその動物がどんな動物なのかって言う説明が書かれてます」
「はやっ! そんな一瞬で分かるもんなの!?」
「えっと、この一番最初に書かれてる文字がそのまま動物図鑑って文字なんです。漢字って言うんですけど」
「なんと!? 文字というのは色々あるのかい!?」
「はい。私が知ってる限りですと、漢字に平仮名、カタカナにアルファベットと、細かく言うともっと種類があるんですけど、私が分かる範囲になるとその程度になりますね」
うわぁ、ツンさんの目の輝きが増していく。これは、分かる範囲で文字について教える流れになるかなぁ……。
案の定文字についての説明に話は発展して広がっていく。どうやらツンさんが遭遇したって言う文字教えフレンズさんは、読めたのがカタカナだけだったみたい。なんか偏った知識を持つフレンズさんだったのかな? いやまぁカタカナだけでも読めるのは凄いんだろうけど……文章を読むのはなかなか大変なんじゃないかなぁと思っちゃうね。
「うへぇ……漢字とアルファベットだっけ? それは難し過ぎてあたしはさっぱりだわ」
「平仮名とカタカナについては、指導を受けられれば読めるようになりそうだね……ぜひイエイヌ君に教わりたいところだが」
「うーん……私としても知りたいって仰るならお教えしたいですけど、やる事があるんですよねぇ」
中途半端に教えて間違った文字の読み方を覚えさせちゃったら申し訳が無い。どうせ教えるならきちんと教えたいけど、機械型についての調査も進めないとだからねぇ……。
「よし、そういう事なら手は一つだな」
「と、言いますと?」
「君達は何らかの理由を持ってしているようだが、旅をしているフレンズなのだろう? だったらその旅に同行させてもらえないだろうか。元々興味の向くままに流離う道楽者だ、君達の旅の邪魔をする事もつもりも無い」
「おーぅそう来るかー。いやまぁあたし達がここまで来るまでに立ち寄ったとこを思い出せば、興味は尽きないだろうけどねぇ?」
「正直なところ、安全な旅ではないですよ?」
「元々旅はセルリアンと出くわす危険も縄張りを定めたフレンズより高いのは承知の上さ。それに、今何より興味深い者を見つけてしまったしね、諦めてくれと言われてもなかなか出来るとは言えないな」
あー、これは完璧に私の事ですね。ツンさんの目がそう言ってます。うーん、いいのかなぁ? いや別に隠してる訳ではないけど、私達に同行してもらうとなるとどうしてもターミナルやラボに一緒に連れて行く事になっちゃうもんなぁ。不必要にあれらを見せるのはあまり良くないと思うんだけど……好奇の視線がキラキラと私に刺さりまくってます。これは……ごめんなさい、この視線を向けられながら断るのは私には無理です。
「うぅーん……どう思います? アムールさん」
「ま、あたしもタカもイエイヌのやりたい事に乗っかってる感じだしね。もう一匹乗っかっても今更じゃない?」
「イエイヌ君のやりたい事?」
まぁ、もうツンさんは来る気満々みたいだから話してもいいか。人の事、過去に起こった事、今起こってる事。どれかでも聞いてツンさんが諦めてくれればそれでもよし、くらいの気持ちで話したんだけど……。
「このパークを作ったヒトなる存在……セルリアンの大量発生によるフレンズの記憶の喪失……機械型セルリアンのこの高山地方での発生……このパークでそんな事が起こっていたとは、驚愕だね」
「んで、それらの事を調べてるのがあたし等って事。ぶっちゃけ、セルリアンに出会う出会わないとかじゃなくて、セルリアンの事を調べに来てる訳ね。セルリアンと戦う事も他の旅するフレンズの比じゃないよー?」
「確かにそうなのだろうが……いや、それで最初にイエイヌ君がセルリアンに乗っていた事にも合点が行った。君達が言うように現在のフレンズが皆一度はセルリアンに捕食された事があると仮定すれば、何故無条件にフレンズがセルリアンを敵、ないし恐怖の対象と捉えるのかにも説明が出来る。全くもって驚きの連続だがね」
は、話を聞いただけでそこまで理解出来るって、ツンさん凄い。しかも口ぶりからして、フレンズがセルリアンに怯える理由にも疑問を持ってたみたいかな? 道楽者なんて言ってたけど、ツンさん本当はとっても賢くて凄いフレンズさんなんじゃ?
