第15話 「リーダーは顔が広い」
「おはようございます」
チームハウスの中に入ると、僕と出張中のソフィアさん以外のメンバーが応接セットの所に揃っていた。
「遅いよユウ君」
ユナさんが待ちくたびれたと口を尖らす。
壁掛け時計を見ると丁度9時になろうとしていた。
「ふふ、ギリギリだったわね」
ナナが余裕の笑みを浮かべながら、口に付けていたティーカップを応接テーブルの上に置く。
デニスさんとの話しが長引いてしまったと思いながら、応接セットのソファの端に腰掛ける。
「全員揃ったね」「トントン」
リーダーが口を開くと同時に、チームハウスの扉がノックされた。
「職業支援センターの者ですが、チームの方はいらっしゃいますか」
僕が応対しようと動くのをリーダーが制止し、スッと立ち上がり扉に向かう。
「待っていたよ、ウィルニス。ささ、中に入ってくれ」
扉を開けて職業支援センターの職員を招き入れる。
「久しぶりだね、スティル。元気そうで何よりだよ。君の活躍は主に女性職員から良く聞くよ」
見覚えのある職センの職員の人は、チームハウスに入るとリーダーと固い握手を交わし、僕達に向かってお辞儀をする。
リーダーと知り合いらしいこの人は、僕がコブセ村のクエストクリア報告をした職センの職員さんだった。
「彼は職業支援センターメルキア支部副支部長のウィルニスさんで、僕の昔から友人でもあるんだ」
リーダーに紹介され部屋の応接に案内されたウィルニスさんは改めて自己紹介をした後、今日の訪問目的を語り出す。
「皆さんも聞いているとは思いますが、先日のコブセ村に関するクエストクリアについて、職業支援センターから感謝状を出させて頂きます。ユウさんとマリーさんのお陰でコブセ村の平和は守られ、また、新たな地下通路も発見することが出来ました。これは、メルキア近辺の安全を確保する上で非常に有益な行為でありますので、職業支援センターから感謝の意を表すことにしました。こちらが感謝状と褒賞金になります。これからも、我が職業支援センターのクエストを積極的に受注しクリアして下さい」
僕とマリー姉さんにそれぞれ感謝状と褒賞金の袋が手渡される。
周りのチームメンバーからは拍手が送られ、少し照れた表情を浮かべてしまう。
「今日はそれだけではないのだろう?」
僕の事を微笑ましく眺めていたウィルニスさんは、リーダーから促され、次の目的を語り出す。
「スティルさんの言う通り、今日の訪問にはもう一つ目的があります。ご想像頂いているとは思いますが、ユウさんとマリーさんが発見した地下通路の
調査依頼にしてはかなりの好条件に感じるが、どうやら他のチームメンバーも同じ様に感じたのか響めきが起こっている。
「かなりの好条件だけれども、何かあるのかい?」
リーダーが口を開くと、ウィルニスさんは笑顔を見せて事情を説明してくれた。
今回僕とマリー姉さんが達成したクエストについては、首都にある職業支援センター本部にも伝わっており、大変高い評価を受けている。結果、地下通路の探索依頼については、ボーナスクエストとして
「なるほど、ユウとマリーの事を高く評価してもらっているようだね。大変有り難い話だ。それでは、今回の
「ありがとう。スティルならそう言ってくれると思っていたよ。これで僕も肩の荷が降りる。それでは皆様、
そう言って軽くお辞儀をすると、ウィルニスさんは颯爽と去って行った。
「お忙しい方なんですね。」
「副支部長だからね、色々大変らしいよ。でも、今回の件ではユウとマリーに直接感謝状を渡したくて、忙しい合間を縫って来てくれたらしい。彼も君達2人を高く評価しているんだよ」
「なんだか照れ臭いですね」
「ふふ。良い意味で名前が売れることは、冒険者としては大いにプラスなんだから素直に喜んで良いと思うよ。」
一呼吸置いてリーダーが皆に向かい語り掛ける。
