時計の針が、夜中の零時を回るころ、
時計の針が、夜中の零時を回るころ、
カレーを煮込んでいたはずの鍋からスマホが出てきた。
一体何が。
どこの手順で間違ったらこんなことに。
(・・・・・・)
あめ色になるまで炒めた玉ねぎ、豚肉、じゃがいも、ニンジン、
カレールウを割り入れて、軽く炒めて味を付ける。
彼らが炒むあいだ、
ただボーっと、彼らが焦がされるのを見ていた。
目が眩むような孤独の作業。
具材を一人で切って、一人で調理して、一人で食べる。
美味しい、とかそういう感想は出てこない。
悲しい気持ちでフライパンの上の兵士たちを眺めた。
ぼくは変わらないのだろうか?
こうして、今日のように、若い、取り返しのつかない一日を浪費させて、
老人になっていくんだろうか。
または、誰も救うことができないのに、誰かに救われることを期待し続ける
毎日を送るのも確定的に明らかで、とさつ場でときに裁断を待つ毛糸のように、
無意味
で
残酷な命乞い。
それでは真に他人という存在が。
あがきが、乾きが、救いが、
世界を満たしてくれないではないか。
不意に焦げた匂いが、僕を襲った。
豚肉も玉ねぎもニンジンもジャガイモも全部焦げている。
そう今、カレーを作ってるんだったな。
間違った記憶の中に僕は迷い込んだんだ。
だが。
煮込まれたカレーの鍋からスマホが出てくるのに変わりない。
結論は変わらないのだ。
(・・・・・・)
振り出しに戻れ。
奇妙な生活 @bnpk
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。奇妙な生活の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ローカルニュース・雑記最新/晁衡
★64 エッセイ・ノンフィクション 連載中 47話
未整理の収蔵庫最新/嵯冬真己
★9 エッセイ・ノンフィクション 連載中 96話
ダイラ物語最新/ビダイ物語
★20 エッセイ・ノンフィクション 連載中 365話
あー坊譚新作/野苺スケスケ
★0 エッセイ・ノンフィクション 連載中 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます