話題サーチング
突然だが僕は本ならジャンル問わず読むタイプの人間である。
漫画雑誌は10誌以上チェックしてるし小説新潮も実は読んでる。新聞のコラムとかも楽しく読めるタイプだ。
でも、今の僕は急遽ジャンルを偏らせなければならなくなった。
「へー‥‥‥お付き合いするの早くない?まだ4巻だよ?」
そんな独り言が漏れる。
そう、今僕の専門ジャンルは少女漫画である。
ねえと妹からありったけの少女漫画を借り、まあ読みふけってみたものの………
「…面白いと聞かれたら面白いけど女の子の気持ちはさっぱりわからない」
会話の参考になると思ったのだが‥‥‥。
机の上に漫画を置いて床の布団に顔をうずめる。
『私、人混み苦手なの。だから、話す時は…人があんまり居ない所がいい。今は、まだ』
それはまあ、つまり。
話すことは良いと言うことなのであって。
それで、話す。
友達と、話す。
‥‥‥何を話したらいいのかまったく分からない。
藁にもすがるような気分で少女漫画に手を出したが藁は農家でなければ役立たない。
つまり男である僕には何の役にも立たないという事である。
「‥‥スキンケアして頭冷やそう」
あとハンドクリームで肌の保温、5分ストレッチ‥‥‥。日課をこなして頭をクリアにして考えればおのずと答えが見えてくるハズ‥‥‥。
と言う訳で居間でストレッチをしていると隣のソファーに寝転がってポチトチップスを食べていたねえが怪訝な目で見つめてきた。
「なに?」
「いや、なんでも…」
「そう……」
どうしたんだろう、ねえにしては珍しい表情。
(女子との会話に困ってんなら漫画よりもまず私らマイシスターに相談しろよこの顔だけ愚弟は‥‥‥てかそのシェイプアップを話せばいいんじゃないかな、絶対言ってやんないけど)
さて、朝になったので学校に来たのだが…
やばい。これはまずい。
どう考えても朝7時到着は早すぎた。
というか会話するにしてもどう考えても昼休みか放課後でしょうに何やってるのか僕は。
え、え、どうしよう。まだ校舎も開いてないし。校門前で待つ?
あ、無理。全校生徒が通る道に堂々と立ってるなんて失禁する。もう学校に来れない。
となると‥‥‥。
キョロキョロと周りを見渡すと、校門の近くに植え込みを発見。かなり大きく人一人ぐらいは入れそうだ。
「…………」
ゆっくりと茂みに入り、柵の隙間から歩道を観察する。
いつ来るのか、お願いだから早く来て欲しい。
僕は息をのんだ。
「‥‥‥‥‥」
「‥‥‥あの」
僕は息をのんだ。
そしてゆっくりと彼女の上からどいた。
「ごめんなさい死にます」
「死なないで!?」
華詩さんが声を荒げて止めてきた。いやこれは死ぬことでしか罪は償えない。
事の順番はこうだ。
『僕が植え込みに隠れて華詩さんを来るのを待つ→華詩さんを発見したら掴んで引き込む→成功したが押し倒ず体勢になってしまった。死ね変態』、なので死にます。
僕がカバンをひっくり返しカッターを取り出そうとした時、突然「あっ」と声が漏れた。
「これ‥‥‥」
華詩さんが拾い上げた物は、昨日読んでいた少女漫画だった。
「あ、それは‥‥‥」
「す、き‥‥‥」
「へ」
す、すき?
「‥‥‥なん、ですか?この、漫画」
「………はい!!!」
びっくりしたびっくりしたびっくりした!
そんなわけないのにほんとにびっくりした―――――!
「あの、私も、その‥‥‥」
もじもじと顔を伏せて、神の隙間から見えた肌は赤い。
‥‥‥今ならわかる。女の子、いや華詩さんの気持ちが。
「ほ、放課後、やっ昼休み、えっあー、あっ」
どどどっちにすればいいんだ‥‥‥というかまず都合のいい時間帯を聞いてからの方がいいようなでも、あああああ……。
「両方!」
「ウヒッ!」
突然の大声に変な声が出てでんぐり返った。
「昼休みも、放課後も、両方話そう。話したい」
「うん」
僕が絞り出せた言葉はそれだけだった。
「それでね」
「うん」
「2巻の気持ちを自覚したシーンと、その積み重ねが分かる1巻の最後が、好き、なの」
「‥‥・あー、あのカビンの所で気持ちが動いたってこと、か‥‥‥」
「それでね、この作者さんは少年漫画も今描いてて……」
「ホント?描くの早いんだね‥‥」
「そう、だね。確かタイトルは‥‥‥」
………ありがとう少女漫画さん。僕はこれからも本を読みます。
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