いつまでも隣にいられたら

ニコラウス

一緒に過ごした日々は宝物

 僕には悩みがある。僕のとても大切で、大好きな人が『ある時』を境に、悲しい顔を向けるようになったことだ。

 僕はぱぱさんとままさんの家の番犬。二人と幸せに暮らしていたある日、二人に赤ちゃんが生まれた。名前はまさると命名。あだ名はまーくん。


――まーくんと僕はいつも一緒にいた。


『初めて立った日』

『初めてお話した日』

『初めてお使いに行った日』


 色々なまーくんの初めてを僕は誰よりも近く、隣から見てきた。どれも目を閉じると昨日のことのように思い出せる。そんなまーくんも先週のお誕生日で十五歳になった。

 家族で祝って、凄く楽しかったんだけど、調子に乗って、まーくんと家中を走り回ったら、一緒にままさんに怒られちゃった。それから間もなく、僕は体調を崩してしまい、ぱぱさんと病院に行くことになった。

 病院では特に変わった手当も、薬ももらうことはなかったんだけど、ぱぱさんは怖い顔をしていた。


――そして、ここからだった。まーくんの様子が変わってしまったのは。


 病院に行った日からぱぱさんとままさんは今までより優しくしてくれるようになったのに、まーくんだけは違う。僕を避けてるみたいだ。

 この間も学校から帰ってくるなり、僕をチラッと見たかと思ったら、話もかけないで、部屋に入っちゃってさ。せっかく玄関まで迎えに行っているのに……。

 それから数日後の今日。朝から僕の体調は悪く、遊ぶことも出来ない程になっていた。それもあり、ただただ横たわっていることしか出来なかった。そして、気付くと夜になっていた。

 いつの間にか僕の隣には仕事から帰ってきたぱぱさんとままさんがいて、撫でてくれていた。おかえりの挨拶が出来なかった。いつもの日課だったのに……。

 ぼくはお迎え出来なかった悲しい気持ちの反面、撫でられる気持ちの良さに、また眠くなってきた。眠りそうになっていると、まーくんの声がした。泣いているようだった……。


――どうしたの?まーくん。泣かないで。


「ごめんね。ごめんね。怖かったんだ。遠くに行っちゃうのが……」まーくんは謝りながら、僕を抱きしめてくれた。まーくんはあわてんぼうだから、何か勘違いしているようだ。


――まーくん。大丈夫だよ。僕は少し眠るだけだから……。また起きたら、前みたいに一緒に遊ぼうね。眠る前に仲直りが出来て本当に良かった。


 安心した僕はまーくんの胸の中で静かに眠りについた。

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