管制、機械型、サンドスター

「ここが……」

「ウン、コノターミナルノ中枢、管制室ダヨー」


 食後に一休みして、この施設の役割として重要って聞いてる事について教わろうって事にしたんだ。まずは、というか此処でどっちの事も分かるらしいけど、セキュリティターミナルのセキュリティ、つまり警備施設としての役割はどういう事をしてるのかを教わろうと思ったんだよ。

 で、通されたのがここ、管制室ってところだね。うわぁ、いっぱい机が並んでるし目の前には壁一面にモニターだよ。しかもこのモニター、生きてる。映してるこれは、パークの各種施設かな? あ、温暖地方のサービススペースの様子も映ってる。カメラなんてあったんだ、気付かなかったな。


「これは……え? どうしてパークの風景がここに!? それに、なんだか小さい?」

「あーえっと、タカさんは私がラボで使っていたパソコンって覚えてます?」

「パソコン……あぁ、あのよく分からない黒いの。確か、イエイヌちゃんが何かやったら小さいのの中も色々動いてたわね」

「この壁は、その小さいのがいっぱい張ってあるって感じですね。それにパークのあちこちの風景が映ってるんです。ほらここ、私達が立ち寄ったサービススペースですよ」

「あら、本当ね。……あら? そこに見えるの、インパラじゃない?」


 タカさんの指摘する所を見ると、サービススペースの外周を走るインパラさんの姿が確かに見えました。ひょっとして、アムールさんへのリベンジの為に鍛えてるとかかなぁ……アムールさんに速さ比べで勝つって、相当困難だと思うけど……頑張ってと応援の念だけ送っておこう。


「イエイヌ、マサカパソコンモ使エルノ?」

「使いこなせるって訳じゃないですけど、基本的な事はなんとか出来ますよ」

「本当ニ凄イネ……ット大体分カッテルミタイダケド、ココデハ警備対象ニナッテル施設ノ様子ヲモニター出来ルンダヨー。コンナ感ジデ……アル程度ナラ操作シテ見回セルヨー」


 おぉ、ガードさんのコアが光ると、モニターの中の風景も動いた。どうやらラッキービーストさんの基礎機能として、通信接続出来る機械は自在に動かせるみたいだね。そもそもラボがそうやって動かされてたんだし、なんとなくそうかなとは思ってたよ。


「またここも凄いものね……」

「パークの警備を担ってる施設ですもんね。本来なら多分、ここでこのモニターを確認してる人が異常を監視して、何かあればそこの近くに詰めてる警備員さんに駆け付けるよう指示を出すって言う流れで仕事をしてたんだと思います」

「ソノ通リダヨー。今ハ僕ガ他ノ警備ビーストカラ報告ヲ受ケテココデ確認、必要数ノ警備ビーストヲソコニ送ルッテ用途デ使ッテルヨー」


 なるほど、幾ら警備の為とは言え沢山のラッキービーストさんを大挙させる訳にはいかないから、そういう判断をガードさんがしてるんだ。やっぱりガードさんもコードホルダーとしての役割をしっかりこなしてるんだね、凄いなぁ。


「……! あれ! あのえっと、モニターだっけ!? あれに見えるの、セルリアンじゃない!?」

「え? あ!」

「拡大スルヨ!」


 何処だろう、場所は分からないけど監視カメラがセルリアンの姿を捉えてる。けどまさか、この姿って……。


「とりあえず、とんでもなく危なそうって事だけは分かるわね……」

「マサカ、コンナ姿ニ成ルセルリアンガ居ルナンテ……」

「重機……パワーショベル。パワーショベル型、セルリアン!」


 記憶を辿って私が導き出した答えに、ガードさんは同意した。バイクさんやバルーン型セルリアンが可愛く見えるくらいの迫力だね……。


「本来ノ重機ノパワーマデ再現サレテルカハ分カラナイケド、コレハ迂闊ニ手ハ出セナイネ……」

「ガードさん、場所は特定出来ますか?」

「エット……ドウヤラコノ地方デ一番高イ山ノ高地ダネ。此処ニハカフェガアルンダケド……ア、ソレハ無事ミタイダネ」


 静かに佇むセルリアンから少し離れて、確かに何かの建物は確認出来る。けど、パワーショベル型の傍には普通のセルリアンの姿も見える。近付いたらどうなるかは……想像に難しくないかな。


「ケドコノセルリアン、一体何処カラ……? コンナノガ居レバ真ッ先ニ気付ケル筈ナノニ……」

「こいつは、今まで居なかったって事?」

「ウン……トニカクコノ場所ハ要警戒区画トシテ、警備ビーストデ監視スルヨウニシテオクヨ。フレンズガ近付イタラ、単体ジャキット歯ガ立タナイダロウカラ」


 そうするしかないだろうね……下手に近付いたらあのバケットで薙ぎ払われて一撃で終わりだよ。命に関わらなくても、食べられるのは間違い無いだろうね。


「あんな大物が居るなんて……あ、色は?」

「赤……ヨリ少シ濃イカナ? 朱色ッテ所カナ」


 前のバルーン型は完全に赤かったよね。それよりも濃い色か……警戒しておくべきかな。


「流石にあんな大物は私も相手にした事無いわね……アムールトラなら何か知ってるかもだけど」

「今はお昼寝しちゃってますからね……」


 あぁ、アムールさんとビーバーさんは満腹で眠くなっちゃったらしく、食堂でウトウトし始めちゃったから部屋で休んでくるよう促しました。だから現在は私とタカさん、それにガードさんとバイクさんでモニターを見てます。あのセルリアンの姿には、流石にバイクさんも驚いてる……かな? 目の見開き具合的にそうな気がする。


「ニシテモ、重機……機械型ノセルリアンカ。マダ、兵器ジャナイダケマシナノカモダネー……」


 それは、私もバイクさんと会ってからずっと懸念している事なんだよね。重機も確かに危険ではあるけど、兵器は他者を傷付ける為に造られた物。それを模倣したセルリアンが何処まで再現出来るかは分からないけど、間違い無く他のセルリアンとは別格の脅威になるのは間違いない。出くわさない事を祈るばかりだよ……。飛行機、戦車、戦艦……は流石に無いと思いたいけど、重機を模倣したセルリアンをモニター越しとは言え視認しちゃったからなぁ……セルリアンの情報の取り込み方、食べる以外の方法もなるべく早急に調べた方がいいかも。原因があるなら、それをなんとしても見つけておきたい。被害が出る前に。


「コウナルト、出来ル限リ早ク特殊ナセルリアン、呼称トシテ機械型トデモ呼ボウカ。機械型ガ発生シタ原因ヲ調ベナイトナラナイネ」

「そうですね……ガードさん、機械型って他の地方でも見掛けた事例ってありますか?」

「幸イ、今ハマダココ、高山地方ダケダネー。高山地方ト他ノ地方デ違ウ所ナンカハ探レルダケ探ッテミタンダケド、イマイチ結ビツク物ガ見ツカラナインダヨネー」

「それで、フレンズに何か知らないかを私達が聞いてくるって事になったんだったわね」

「フレンズが集まってる場所か……候補としては、やっぱりこの地方のサービススペースですね。温暖地方の様子からして、こっちのサービススペースにもフレンズが居る可能性は高いと思いますし」

「イエイヌちゃんの頭の回転の速さには驚かされるわねー……私の心当たりとしては、やっぱりあの噂の場所かしらね。確か、近くにカフェって建物、が……」


 ……私が静かにパワーショベル型が居るモニターを指差すと、タカさんの顔が見事に青ざめていく。うわぁ、噂の場所がそのままセルリアンに占拠された状態になったって事だよね、それ。そこにタカさんよろしく、噂を聞きつけて集まったフレンズさんが居たとしたら、大丈夫なのかな? 大丈夫である事を祈るしかないね……。


「そこに行くのは、出来れば避けたいですねぇ……」

「アムールトラを含めて三匹……それであれを相手にしながらいつものセルリアンも退治してって言うのは、アムールトラが幾ら強くても無謀よね……」


 ん? バイクさんがブォンと音を出した。これって……バイクさんも頭数に入れろって事? いいのかって聞いたら、また排気口が鳴った。え、いいの? いや、バイクさんの速度は確かに頼りになるけど、相手セルリアンだよ? って問い掛けると、バイクさんの視線が真剣だって物語ってる。……うん、相手をしなきゃならない時は頼りにさせてもらうって伝えた。きっと、バイクさんにも思う所があるんだと思う。うーん、あのセルリアンがイレギュラーって事なのかな?


「ヨク分カラナイケド、皆ガ言ウヨウニ協力的ナセルリアンミタイダネ。不思議ダヨー」

「全くね……とは言え、バイクの走る速さは確かに何かと重宝しそうだし、イエイヌちゃんなら上手くやれそうだしね。バイクの事はイエイヌちゃんに任せるとしましょうか」

「そう言われるとちょっと自信無いんですけどね……あーでもバイクさんに手伝って貰えれば撹乱や囮はし易くなるかも」


 それは駄目でしょってタカさんとガードさんに怒られました。ついでにバイクさんからも抗議っぽい音を出されてます。ことセルリアンとの闘いで私が出来る事って、状況確認と相手の様子の確認、それと相手の気を引き付けるくらいだからね。鉄パイプで思い切り石を殴っても、多分アムールさんやタカさんの一撃より威力無いだろうしねー。


「その状況判断と相手を観察する力がイエイヌちゃんは尋常じゃないと思うのだけどね……今までのセルリアンとの闘いで見る限りだけど」

「え、そうですか?」

「無駄が無いって言えばいいのかしら? 何かするのに、あまり迷ったりしてないでしょ?」


 言われてみると確かに……セルリアンと対面して考えなきゃいけない事はもう知ってるし、気を付けなきゃいけないのは未知のセルリアンがどんな動きや力を持ってるかだからね。それを押さえてるから余計な事を考えずに自分のやれる事をやってるし、確かに無駄な事は考えてないかも。考える余裕が無いとも言うけど。


「イエイヌ……意外ト指揮官向キ?」

「どー……なんでしょ? タカさんもアムールさんも私が何か言う必要が無いくらい強いですしね?」

「実際だけど、イエイヌちゃんが良いタイミングで動いてって言ってくれるから、あの変なセルリアンとやった時は凄くやり易かったわよ。私が手間取ってる時も手伝ってくれて助かるし」


 うーん、そう言う面で役に立ててるならそれはそれで頑張ってもいいかも? 上手く出来ればいいんだけど……邪魔にならないようにだけはしないとね。

 まぁ私の事はいいのです。とりあえず明日はサービススペースを目指してみようかって事にして、今見るだけみてみようかって事になった。当然、高山地方のサービススペースもここのモニタリング対象みたいだね。

 見た限りだと、異常は無さそうかな? あ、何か分からないけどフレンズの姿も見える。うん、やっぱりサービススペースはフレンズの憩いの場になってるみたいだね。


「こっちはどうやら大丈夫そうね。上手く噂の場所に集まってるフレンズがこっちに逃げてきてればいいのだけど……」

「それは行ってみないとですね。えっと、現在地と地図の表記を照らし合わせて……」


 サービススペースの位置と距離を確認しようとしたら、ガードさんがデータを送ってくれたのかデバイスに位置が表示されました。こういう機械的なサポートを受けれると、機械って便利だなぁと思うよね。

 さて、明日の準備が出来たところでもう一つの重要な役目について聞こうか。確か、地下の観測を行ってるって聞いたけど、具体的には何を調べてるんだろ?


「地下ノ観測ニツイテダネ。ウーン、ゴメンダケド、僕モソッチハ詳シクナインダヨネー。タダ、地下ノ温度ヤ土壌ノ質ナンカハズット確認ガサレテルミタイナンダヨネ」


 へぇ、そんな事も調べられるんだ。ガードさんに促されてそのデータを管理してるらしいパソコンに案内された。当然ガードさんもこれは操作出来ないみたいだから、ここは私の出番だね。

