エピローグ

常世の来訪者 

「……こうして、少年は一つの名も無き世界の文字化を未然に防ぐことに成功した。



 さらにこれまで使われなかったメディキュリオスの力を再び取り戻し、敵を圧倒。

 現地人らに見送られながら新たな世界へと旅立った。



 この経験は後にカタリィ・ノヴェル本人にとって、重要な意味を成すパーツの一つになることだろう。



 さて、次に彼らが向かう世界はどこになるのか。その答えは──











 星が落ちる。それが宇宙からの送り物か、あるいは人工物なのか。それは誰にも分からない。

 真っ白な半球状の物体。それが大海原に落下。着水、そして沈んでいった。


 夜の海中は真の暗闇。月明かりだけではたった十数メートル先さえ照らすことも出来ない。しかし、その日の海は違う。

 落ちた物体は沈み、深度を深めるにつれて発光する。淡い光は魚の目を惹き、辺りをうっすらと照らす。暗黒の中で舞うマリンスノーを煌めかせていた。


 幻想的な光景。それに釣られてやってくるのは深海の生物だけでなない。



 巨影──。怪しく光る球体をいくつも持った真っ白な影が近付いてくる。

 それも一体や二体ではない。十数もの巨大な人影にも似た何かが群がり始めていた。


 彼らは捕食者。それらの出現に驚いた深海の生物たちは皆一斉にどこかへと散る。だが、今回ばかりは捕食される危険性は皆無に等しかった。


 深海へと引き込まれるように沈む発光体。それを興味深そうに近付いては離れ、様子を窺う影たち。そして、その内の一体がそれに噛みついた。


 表面に張り付くように補食を試みる。彼らの口は腹部についているため、彼らよりも巨大な発光体にかじり付くにはこうする他手段はない。


 それを見てか他の個体たちも同じように食らいつき始め、あっという間に発光体は人型生物に覆い隠されてしまう。


 だが、次の瞬間。球体から謎の衝撃が発せられた。

 その影響か、張り付いていた数十もの人型は活動を停止。まるで即死でもしたかのように剥がれ、海底谷へと落ちていく。


 今一度姿を見せた球体。あれだけ群がられたにも関わらず、その表面には一切の傷はない。その直後、白い表面に亀裂が走る。


 ひび割れた球体の隙間から姿を表す生命体らしき存在。触手のような器官を使い、先の人型たちを回収。殻の中へと集めていく。

 全て集め終えると、生命体は殻の中に籠もる。亀裂も修復され、再び傷一つない状態に戻った。



 実にあっけのない一幕。群がる巨大生物はもう他にいない。捕食者らが消えた今、どこかへと逃げ去っていた深海の現住生物が戻り、その後を追い直す。


 謎の生命体が引き籠もる球体は海底谷の奥まで沈んでいった。

 怪しい光をいつまでも灯しながら──











 常世の世界、深海。そこを支配しているのは未確認巨大物体、またの名を『イジン』と呼称される生命体。




 そんな彼らが求めるもの。それは『アルファ鉱石』。それから製造される世界の兵器『アーマーギア』と際限のないありとあらゆる遺伝子情報だった。




 しかし、そんな悪食たちの前に突如として現れたそれは、この惑星ほしで作られた物でも、外宇宙由来の物でもない。ましてやからでもない異質な存在であった。




 そして、この世界へとやって来たカタリィ・ノヴェルらの前に立ちはだかるのは一機の機獣。アーマーギアとは似て非なる存在、アーマーローグの『神牙』と、そのパイロットの神塚美央。




 その世界で初めて経験するショックと神塚美央との出会い、さらにエターナルとイジンの邂逅が世界の命運を分ける闘いの火蓋を切る……




……の、かもしれません」







第二章『悪逆の機獣無法者』編  

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