第24話やっぱ、お守りには推しがイチバンだね!

 先日、娘さんから朗報が届いた。

娘さんが目標としていた職業に就くことができる事となったのだ。

以前から両親の誰に似たのかは不明なのだが、娘さんはものすごく努力家なのだ。

親の私から見ても目を見張るほどの努力家で、たびたび頭が下がる思いがした。

 離婚を決め、引っ越しの準備をし始めたころ、県外にいた娘さんに部屋に残っている荷物の処理について尋ねたところ、

「付箋にコメントが書いてあるけん、その通りにして。押入れの中の段ボールの中身は捨てていいけんね。」と、返事が返ってきた。

荷物を見ると確かに付箋がつけてある。『友達にもらった誕プレ捨てないで』『いつかいるかも。捨てないで』なるほど、付箋が付いてるのはお引越しするんだね。

そして、押入れを開けてみる。二段ある押入れの下の段にはデカい段ボールが二箱。

捨ててもいいと言ってたな。と思いつつ引っ張ると異常に重たい。しかもその段ボール箱は引っ越し用の段ボール箱より一回りもデカい。踏ん張って引っ張り出して中身を確認する。きっと着ない洋服や読み終わった雑誌だと思っていたのに、中に入っていたのは高校で勉強したノートがびっちりと詰まっていた。二箱も。

しかも、そのノートはすべてが綴じ代が金具のリングで綴じてあるリングノートだった。使い勝手がいいからと高校の頃に愛用していたノートだ。息子さんの五倍のスピードでノートの消費が激しかった娘さんだが、ここまでびっちりと勉強してるとは思ってもいなかった。『すげぇ。』と思った次の瞬間、私の脳裏をよぎったのは、『分別』という言葉。リングノートのリングを外さなければ捨てることができない。

何時間もかけて分別した。私の手の痛みも娘さんの努力の証だ。


 そして、娘さんはとても緊張しぃなのである。親として私は何ができるか?と考えた時、ふと思った。

今年の春に私が緊急で入院した際に、『あべちゃんに会うために踏ん張れ!』と、たくさんの画像とライブ動画(娘さんの合いの手入り(笑))を送ってくれた。

私はそのおかげで踏ん張れた。

ならば、私も何かしてやりたい。と考えていたところ、娘さんから試験の日におにぎりを持っていきたいと言ってきた。

これだ!娘さんの緊張をほどくにはおにぎり作戦だ!

YouTubeでの宮館くんのおにぎりを作ってやろう。私の地方では子持ち昆布はポピュラーな食材ではないが、探せばあるはずと大手スーパーへ行く計画を練る。

それだけでは物足りない。お守りも必要だ。娘さんの推しの岩本くんの画像をライブDVDから作成し、背中を後押しできる文言を探したのだ。

 『流水の鼓動』が出てこなかったんだよなぁ

試験数日前から行動をおこす。子持ち昆布を無事に手に入れ、画像を作り、文言を探す。『呼吸して 気負うなよ楽しもう こんなところで負けてられっかよ』といれてみた。岩本くんの言葉なら娘さんの背中を押してくれると信じて。

当日に握ったおにぎりとお味噌汁はYouTubeと同じものを。おしながきも添えて。

これで笑ってもらえたら大成功!

 試験当日は近年稀にみる豪雨だった。会場に着くまでスプラッシュマウンテンさながら会場に向かった。駐車場に着くと「試験前におにぎり開けてみるだわね。」と一言付け加えて送り出した。

試験終了時間に迎えに行くと娘さんの第一声は、「受かる気がまったくせん」だった。私は「お守り効かんだった?」と聞くと、娘さん「いや、ひーくんはよかった。非常によかった。安心した。」と、ならよかったと安心すると、続けて娘さんが「ひーくんはよかった。でもおにぎりがね・・・」ん?おにぎりがなんだ?

「デカすぎた。がっつり昼食じゃなくて、小腹に入れる程度でよかったにかん」と。

あっ!ごめん。YouTube通り宮館くんサイズでがっつりデカいの作ってたわ。

作るのが楽しくて娘さんがいつも試験の時は小食になるのすっかり忘れてました!

ごめんなさい。

それでも、娘さん「せっかく久しぶりに作ってごしたけん、夜に食べるね。」と優しいお言葉をいただき母は嬉しい限りです。

 一次試験に合格した時は信じられず「大丈夫か?!私が合格して」と不安を隠しきれてなかったのだ。大慌てで二次試験の準備をしたという娘さん。

私は二次試験の時も岩本くんのお守りを作ることにした。

一次試験の時は爆イケ写真だったので二次試験は笑った岩本くんをと思い画像を作ったのだがちょっと粗い画像になってしまった。まぁ、わからんかも。と勝手に思い

二次試験当日に会場に向かう車の中でお守りを渡した。今回も深呼吸できるように文言は『呼吸して』と。

お守りを見た娘さんはすかさず「おかん、画像が粗すぎ!縦筋ついとるがね!」と大笑い。まぁ、試験前に笑えるなら大丈夫だ!

すると、娘さんはお守りをじっと見つめて、「呼吸すれば大丈夫だよね。呼吸すれば大丈夫だよね?お母さん。」と、呟いた。緊張してるのが手に取るように伝わってくる。私は「そう、大丈夫。大丈夫だから」といいきかせながら、心の中で呟いた

「呼吸せんと死んでまうでな。」

 二次試験ではやり切ったと言った娘さん。顔もすっきりとしていた。

よかった。どうやらお守りが効いたようだ。


やっぱ、お守りには推しがイチバンだね!


娘さんの合格をお願いしてきた神社に夜明けと共に早朝参拝してお礼参りをした。

家族と推しの9人が健康で安全に活躍できます様にと。

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