「ふふふ……全く、この道楽者にそんな話をして、今更ついて来るなとは言ってくれないでおくれよ?」
「って事は、あたし達の目的を聞いてもついて来る気満々って事ね」
「無論さ。これでも噂を追いながら見聞して来た事も覚えているし、役に立てる事もあるだろう。よろしく頼んでも構わないかな?」
「……力を貸してくれるフレンズさんが多い方が助かるのは確かですしね。ツンさん、これからよろしくお願いします」
「決まりだね。改めて……ツンドラオオカミ、君達の旅に同行させてもらう。よろしく頼むよ」
「パークの秘密探検隊、4匹目のメンバーって事だぁね。賑やかーになってきたねぇ」
「ん? 4匹目? 君達はもう既に4匹で行動していたのでは?」
……はっ!? そうだった、話し込んでて忘れてたけどビーバーさん探さないと! あぁ、ツンさんにはざっくりとビーバーさんと私達の関係を説明しました。どういう経緯で一緒に居たのかもね。
「なんと、あの子は君達の正式な仲間ではなく同行者だったのか。しかもセルリアンハンターの一匹だったとはね」
「それで、ここに逸れちゃった仲間が居るらしい事を聞いて駆けつけて、あの大変な事態の収拾は実のところを言うと、その……」
「はっきり言えば、ついでだーねぇ」
「……ついでであれだけの事をやってのけるとは、本当にとんでもないフレンズの集まりだね、君達」
戦闘面の主なとんでもはアムールさんだけどね……。ともかくまずはビーバーさんを捜そうか。調査はもう焦らずに出来るし、無事に再会出来たかも気になるしね。
ツンさんも連れてサービススペース内の建物を巡ってビーバーさんとサイガさんを捜索中です。そこまで広くないとはいえ、一つ一つの建物を捜すのって結構大変。お店になってる建物だと奥に広くなくても倉庫になってる建物もあるから、そこも見なきゃだしね。
ここにもちゃんと電気は来てるみたいだから、蛍光灯はスイッチを押せば点けられた。アムールさんはもう慣れた様子だけど、初めてなツンさんは蛍光灯にも興味津々だよ。こんな事が出来たのかってね。
「なるほど、こういった建物というのもイエイヌ君が言うヒトが作り出した物という事か。君のようにヒトの知識を覚えている者しかこういった仕組みは気付けないのも当然か」
「偶然触っちゃって気付くって言うのは、この明かりについてはありそうだけどねー。さーてさて? ここにビーバーは居るかいな?」
「その声……アムール姉さんッスか? あたしは此処ッスー」
今のは、ビーバーさんの声だ! 雑貨屋さんで発見かぁ。そう言えば、温暖地方のサービススペースにあった雑貨屋さんの倉庫でもロバさんに会ったっけ。なんだか縁がある場所だなぁ。
明かりを点けて倉庫に進むと、そこには座り込むビーバーさんと、そのビーバーさんの膝枕で眠ってるフレンズさんが居た。ガードさんが映像で見せてくれたフレンズさん、サイガさんだね。
「お、居た居た。やーっと見つけたよビーバー。で、どういう状況なん?」
「いやー、見つけたまでは良かったんスけど、サイガがもう泣き止まないし、泣き疲れてそのまま寝ちゃって動けなくなってたんス。って言うか、皆が此処に居るって事は……」
「セルリアンはなんとか出来ましたよ。今は、とりあえず一休み中ですね」
「マジッスか! あれだけのセルリアンをなんとか出来ちゃうなんて、3匹ともハンターより強いんじゃ……」
「伊達に旅してないってばさ。けどそっか、怖かったんだろうねー……話は何も出来てない感じ?」
「あ、それなんスけど、とりあえずサイガはなんか知らない物を持って此処に来たみたいなんス。これと、これなんスけど、イエイヌ分かったりするッスか?」
ビーバーさんからなんだか割れたお皿みたいな物を渡されました。……いや、これって、コンパクトディスク? 半分に割れちゃってるけどCDだ。サイガさん、何処でこんな物拾ったんだろ?
「ん? ちょっ!? イエイヌ、こっちの!」
「え? どうしたんですかアムールさ……ん!?」
「これは……イエイヌ君、確か似たような物をニホンオオカミを助けた時に持っていなかったかい?」
色は違うけど間違いない、ビーバーさんの手の中にあるのはサンドスターの結晶だよこれ! なんでサイガさんがこれを持ってたの!?