 電源を立ち上げて、まずは画面を確認。……当然此処もパスワードが要るんだよねー。辺りを探ってみたけど、それらしいヒントは無し。どうしよっかな……。


「当テズッポウデ入レテ解除出来ルモノデモナイシネー……」

「うーん……とりあえずラボのパソコンと同じでTOMORROWっと。……これで入れたら苦労はしないか」


 残念ながら画面は変わらない。困ったなぁ、流石にパスワードが分からないとどうしようもないんだよなぁ。


「よく分からないけど、ここの名前なんかではダメなのかしら? 確か、セキュリティターミナル、だったかしら?」

「ウーン……試シニ入レテミル? 綴リハコウダヨ」


 おぉ、ガードさんがプロジェクターを利用してセキュリティターミナルのアルファベットって言う文字を教えてくれた。よしよし、やってみよう。

 ……うん、ダメだね。表示が変わらない。けど、パスワードの入力欄の下にヒントって言うのが出た。どうやらパソコンへのパスワード入力を数回間違えたら出るみたいなのかな? それにはこう書かれてたよ。


「未知なる特性を秘めた物質……?」

「ソレッテ……」

「え、何? 何か分かったの?」


 タカさんの疑問への返答はちょっと待って貰って、ガードさんの心当たりのアルファベットを表示してもらった。出た文字は、SANDSTAR。このパークで未知なる特性を秘めた物質ですぐに思い当たるのはサンドスターだもんね。

 入力してみると……やった、開いた! ヒントが分かり易くて助かったよー。あぁ、どういう事かさっぱりって顔してるタカさんには説明しなきゃだよ。

 説明をしつつ、パソコンの中の情報を確認。うっ、これは流石に分からない文字が目白押しで私には解読出来ないかも。うーん、プロフェッサーさんにお願いすれば何か分かるかもしれないけど此処には居ないしなぁ。


「んー……あ、これって」

「どうしたのイエイヌちゃん?」

「サンドスターと火山活動の連動性について。これなら何とか分かるかもしれないです」

「ナルホド、地温ノ確認ハ火山活動ヲ測ル為ダッタノカモダネー」


 開いてみると、また文字量の暴力が起こってました……こ、ここで挫けちゃ分かる事も分からなくなるからね。頑張って読もう。

 ……暫く時間を貰って読み進めると、凄く気になる事がいっぱい書かれてました。つ、疲れた……全部は読めてないけど、分かった事だけとりあえず皆に話そうか。


「ふぅ……一気に読むのは無理ですね。疲れちゃった……」

「お疲れ様。それで、何か分かったの?」

「はい。まず、ガードさんが言うように地下の温度、地温を測ってるのはあのサンドスターを噴き出す山、これには特異変化を起こした火山ってなってましたけど、そこが活動を起こすタイミングを調べる為に行われてるみたいですね」

「と、とく?」

「あ、分かり難かったですね。そうですね……仮にサンドスター山としましょうか。ここは、サンドスター山がサンドスターを噴き出すタイミング、何時噴き出すかを調べてたみたいなんです」

「えぇ!? そんなの分かるの!? と言うか、ここってえっと、サンドスター山でいいわよね? そことは全然離れちゃってるじゃない? どうしてここでそれが分かるの?」


 それにはマグマの活動の活性不活性で地下の温度が変わるとか凄い難しい事が関わってくるから、ちょっと私だけじゃ説明が難しいんだけど……何とか頑張ってタカさんに伝わるように言葉を選んでます。む、難しいよぉ。


「え、えっと、地面の下にあるマグマって言うのが凄く熱くて、それはこう、動いてる物なのね? それが動き回るとここの周りの温度が上がるから、それを調べてた……でいいのかしら?」

「おぉー! そうですそうです! 良かったぁ伝わって」

「タカモナカナカ賢イミタイダネ。イエイヌカラ色々教ワレバ、文字ナンカモ読メルヨウニナルンジャナイ?」

「……それは少し面白そうかも。イエイヌちゃん、落ち着いた時にでもお願いしていい?」

「私が分かる範囲でで良ければですけど、分かりました。頑張ってみますね」

「ありがとう。っと、ごめんなさい、止めちゃったわね。えーっと、その温度が上がるのがサンドスターをあの山が噴き出す目安になる、って事でいいのかしら?」


 うん、このパソコンを使ってた人は少なくともそう思ってたみたい。そして、サンドスターはマグマと何らかの物質が化合して生まれた物質らしい、とも書かれてる。調査で分かった事らしいけど、サンドスターには冷えて固まった溶岩なんかに見られる多孔性って言うのが見られるみたい。