「よし、僕達の予定は決まったね。早速今日午後にはメルキアを出発しよう。コブセ村に宿を取り、そこを探索の拠点とする。午前中は各自準備を、午後1時に南門に集合とする。探索クエストとは言え油断は禁物だ。いくら広大で探索が難しいと言われるヤクトの森とは言え、今回発見された箇所は比較的森の入口に近い場所だ、地下通路の入口が今まで発見されていないというのは不思議な話しだ。それに地下通路の出入口の隠し方もゴブリンにしては出来過ぎな気がする。ただの探索クエストとはいかないかもしれない。各自十分な準備をしてくれ。ユウとマリーの活躍により受けられた
「おー」「おー」
全員が立ち上がり右拳を天に向かって突き上げる。
最後の言葉は僕達チームの決まり文句だけど、リーダーの言葉は僕達チームメンバーに力を与えてくれる。皆やる気になって早速準備に取り掛かっている。僕も自分の準備に取り掛かる。
コブセ村に宿を取るので、大掛かりなキャンプセットは要らないけれど簡易な物は必要だし、便利グッズはあると良いよね。地下通路の探索だからランタンの類を少し多めに持って行った方が安心だし・・・
「ユウ君、本当にその荷物全部持っていくの?」
物品庫の片隅に積み上がる荷物の山を指差しナナが質問してくる。
「えっ、流石に全部とは言わないけど、半分くらいは・・・」
「無駄よ、無駄。今まで役だったことあるの?そんな荷物を背負ってたら、貴方が戦闘のお荷物よ!移動の手段だって徒歩でしょ?無駄な体力を消耗するわ。簡易なキャンプセットって、職業支援センターから発売されている小箱一つに収まってるのがあるじゃない。要らないわよ本格炭火焼き調理器具なんて、そんなんじゃ只の荷物持ちよ」
「・・・なんとなく、ある方がいいかなって」
「物品庫の在庫管理ならまだ分かるわ、それでも余計な物が多いと思うけどね。今回は冒険、クエストよ!『ある方が良いかな?』じゃなくて、必要最小限よ!空いたスペースがあるならポーション類を入れなさい!」
「すいません」
ナナの指導の下、必要最小限の荷物が詰め込まれていく。
(そりゃ、ナナの言うことは正論だけど、楽しみとかあった方がモチベーションも高まると思うんだけどね)
「生き残ることが最優先事項よ。死んだらモチベーションなんて関係ないわ。それに、多少の遊び心まで否定しないわよ、貴方のはやり過ぎなの。遠足じゃないんでしょ?」
相変わらず心の声が読まれているようだ。最早僕を押し退けナナが荷造りをしている。
「はい、出来たわよ。次は職業支援センターに行くわよ。講習の振替手続きをしないと」
手際良くバックパックの口を閉じると、僕にそれを渡して、自分はいつものセカンドバックを持つ。早くしなさいと目で合図を送ってくる。
「それじゃあ、僕達は先に行きます」
「うん、また後でね。南門に1時だよ。ナナエさんもお疲れ様です」
「はい」
チームメンバーに別れを告げ、チームハウスを出る。2人で職業支援センターに向かいメインストリートを歩きだす。講習の振替手続きの他に、投げナイフの補充もしたい。暫くメルキアを離れるので、出来ればアンナさんにも一言挨拶をしておきたい。
「私、先にホームに戻るわね。女神様に暫く留守にすることを報告してくるわ。南門で合流しましょう。」
「ああ、そうだね。気を付けて。また後でね。」
中央広場に到着すると、ナナはホームに向かい別れていった。
職業支援センターに到着し、講習の振替手続きを済ませる。受付でアンナさんを探すが見当たらない。いつもなら、こんな時は不意に背後から現れて、僕を驚かせてくれるのだが、辺りを何度か見回すがそれらしい人もいない。
「どうした、人探しか?」
「!!」
不意に背後から声をかけて来たのは師匠だった。
「師匠驚かせないでください。突然背後から声を掛けられたら、驚きますよ」
「いや、大分前から側におったぞ。余りに気付かないから声を掛けたのだが、そのタイミングで背中を見せたのはユウなんだがな」
やや呆れた感じで僕の顔を見つめている。
「で、仮初めとは言え師匠と呼ぶ私に気付けないほどユウは誰を何の為に探しておったんだ」
