時計の針が、夜中の零時を回るころ、

時計の針が、夜中の零時を回るころ、

カレーを煮込んでいたはずの鍋からスマホが出てきた。

一体何が。

どこの手順で間違ったらこんなことに。


(・・・・・・)

玉ねぎをあめ色になるまで、炒めた後、

一口大に切った豚肉、じゃがいも、ニンジンを

地獄の窯のように湯だったアルミ製フライパンへ投下する。


安全用のパラシュートは付属していない。

全員が持つには、コストがかかり過ぎるせいだ。

落下傘を持たない空艇兵は、地面に強く叩きつけられ、

高い熱伝導率によって、素早く均一に熱された。


ところで皆さん、空挺兵が時速何キロで降下していくか

ご存知だろうか。


僕は知らない。だから物理科の友人に聞こうと思って、

スマホをポケットから取り出そうとした。


しかし、スマホは鍋の中。

内部の電子回路はカレーにまみれてべちゃべちゃだ。


電子回路に乗せられた我々の友情は、

香味のヘドロの中へと沈む。


永久に独りぼっち。

振り出しに戻る。


(・・・・・・)

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