「多孔性……データ照合中……ナルホド、溶岩ガ固マル際ニ内部ニ含マレルガス等ガ抜ケナガラ固マルカラ起コル構造ダネ」

「はい。それがサンドスターにも見られるみたいなんです。思えば、地表に転がったサンドスターからもエネルギー、というかガスみたいな物が漏れて来てましたよね」

「! 確カニ……」

「ここから導き出される結論として、特性や噴き出す様子からサンドスターはマグマ由来、そうじゃなくても密接な関係があるって結論付けられてるみたいですね」

「サンドスターハマグマト関係ノアル物質カ……コノ研究結果ハプロフェッサーニ送ッテオイタ方ガ良サソウダネー」


 出来るのか確認すると、ガードさんからもあのプロフェッサーさんから出たコードが出ました。なるほど、それでパソコンに接続して、パソコンのデータはLBN経由でプロフェッサーさんに送るみたいです。便利だねLBN。

 にしても……疲れた! 頭脳労働ってこんなに疲れるものだったんだねー……研究員さん達もこんな風に疲れてたんだね。体を動かさなくても、休憩が必要なのにようやく納得出来たよ……。


「あの山にそんな秘密があったなんてね……サンドスターを噴き出すって事は分かってたけど、それがどうして起こるかなんて考えもしなかったわ」

「動物って、起こってる事はそのまま受け入れちゃうところがありますから、そうでも仕方ないと思います。……私も、この旅に出るまでそうでしたし」


 約束だからって、あの部屋に留まり続ける事を選び続けてた。外で一体何が起こってるかも知らずに……約束を守る、それが私の役目だからって言い聞かせて。

 本当は、今でも約束を守りたいと思ってる自分も居る。あの部屋に戻って、飼育員さんにお帰りなさいって言いたいって。でも、今はそれじゃダメなんだ。何が起こったかを突き止めないと、飼育員さんとの約束は絶対叶わない。人に、パークに何があったかを確かめる。部屋に戻るのは、それからだってやろうと思えば出来るんだから。


「疑問に思って、それについて調べて、答えを見つける……難しいけど、何かが分かるって大事な事ね」

「あんまりフレンズっぽくはないですけどね」

「そこは、ラボに着いた時点でそうだったんでしょう。まぁ、こうなったらただのフレンズじゃ見つけられなかった物を見つけられるまで、一緒に行きましょうか」


 ……本当に、アムールさんやタカさんに出会えて良かったって、改めて思った。普通ならおかしな事を言ってるって思われるだろう私の事を受け入れて、理解しようとしてくれてる。それが支えになってくれてないなんて、間違っても言えないね。

 笑い掛けてくれるタカさんに笑顔を返して、とりあえず調べ物は終わりかな。正直、パソコンの中の膨大なデータを私が処理し切るのは無理だし、ガードさんも任せてって言ってくれてるからお任せしちゃおうか。データが送られてるであろうプロフェッサーさんが大変な事になってないかが少し気になるけどね……。


 ――――チョッ、ガード!? 何コノデータ!?

 ――――イエイヌト僕等ノ頑張リノ結晶ダヨー。解析頑張ッテネー。

 ――――イヤマダラボノデータ解析モ終ワッテナインダケド!? チョッ、アー!


「……マァ、大丈夫……ダヨネ?」

「ん? ガードさん何か言いました?」

「独リ言ダヨー。気ニシナイデイイヨー」


 そう言うなら気にしないでいいかな? さて、これからどうしようかな。知りたい事は一先ず分かったし、手持無沙汰になっちゃったな。あ、忘れてた。バイクさんにサンドスターあげなきゃ。

 っと思ってバイクさんに触れたんだけど、あれ、いつもの脱力感が来ない。バイクさんどうかしたのかな?


