第2話 担任 吉田先生

「では、ここまでは明日の宿題にしまーす。」

みんなからの不服の声が教室に反響する中、私は不思議でたまらなかった。なぜ、宿題をやらなければならないのか。なぜ、みんなは宿題への不満があるにも関わらず、黙って宿題をやって提出するのか。

「愛衣ー、あーい!」

考え事に集中しすぎて夏希の声にも反応しきれなかった。私は不思議なことがあると調べたくてたまらなくなる。自分の好奇心を押さえきれなくなるのだ。

「あ、ごめん。次の授業なんだっけ?」

頭の中がそのことでいっぱいになってしまう。不思議を調べたい。

「愛衣なに言ってんの?もう学校終わったんだよ?大丈夫?」

夏希に言われて気づいた。周りを見ると、みんなも帰り始めている。

「あ、そっか、ごめん。」

下手な愛想笑いでごまかしてしまった。

「愛衣、どうかした?」

夏希が心配そうに私の顔をのぞきこんでくる。

「ううん、なんでもない。帰ろっか。」

軽く夏希を流してから私たちは教室を後にした。


帰り道。考え事をしていた私は夏希の話のほとんどを覚えていない。夏希に聞いてみたら何かしってるのかな。

「ねえ、夏希。宿題ってなんのためにあるの?」

私はそう唐突に夏希に切り出した。

「え?さぁ。なんのためなんだろーね?みんなが頭よくなるためじゃん?先生に聞いたらわかるかもね。」

首を傾げてなんでそんなことを聞いてくるのかと不思議な顔をして、夏希は答えた。夏希に聞いてもわからないのか。

「私、ちょっと学校に忘れ物したから、取りに行ってくる。先に帰ってて。」

私はその不思議の謎を解くために早足で学校へと戻った。


乗降口へ行くと、古いために重いドアに手をかけた。部活動をしている生徒が残っているためか鍵はかかっていなかった。

吉田先生はきっと職員室だろうか。まだ学校の校舎の造りを覚えきれていない私は頭のなかで職員室までの地図をたどる。

「あ、佐藤じゃないか。どうしたんだ?忘れ物か?」

すると、後ろから声をかけられた。吉田先生だった。私は答えが知りたくて吉田先生に質問しようとした。

「先生。あの、聞きたいことがあるんですけど。」

もしかしたら答えがわかるかもしれない。頭の中のもやもやがなくなるかも知れない。そう思うとわくわくしてとびはねたくなる。

「ごめんな、佐藤。俺、これから職員会議なんだよ。また明日聞くからそれでいいか?ごめんな。」

わくわくが一気に消えた。なんでよ、教えてくれないなら私のもやもやはどうすればいいの?

「先生、わかりました。じゃあ、自分で調べてみますね。」

教えてもらえないのなら自分の力で調べる他ない。

「おお、そうか。ごめんな。明日はちゃんと聞いてやるからな。」

そう言い残して先生は行ってしまった。

私もその場を後にした。


先生が私の話を聞いてくれないから悪いんだよ、私はちゃんと聞いているのに。あーあ、でもこれ、答え見つかるのかな。調べても調べても切りがない。あ。でもきっとこれが答えなのかな?

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私はいい子 ハル @niconico25

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