謝罪の後に正直に理由を説明する。
「例の地下通路の探索クエストに行くのか。それにしても、職センの職員を探していて周りが見えなくなるとはなぁ・・・とんだ見込違いか」
「いや、師匠、本当にすいません。自分が至らなかったのは仰る通りですが、見捨てるには早過ぎるかと。何卒、破門はご勘弁を」
慌てて師匠に頭を下げて許しを請う。折角尊敬出来る人に師事出来たのだ、こんな残念な理由で離れたくはない。
「冗談だ。至らないのは事実で改善して貰うとして、アンナには私から伝えておいてやろう。それと、今後は私にも報告するようにしてもらいたいもんだな。仮初めとはいえ、一応私はお前の師匠なんだから」
師匠は自分への報告がない事を気にされてたのだ。僕を気にかけてくれている証拠じゃないか。
「あっ、ありがとうございます。今後は必ず師匠に報告に上がります。これからも末永く御指導お願いします。」
少し涙目になりながらお礼を伝える。
「大袈裟な奴だな。まずは目の前のクエストをしっかりこなしてこい。土産話を楽しみにしているぞ」
「はい。ありがとうございます」
お辞儀をして立ち去ろうとすると、師匠から呼び止められる。
「ユウ・・・、今回のクエストだが、油断するなよ。・・・余計なお世話かもしれんがな、少し気になる事があるんだ。・・・これを持って行け」
師匠から紫色の液体が入った小瓶を渡される。
「これは・・・」
「マジックポーションのようなもんだ。無理はするなよ。結構な劇薬だからな、いざという時が来たら使え」
「ありがとうございます」
再度お辞儀をして師匠に別れを告げる。師匠の優しさに目頭が熱くなるのを感じる。右手で目元を拭い、小瓶を上着のポケットにしまう。
「必ず土産話をお持ちします」
そこにはいない敬愛する師匠に向けた再会を約束する言葉。昔父親が言っていた言葉を思い出す。
「人との繋がりが人を強くも弱くもする。ユウには強くなる人になって欲しいな」
暖炉の前で絵本を広げ、優しげな笑顔を僕に向ける父。
師匠との繋がりが僕を強くしてくれると思う。
「父さん、少しは期待通りに成長できているかな」
一度瞼を閉じて在りし日の父親を思い出す。
「行こう」
瞳を開き次への一歩を歩み出す。
待ち合わせ場所の南門に到着する。懐中時計を見ると午後1時5分前だった。
(まだ、誰も来ていないのかな?)
辺りを見回していると右肩に覚えのある重みが。
「ユウ君遅かったじゃない。みんな斜向かいの所に揃っているわよ」
ナナに言われた方向を見ると、既に皆んなが揃っていた。
南門で出発の手続きを行い、コブセ村を目指して皆で歩き出す。
整備された街道となるため、余り危険はないのだが、一応隊列を組んで進む事になった。
前衛はリーダーとマリー姉さん、後衛がユナさんと僕だ。
「4人でのクエストは初めてだね」
「そうですね。今回ソフィアさんがいないので、魔法の援護がないのが辛いですね」
「あらっ、ユウ君魔法が使えるようになったんじゃないの?リーダーが嬉しそうに話してたわよ」
「今はまだ修行中なんです。基礎魔法はなんとか発動出来るようになって来ましたが、魔力が足りなくて1日1回までと師匠に制限されてます。ところで、ユナさんは回復系専門なんですか?」
「そうなのよ。系統としては回復を専門に学んでいるわ。もっとも、簡単な基礎魔法は扱えるけど、得意ではないわね。やっぱり、ソフィアがいないと戦術の幅が狭まるわね」
「そうですね」
「まあ、今回は戦闘がメインじゃないからいっか。ユウ君頼りにしてるよ」
「おっと」
ユナさんから背中を叩かれ、思わず前によろけてしまう。
「大丈夫かなユウ。クエスト前に怪我をするのは勘弁して欲しいかな」
リーダーに受け止められ、慌てて隊列に戻る。
「ぷぷ、ユウ君怒られたね」
「ユナさんのせいでしょ」
小声で囁き合う。
「よし、皆んな元気がありそうだから、少しスピードアップしてコブセ村に向かうよ」