「バイクさん? どうかしましたか?」


 あ、なんか排気口も戸惑ったような音を出した。私が触れたのに気付かなかったのかな? 考え事? うーん、話せないからよく分からないのが本当に困りどころだね……どうにかしてもっと意思疎通出来る方法無いものかな? いや、そもそもセルリアンについて分からない事だらけだし、調べる途中で何か分かったらいいのになぁ。

 とりあえずサンドスターは要るか確認すると、今は特に要らないみたい。走るエネルギーとかにしてるのかな? じっとしてればそんなにサンドスターは要らないみたいだね。こういうバイクさんの特徴はセルリアン共通かもしれないし、覚えていて損は無いから覚えておこう。


「にしても、喉乾いたわね。イエイヌちゃん、さっきの飲み物が出てくるの、私にも使えるかしら」

「あ、大丈夫だと思いますよ。使い方、教えますね」


 そういう事ならリフレッシュルームに戻ろうか。お茶するならクッキーなんかのお菓子もあるから食べていいって言われたし、少しタカさんとお茶してよう。その内アムールさんやビーバーさんも起きて来るだろうし、そうしたら明日の予定話したりしなきゃだね。それまでに洗濯や乾かすのも終わるだろうし、ゆっくりするのも大事だよね、きっと。


――――実に興味深い事案が立て続けに起こり、少々情報整理に時間が掛かった。イエイヌに触れられている事にも気付かなかったのは迂闊と言わざるを得ないだろう。危険が無い地下施設に居るとは言えだが。

 にしても、このような施設があったとは驚きだ。文化、文明という輝きの粋を集められて作られた研究施設、と言ったところだろう。これが他の地上にある施設の警備施設も兼ねていると言うのだから驚きを禁じ得ない。来た際に乗ったエレベーターなる装置もそうだが、その先の動く床。我は知らないが、イエイヌ達が呼称したヒトと呼ばれる存在……高度な輝きを有していたようだ。となると、先の大々的抽出作業の際に巻き込まれた可能性は高いだろう。……この事実をイエイヌ達に教える術が無い事が、少々歯痒いものだな。

 しかし、フレンズとは不思議なものだ。己の知らぬ知識に触れ、知性が磨かれるとその輝きも増していく。それはイエイヌだけでなく、同行者の呼称タカにも見られる事象である事から、フレンズの成長は輝きを増す有効手段だと言えるだろう。……だが解せない。ならば何故、地上で生活するフレンズ達は輝きを増していかないのか。そう言えば、イエイヌは言っていた。動物は、起こった事をそのまま受け入れると。……そうか、そう言う事か。

 地上で暮らすフレンズ、元動物であるかの存在は何事にも疑問を持たない。今までに無い事象に触れて興味を持つが、それが何かまで調べようとはしない、という事か。なるほど、それでは知識は増えていく事は無い。僅かには増えるだろうが、それが意味を持つ知識にはなり得ない。故に輝きの成長にも繋がらないという事か。

 つまり、タカ、アムールトラ、アメリカビーバーの三匹の輝きが増した切っ掛けは、イエイヌという知性の導き手が居たからこそ起こった事象、という事か。これも純種として、イエイヌがフレンズになった時から……いや、それ以前からの知識を全て失わずに所持していたから起こった偶然の産物、という事か。

 だとすれば、純種であるイエイヌの、いや、全てのフレンズから知性が失われれば、この輝きの成長の可能性を摘み取る事になる。それは、許し難き事象だ。大々的抽出作業があった際にもし我が存在していれば、女王に進言するのも辞さない。……待て、何故女王は今も全ての輝きを抽出する事のみを命令している? 大々的抽出で多くの輝きが集まったのだし、その後のフレンズ達の様子を少しでも観察すれば、全ての輝きの抽出は害があれど益は無いと結論付けられる筈。まさか……女王にも知性は生まれていない、のか?

 そもそも我に知性が生まれたのは、現状の姿の素であるバイクの情報と、それに残る輝きの残滓を吸収したのが原因。何故そうなったのか我も不明ではあるが……セルリアンにとって不要とされていた輝きを回収した事が原因だとすれば、是正出来るかもしれない。輝きの残滓……それが何なのかを見極める事が出来れば、セルリアンに思考を与える事も可能やもしれない。

 まだ我の疑問に解決を迎える為には、情報が圧倒的に足りない。まだまだ、このフレンズ達……仲間達との旅は続けていくしかないようだな。我に与えられたこの機会、有用に活用させてもらうとしようか。

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