「なんかこれ、さっきまでは光ってたし持ってると元気になる感じだったんス。けど、今は光らなくなっちゃったんス」
「さっきまでは光っていた? それはどれくらい前だい?」
「んーっと、皆が来る結構前ッス。サイガが寝てからッスけど……って、んぉ!? どちら様ッスか!?」
「あぁ失礼。というか、ほんの短い時間なら顔を合わせてる筈だが?」
「え? ……あ! ここの前で戦ってたフレンズさんッスね!」
あ、ビーバーさんに説明しなくても思い出してくれたみたい。ツンさんはそのままビーバーさんに事情を聞いてくれてるから、一先ずビーバーさんから結晶を預かって私が持ってる結晶と見比べてみよう。
……ビーバーさんが持ってた結晶は、全体的に黒っぽいかな? 私が持ってるのが水色だから、その点は相違がある。けどそれ以外は殆ど同じ物みたいだね。
「見た感じ、色以外は同じっぽい?」
「ですね。……ひょっとしたら、セルリアンが反応したのってこれかもですね」
「まぁ、サンドスターの塊みたいな物っぽいしね。けど、イエイヌは持っててもそんなにセルリアンに狙われてなくない?」
「あ、確かに……」
「ふむふむ、憶測の域は出ないが、多分ビーバー君が持っていた結晶が光っていたのは、イエイヌ君がニホンオオカミの治療の為に結晶を用いていた時の可能性があるね。近付けて反応があるかは……どうやら無さそうか」
おぉ、ツンさんが凄くテキパキと状況を纏めてくれる。これは凄く助かるかも。で、私が持ってる結晶があの輝きを放っていた時にビーバーさんの結晶も光ってたかもしれないと……いやまぁ、今どっちもうんともすんともしない状況だから断定は難しいけどね。
ちょっと失礼って言って、ツンさんはビーバーさんが持ってた方の結晶を注意深く観察してる。私の方の結晶は元々ラボの方で解析されてた物だし、何か特徴があればプロフェッサーさんが教えてくれてただろうからね。特にこれと言った変化は……ん?
「む? この結晶、光を透かして見てみると、薄ら中に紋様があるようだね?」
「あれ、私の持ってた結晶もそうみたいです。おかしいな、こんなの今までは無かった筈ですけど」
「どれどれ? ……あ、ホントだ。なーんかボヤーっとしてるけど、模様に見えなくもない、かな?」
「うーん? どういう事でしょう?」
「ふむ? 流石に私も知識の中に無い物の事までは分からないからな……まぁ、強力なサンドスター回復効果があるのは目の当たりにしているんだ。大事にしておいて損は無いだろうね。ありがとう、返すよ」
「おとと、いいんスか?」
まぁ、どっちも見ただけでは確証を持ってセルリアン誘因の原因だ、とは言えないからね。元々の持ち主がサイガさんなら、返すのが当然だよね。
……私の予測にはなっちゃうけど、どっちもセルリアンを引き付ける可能性はあるとは思うんだよね。まぁ、今までの情報を元にしたら、だけど。
CDの方は割れちゃってるから内容の確認は出来ないけど、元々CDは情報保存媒体。もしセルリアンがCDから何らかの方法で情報を引き出せるとしたら、中の情報を狙って襲ってくる可能性は無くは無いと思う。フレンズの記憶だって、元を正せば記憶って情報とも言えるしね。結晶は言わずもがな、そのままサンドスターの塊。セルリアンはサンドスター自体も吸収する事はバイクさんで分かってる事だし、欲しがって襲ってくる可能性は十分にある。……つまり、結局は持っていた当事者であるサイガさんが目を覚まさないと原因の究明はブレーキが掛かるって結論に至るんだよね。
原因が分かるまでまだ油断は出来ないけど、とりあえずサイガさんが目を覚ますまではスペースの周囲を警戒しつつ、機械型の調査を進めるのが今は良さそうだね。提案すると、ツンさんとアムールさんもそれで同意してくれた。サイガさんの事は引き続きビーバーさんが任せてって言ってくれてるから、お任せしちゃおうかな。
「ならば、イエイヌ君が立てた予定に沿って各々行動と言う事でいいのかな? まぁ、私はまず色々聞かせて頂きたい事もあるんだがね」
「そうですね。タカさんの様子も確認したいですし、まずはカフェで状況整理とかもしちゃいましょうか」
「あ、そういやタカが他のフレンズに捕まってるんだっけ? 大丈夫かね?」
「とりあえずあたしはサイガが目を覚ますのを待って、えーっと、カフェッスか? 起きたらそこに行くようにするッス!」
うん、そうして貰おう。多分タカさんの手伝いをしなきゃ落ち着く事も出来ないだろうし、行ったら暫くはカフェから動けなくなるだろうしね。
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