第1話 学級委員
教室に入ると大体の人数がそろっていた。
「お、愛衣ー、夏希ー、おはよー。」
「瀬名、おはよー。」
「おはよー、瀬名。」
私が瀬名に手を振りながら言うと、夏希がそれに続く。
もう5月。慣れなかった顔触れもみんな大体は覚えてきた。
「そいえばさ、愛衣聞いた?今日学級委員とか、決め直すんだって。」
夏希が連絡板を見て思い出したように言った。
「あぁ、あれのせいだろ?原田 雛乃事件の。学級委員だったのにな。」
隣の席の塩谷くんが夏希の言葉に補足する。
塩谷くんは学年でも目立つイケメン!
「そー!原田 雛乃事件!」
その塩谷くんの言葉に夏希がすぐさま反応をしめす。
「ヤバいよねー、あれ。遺体、原型を留めてなかったんでしょ?」
顔をしかめながらも楽しそうに塩谷くんと話す夏希。それに塩谷くんが続く。あたしが塩谷くん気になってること知ってるのに、なんで?悔しい。
「特に頭。ヤバかったんだってな。佐藤も見ただろ?」
気味悪そうに言う塩谷くん。それよりもあたしに話題を振ってくれたことが嬉しい。夏希には悪いけどやっぱり塩谷くんは私の方が好きなんだ。
「うん、頭割られてて中をかき回されたような後があったって」
まぁ、私はそんなことにも浮かれずに大人な対応ができるからね。
「うわぁー、朝から気味悪いな。」
しかめた顔もかっこいいな、塩谷くん。
「そしたらさ、学級委員やるのって愛衣になるんじゃない?ほら、他にいなかったし。」
私は以前の学級委員選挙のときに原田 雛乃と立候補していたのだ。しかし、結果はあえなく落選。
「そうだな。俺も別にいいと思うよ。やるんだろ?」
「うん。みんなの役に立ちたいから。やれたらいいなとは思ってるかな。」
塩谷くんに応援してもらえたー!嬉しさでとびはねて喜びたいのを我慢して私は勤めて大人の対応をした。
「はーい、席に着けー。HR始めるぞー。」
もとはといえばとても不思議だった。私は前の学校でも学級委員をしていて、それなりの素質はあると思ったのに。なんで私じゃなくて原田 雛乃なの?絶対私の方がいいのに。ほんとに不思議だわ。
「はーい、もうみんな原田のことは大体知っていると思うが、入学そうそう悲しい事件だったと思う。」
担任の吉田先生が教卓で話している。
「まぁ、それでもいつまでも引きずって行くわけには行かない。」
原田 雛乃の事件のせいか、先生も疲れたような顔で話している。
「今日のHRは原田がやっていた係や学級委員を決めたいと思う。やってくれるヤツいるか?」
原田 雛乃の事件を思い出してか、暗い空気につつまれた教室。
「はい、私学級委員やります。」
暗い空気を押しきって私は手を挙げた。
「おぉ、佐藤。やってくれるのか?他にやりたいヤツいるか?」
先生が暗い教室に呼びかける。それに答える人はいない。
「じゃあ、佐藤で決まりだ。よろしくな、佐藤。」
先生がし始めた拍手にみんなが続く。
「はい、よろしくお願いします!!」
私はみんなに拍手をされて認められたような気がして、とても嬉しくなって、大きな声で返事をした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます