奇妙な生活

@bnpk

時計の針が、夜中の零時を回るころ、

時計の針が、夜中の零時を回るころ、

カレーを煮込んでいたはずの鍋からスマホが出てきた。

一体何が。

どこの手順で間違ったらこんなことに。


(・・・・・・)

玉ねぎをあめ色になるまで、炒めた後、

一口大に切った豚肉、じゃがいも、ニンジンを

地獄の窯のように湯だったアルミ製フライパンへ投下する。


安全用のパラシュートは付属していない。

全員が持つには、コストがかかり過ぎるせいだ。

落下傘を持たない空艇兵は、地面に強く叩きつけられ、

高い熱伝導率によって、素早く均一に熱された。


数分後、必死の抵抗むなしく彼らは、体液をほとんど外へと排出する。

色、形、国籍が様々な彼らも、分解されれば同じこと。

抽出されたエキスは交じり合い、もはや自己と他者の区別を無くす。


そこへルウを割り入れて、軽く炒めて味を付ける。

お次は大鍋の登場だ。


フライパンから大鍋へ具材が移動する。

大鍋に水を入れて、強火で沸騰するまで待つ。

お湯が沸いたら、中火にして具材を煮込み、

あくを取りつつ、漫画でも読みながら、時を待つ。


程よいところでルウを入れて、時々かき混ぜながら、

完成を待つ。


漫画を読み終えたら、総仕上げ。

鍋の底からすくい上げるように、全体をかき混ぜる。


そして何か堅いものにぶち当たる。

これは何だと、持ち上げてみる。


スマートフォンだ。振り出しに戻る。


(・・・・・・)

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