時計の針が、夜中の零時を回るころ、
時計の針が、夜中の零時を回るころ、
カレーを煮込んでいたはずの鍋からスマホが出てきた。
一体何が。
どこの手順で間違ったらこんなことに。
(・・・・・・)
玉ねぎをあめ色になるまで、炒めた後、
一口大に切った豚肉、じゃがいも、ニンジンを
地獄の窯のように湯だったアルミ製フライパンへ投下する。
数分後、必死の抵抗むなしく彼らは、体液をほとんど外へと排出する。
色、形、国籍が様々な彼らも、分解されれば同じこと。
抽出されたエキスは交じり合い、もはや自己と他者の区別を無くす。
文学部の友人は、
ある春の夜に自分という他人が一番怖いと云って発狂した。
自分という存在が、植物細胞の細胞壁のように
外界から区分されていることを期待しない方がいい。
僕らは余りに弱く、自分で信じるほど自分のことを律しきれないんだ。
僕の中に眠っている、邪悪が、凶暴性が、僕らを飲み込むんだ、そうだろ?
「こないだ君に薦めた映画、あれは名作だ、見るといいよ」
君は夜に飲み込まれて、明日を見失った。
振り出しには戻れない。
あがり。
僕は。
夜食を求めて、彷徨った夜の最中、
見知らぬ誰かのスマートフォンのバックライトが
他人を思い起こさせる。
振り出しに戻る。
(・・・・・・)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます