第5話

Sの会社は人でごった返していた。

募集人数50人に対し応募人数はおよそ350人ほかのとは桁違いに倍率が高かった。

きっと私以外にもCで不採用だったCの人達が集まっているのだろう。


見ただけでやる気が下がる。

あぁ、これはきっと無理だろう、と私の根性無しがまた顔を出す。


私は他に就職場所を求めて、そこから離れた。

有名な企業は全部最初のと同じくらいだった。

ほかにも思いついた人気がなさそうな会社も見たが、有名な企業には劣るものの倍率は4.5倍あった。

一応受けておいたが、不採用だろう。


家に帰るのが嫌で初めて来た場所で歩きながら、時間を潰す。


そこはSの街に近い場所でCの中でも貧しい人達が暮らす街だ。

治安が悪いため、普通の人は近づかない。


何も考えずただただ歩く。


歩き続けていると、公演を見つけた。

昔よく公園で遊んだなと、中に入って橋のベンチに座る。

そこは公園全体をよく見渡すことが出来た。

普通の公園だった。ブランコにすべり台、砂場、鉄棒、水飲み場とそれを見つけるまではね。


それは水飲み場で水を飲んでいた。

驚いてじっと見つめていると、それも私に気づいたみたいで目が合った。


その目は空のように透き通っていて、私はただ綺麗な目だと思った。

それはそれは綺麗な目を持つ男性だった。

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