豚小屋のズーズー
小学生の時は周りでまだ牛、豚、鶏がいっぱいいる環境でございました。
通学路にあるおうちは豚小屋を持っていました。
道路が豚小屋より一段上にあったため、中の様子が結構よく見えました。
ある朝、脇を通るとまさにご飯の真っ最中。おじさんが大きな入れ物から野菜の細かいのや飼料を餌箱へ流し込んでいきます。
普段はごろごろ寝ている豚たちもここぞとばかり、我先にその餌箱に綺麗に並びます。
しかし、一つの区画に居る豚全部がそこに並びきれず、どうしても後回しにあぶれてしまう要領の悪い奴がどの世界にもいるんですね。
……でもその子は違いました。
豚のお尻が並んでいる状態で私たちからは見えています。
並ぶお尻の前を一頭がうろうろ……隙間に頭を突っ込んでみたり押したりしますがどいてくれません。
すると、ある一匹の豚のお尻の下に頭を突っ込み……そのまま持ち上げた!!
いきなりお尻を持ち上げられた方は
「ウィィィーーーーーーー!! ウィィィーーーーー!!!!」
と甲高い大絶叫をあげて浮いた後ろ足をじたばた。
重かったんだかすぐに降ろしてしまいましたが、一緒に登校していた友達とげらげら笑いました。
「なんて図々しいやつだ!」ということから「ズーズー」とあだ名をつけられたその子は、並ぶ豚の間に割って入りご飯に在りつけ……ませんでした。
こんなことくらいでは動じない、宙に浮かされた豚。頑としてその場をどきません。
なのでズーズーはまた後ろをうろうろ。
しかしお腹いっぱいになったやつが抜けるとすぐに入っていけたので、まあ食いっぱぐれることはなくよかったよかった。
それ以降、朝ごはんのシーンに出くわすと、友達と少し足を止めて「ズーズー」がいないかと見ていたのでした。
そして似たようなことをする子は全部「ズーズー」と呼ばれて、私たちの朝のちょっとした楽しみになっていたのでした。
たまにドナドナされていく豚の車に出会うと、中にズーズーがいるのかな、なんてちょっとしんみりした気分になったりしたものです。
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