第2話 協力(1)
雲の見えないとても綺麗な夜空。そこには膨大な星々が連なっており、まるで私に注目しているかのようだ。
「あー、双子座。」
その中に自身の星座を見つけ、周囲の星々を目が届く範囲で物色する。
隕石が飛び交い月も見える。その後ろには地球らしき惑星もある。
「あれー?ユーフォーだー。」
……………………………………ん?
その時朦朧としていた意識が覚醒する。
寝ていた身体をゆっくりと起こし、一言。
「UFOはやばくない!!?」
困惑を和らげるように、全力で叫んだ。
それと同時に声はしっかりと聞こえる事を確認し、此処が本当の宇宙ではないことを知る。息もできるし、心臓も一定のリズムを刻んでいる。足場は見えないが存在しており、落ちることはなさそうで、壁もまた同様である。
「ここ、天国なのかな。やっぱり私、あの時……。」
ここに来る前の事を思い出す。身体中が押し潰されるかの様に軋み、燃えるように熱かった。
だが現在は服も赤くなく、五体満足。あの惨状が嘘だったと思う程だ。
「本当に嘘だったらいいんだけどな。」
そんな現実逃避を否定し、足元で眠っている子犬を抱きかかえる。以前の様に少し汚れているが、息はある。
「ごめんね。」
私がしっかりしていなかったばっかりに道連れにしてしまった。しかし今の私に出来るのは哀れみの表情で身体を摩る事しか出来ない。そんな事をしていると突然、床が直線状白く光り輝く。
「この光に沿って進めって事かな。」
撫でる手を止め、壁に手を添えながら慎重に進む。するとやがて、大きな扉の前にまで辿り着く。コンコンッ、とノックをすると鍵が開く音がした。ドアノブを掴み扉をゆっくりと開ける。足場の光が扉の中に入り込み、辺り一面が光で覆われる。
「…よく来たね。といってもここしか道はないんだし当たり前か。」
覆われていた光が散布し、目が慣れるとそこには死ぬ寸前に見た走馬灯で映っていた女性の姿があった。
「お、お邪魔します?」
オドオドしながら扉を閉める。先程の風景とは相反して、白一色。そんな場所に女性が一人というこの状態に再び困惑の表情を浮かべる。
「うん、いらっしゃい。取り敢えず座りなよ。」
パンク寸前の頭で状況を整理すると同時に軽く会釈して、少し前にあった椅子に座る。
「あはは、困惑してるね。まぁ大体皆、最初はそういう反応になるよね。」
そういってこちらの状況を冷静に分析する女性。こちらも冷静になろうと、現状について質問をする。
「あ、あの。ここは何処なんですか?死後の世界とか?」
1番最初の質問は自然と出てきた。どこかも分からない場所では落ち着こうにも落ち着けない。人間はそういう生き物なのだ。
「死後の世界ではないかな。ここは君達が言う所の天界ってとこだね。もっと簡単に言うと、神様の住んでる場所って事かな。」
そう言って、女性は話を続ける。
「んー、もうちょっと情報が欲しいよね。まずは自己紹介しちゃおっか。私の名前はティフォ=スパネグラ。ティフォでいいよ。よろしく、優希。」
「よ、よろしくお願いします。」
黒の髪の間から妖しく光る深紅の瞳に見つめられ、背筋が伸びる。なんでも見透かされてしまいそうなその目が私の心臓の心拍数を上げさせる。
「そんなに怪しまなくったってなんにもしないよ。疑い深いなぁ。じゃあそうだな、なんでも聞くといい。これが1番手っ取り早いか。」
そういうと両手を上げて無害アピールをしてくるティフォの素性を確かめるべく、ストレートな質問を繰り出す。
「貴方は誰ですか?」
「だから私はティフォ……。ってなるほど、そういう事か。」
私の聞いた質問の意図を理解したティフォがニヤッと笑う。
「私はティフォ=スパネグラ。君達がいう所の神だ。」
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