協力(2)
「私はティフォ=スパネグラ。君達がいう所の神だ。」
そうだとは思っていたが、実際にこの迫力を見れば伝わる。肌にピリッと電撃が流れ身体が竦んだ。が、それはそう長くは続かなかった。
「はぁ〜。駄目だ、威張ろうとしてもすぐ笑いそうになっちゃう。」
最初のニヤッとした表情はそういう事だったのか。もっと深い意味があると思った私がいたのに……。
「くぅ~〜ん。」
さっきの威張り?の様なもので子犬も目が覚めたみたいだ。やれやれとでも思っているのかそっぽを向いてしまっている。
「緊張状態も無くなってるみたいだし、話に戻ろうか。でもその前に。」
すると突然、空から少し大きな円盤型のテーブル、そして少し遅れて料理が2人分が私の前に姿を表した。
「お腹空いてるでしょ?この空間では食事は必要無いけど来たばかりだしね。」
確かにお腹は空いており、食事がしたいと思っていた所である。流石神、感服致します。
と心の中で感謝を述べる。だが、
「お言葉ですがティフォさん。少し多すぎでは無いですかね?」
そう。先程も言った通り、料理は2人分用意されている。が、しかし私は大食らいでは無い。匂いに釣られてテーブルに身を乗り出した子犬も自分が食べれるものがないと判断したのか、私の膝の上で丸まってしまった。
「おっと、コレは失礼。わんちゃんが来るのなんて初めてだからさ。」
ティフォは喋り終わると同時に指を鳴らす。
すると二人分あった食事の半分がテーブルに吸い込まれ、肉入りのドッグフードと牛乳が吐き出される。再度匂いを嗅ぎ付けた子犬は、地面に降りてくるくるとその場を回り出す。零さぬ様に皿を下に置き、声を掛ける。
「いい?待てっ……あー食べちゃった。」
流石に始めから出来る訳がないか。無心で貪ってるところを見るとそれもどうでも良くなってしまう。
「私も……いただきます。」
料理は七面鳥を使ったローストチキン、クラムチャウダーなど、まるで……
「まるで誕生日のよう……っていう表情をしてるね。答えは簡単。優希は今日誕生日だからね。」
そこで1つ、ティフォの正体に続いてしっかりと確認しないといけない事を思い出す。
「ここは天界だとティフォは言いました。という事は私は既に…死んでしまったのですか?」
その発言により、ティフォは左手の掌をこちらに見せつけてくる。その行動の意味を予測出来ない私は静かに答えを待つしかなかった。そしてティフォが口を開く。
「ごめん……ローストチキン持ちながらそんなに凄まれても……。」
表情はもう笑いを耐えきれないと言わんばかりに口角が上がっており、遂には吹き出し声を上げて笑って、こちらは唖然とするばかりである。ここにきて何回話が脱線しているのか分からなくなる程、私はティフォに翻弄されていた。
「こんなに笑うのは久しぶりだなぁ。話してて飽きないよ。……で、優希の安否についてだね。安心しなよ、ちゃんと生きてる。」
「生きてる」と聞いて、驚きと喜びが沸き上がってくる。あんなに血が出てたのに助かってるとは思わなかったのだ。
「ただ、無事とは言えない。意識不明の重傷で今頃救急車にでも乗ってると思うよ。
あれ?驚かないの?」
その位は覚悟していた。寧ろもっと酷いと思っていたのだから。そこでふっと子犬の事が気になった。食事中の子犬も持ち上げ、ティフォに見せる。
「ティフォ、この子は……?この子も生きてるんですよね?」
「わふぅ……。」
その返答にはティフォは口を開かず、ただ俯いて首を横に振るだけだった。
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