私はいい子

ハル

プロローグ

私はすごく幸せだと思う。

優しいママ、

「愛衣ー、もう起きなさーい、ご飯よー。」

「んー。」

ママの声で今日も1日が始まるの。軽く身なりを整えて階段を降りる。朝ごはんの甘いいいにおいがする。今日はもしかして!

「今日は朝ごはんなにー?」

キッチンの手際よく朝ごはんを並べるママに呼びかける。

「今日は愛衣の好きなー、パンケーキでーす!」

「やったぁー!」

さすがママ!ママのパンケーキ大好きなんだぁー!跳び跳ねて喜ぶ私を見てママが微笑む。

「うふふ、喜んでくれたなら良かったわ。早く食べて準備しちゃいなさい、遅刻するわよ?」

「はぁーい!いただきまーす!」

やっぱりママのパンケーキはおいしい。ふわふわなパンケーキに甘いシロップをかけて口に運ぶ。これはホイップクリームやジャムをつけてもおいしい。

そのとき玄関のチャイムが鳴った。

「はーい、愛衣、夏希ちゃん来ちゃったわよ?」

時計を見るともう7時57分。夏希との約束の時間は8時。

「愛衣ー、学校行くよー。」

夏希のハキハキした声が聞こえる。

「ちょっと待ってー、今行くー」

急いで制服を着て、支度をする。

「おはよ、愛衣。」

玄関を開けると、待っていてくれた夏希が手を振って言った。

「おはよ、夏希。行ってきまーす」

夏希に手を振り返し、振り向いて家に叫ぶとちょうど階段からパパが降りてきた。

「お、愛衣、夏希ちゃん、行ってらっしゃい」

穏やかなパパ。

「あ、おじさん。行ってきまーす。」

パパを見た夏希は笑顔で答えた。

「もー、パパー。そんな格好でやめてよー。」

奥から出てきたママがパジャマ姿のパパを見て言う。まったく、パパったら。

「もー、遅刻するから行くね?行ってきまーす。」

「そうね、行ってらっしゃい。気を付けてねー?」

「「はーい」」


「愛衣ん家ってすごいよねー。幸せな家庭って感じ~。」

家を出ると、夏希が羨ましげに言った。

「あたしも自慢の家族だからねー。夏希が羨ましがるのもわかるよ。」

ママは優しくて料理上手、パパは穏やかで家族思い。ほんとに私って幸せだな。

「でも、あの事を忘れた訳じゃないよね?」

あの事。

「そりゃね、あっちのお母さんだってあたしにとっては大事な存在だからね。」

お母さん。

「そーだよね、あたしも少しだけど記憶残ってるから。もう10年も前の話か。」








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