「はーい」
早目にコブセ村到着した僕達は、村で唯一の宿屋に予約を取り、ヤクトの森に下見に行くことにした。
マリー姉さんと僕が先頭に立ち、森の中を突き進む。
「この辺りでしたよね」
目的地と思われる地点に到着した。
「そうね。この辺りのはずなんだけど。」
マリー姉さんと辺りを捜索するが、地下通路を塞いでいた石板が見当たらず入口が分からなくなっている。
「誰かが塞いだと見るべきかな?」
「怪しいわね。この下にはゴブリン王国でもあるのかしら?それとも何者かに使役されていたゴブリン達で、使役者が蓋をしたとか」
「・・・後者だろうね」
「・・・どうするの?」
少し離れた位置でユナさんとリーダーが今後の方針について話し合う。
その間マリー姉さんと僕は地下通路の入口の捜索を続ける。2人で地面に剣を突き刺しながら辺りを丁寧に調べる。
「カキンッ」
「あった!」
「ユウ君あったの?」
「ええ、恐らく此処でしょう」
剣で指している場所にマリー姉さんが近づいてくる。
「誰が閉じたんだろうね?」
僕の隣に立ちマリー姉さんも自身の剣で地面の感触を確かめている。
「ゴブリンの討ち漏らしがいたんでしょうか?でも、それなら逃げてますよね?」
「そうね。リーダー、入口の場所が分かりました。」
マリー姉さんがリーダー達に向かって声を上げる。
「入口は開きそうかい?」
2で石板を持ち上げようとするが、ビクともしない。
「何かで固定されています。これは動きません。周りの土の具合から考えると、最近まで開いていたみたいですね」
近づいてきたリーダーも石板を動かそうと試みるが失敗に終わる。
「よし、場所は特定出来たし、一度コブセ村に戻ろう」
僕達は入口のある地面に目印を残し、コブセ村に戻ることにした。
コブセ村の宿屋の一階にある食堂で、少し早目の夕食と併せて作戦会議を開催することにした。
少し豪勢な料理がテーブルの上に並べられ、それぞれの手元には注ぎ立てのエールが置かれている。
リーダーが前祝いにと宿にお願いして出してもらっているスペシャルコースらしい。
「さあ、泡の消えないうちにまずは乾杯をしよう。今回のクエストクリアを祈念して!」
リーダーがエールの入ったジョッキを高らかに持ち上げると、皆も同じように持ち上げ、テーブルの中央でぶつけ合う。
「カンパーイ」「カンパーイ」
マリー姉さんが大皿料理を皆に取り分けてくれている間に、リーダーが明日の方針を説明し始める。
「閉ざされている地下通路の入口についてだけど、クエストの期間を考えると別の入口を探すのは難しいと思う。そこで、今回はミニ爆弾を使用して入口をこじ開けて中に入ることにしよう」
ミニ爆弾はその名の通り採掘用の爆弾を小型化したもので、威力も控えめとなっている。とはいえ爆弾には違いなく、炸裂音と振動は結構のものである。
「ミニ爆弾を使用したら中にいる相手に気付かれませんか?」
「もっともな話しだけど、今日の下見から考えて、既に勘付かれていると思った方が良いだろうね。まあ、今更気付かれずに潜入するのは難しいだろう。それに、別の入口を探し出したとしても、そこも警戒されている可能性が高いから、やっぱり気付かれずに潜入するのは難しいだろうね」
「そうね。ここは戦闘態勢を整えて一気に突入するのもありかもしれないわ」
マリー姉さんから小皿を受け取りながら、ユナさんもリーダーに同意する。
「ただ、今回の目的はあくまで調査だから、相手を殲滅する必要はない。つまり、危ないと判断した時点で速やかに撤退することにしよう」
「分かりました」
「ささ、料理が冷めない内に頂こう。折角の奮発した料理だからね、美味しく味わおう」
取り分けられた料理がテーブル一杯に広がっている。
「いただきまーす」
早速ユナさんが拳大の肉料理にフォークを突き刺し頂く。
「美味しいよこの肉。柔らかくて、脂も乗ってて、かかっているフルーツソースの酸味が肉の旨みを引き立ててるね」
配膳に来ていた宿屋の女将さんが嬉しそう話しかけてくる。
「お嬢さん達の口に合うようにって、うちの旦那が腕によりを掛けたんだけど、喜んで貰えてるみたいだね。まだまだ料理はあるからね、どんどん食べておくれ」
空いたお皿を手渡しながらユナさんが賛辞を述べる。
「旦那さん、料理がお上手ですね。これならメルキアでレストランを出しても流行りますよ。良かったら、このフルーツソースのレシピを教えて欲しいな」
流石ユナさん、自分のレパートリーに入れようとしているあたり、食への探究心は半端ない。
「実は、このフルーツソースのレシピは旅の女の人に教えて貰ったものなのよ。『街で流行りのフルーツソースだから覚えておくと良いですよー』なんてね。でも、レシピは広めないよう言われちゃってるのよね。今朝まで家に泊まってたんだけど、昼頃出発しちゃったから、教えていいか聞けないのよ」
残念そうな表情の女将さんとユナさん。
「そうなんだ・・・残念だけど仕方ないな。こうなったら、いっぱい味わって自分の舌で再現します。ごめんなさい、余計な気を遣わせて」
「いいのよ、こっちこそごめんね。今度そのお客さんが来たら、1人ぐらい教えていいか聞いておくわ。だから、また来てね」
「うふふ、楽しみが一つ増えました。また、必ず来ますから、私が味を再現するのが先か、女将さんが聞いてくれるのが先か、競争ですね」
2人で笑い合う姿をリーダーが楽しそうに見ている。
そういえば、リーダーとユナさんはいつ知り合ったんだろうか?
僕とマリー姉さんは一年前の加入だけれど、僕達のチームはもっと前からあったはずなんだよね。
「そういえば、リーダーはいつユナさんと出会ったのですか?」
「ユナとの出会いか・・・あれは4年前ぐらいかな、僕が街でファンの子達に囲まれていた時だったね。いきなり凄い形相で割り込んできた人がいてね」
目を細め昔を懐かしむように語り出すリーダー。
「もしかして、そこで困っているリーダーを助けたとかですか?」
「あー、いや、割り込んで来た人がユナだよ」
「えっ」
「天下の往来で美女を侍らかせている貴様は何者なんだってね」
「あっ、えっと・・・」
「今思えば、その時のファンはたまたまスタイルの良い子が多かった気がするけど、当時はそんな理由も分からなかったからね。通行の邪魔をしてしまったことをひたすら謝罪したよ。」
なんだか悪い事を聞いてしまった気がした。
「あぁ、大変な出会い方ですね」
「うん、まあ、その後の方がもっと大へ・・・・・・」
「どうしたんですか?」
リーダーの目が僕の後ろを見つめている事に気づき、恐る恐る後ろを振り向くと・・・仁王立ちのユナさんが凍りつくような笑顔で僕を見つめていた。
「ユウ君、レディの過去を詮索することはどうなんだろうね」
不味い、目がまったく笑っていない。
「す、すいません。」
「謝れば全て済むのかな?」
「いや、そんなつもりは・・・」
「帰りの行程、私の荷物を持つ事!」
「はい・・・」
リーダーが申し訳なそうに目で僕に合図を送ってくれている。これで済んだ事に感謝しよう。
食事が終わり自分の部屋に戻る。
「お帰り。夕飯は調達してくれた?」
部屋の端にある少し大き目のベッドの上からナナが欠伸をしながら話しかけてくる。
「うん。部屋で食べる分をお願いしたら、こんなに用意してくれたよ」
バスケットに入っている数種類のパンに、木の器に盛って貰った肉料理とサラダ、葡萄ジュースも用意してくれた。
「あら、思っていたより豪勢ね」
早速パンに齧り付く。
「どうやら村長さんが口を利いてくれているみたいなんだよ。その肉もシルクラビットのものみたいで、わざわざ村長さんが届けてくれていたみたいなんだよね」
千切ったパンに小さく切った肉を乗せて食べいてたナナが納得の表情を浮かべている。
「シルクラビットねー。モグモグ。道理で絶品だと思ったわ。ゴックン。それにしても、取引価格で一羽10,000ルピアはするわよね。いやはや人助けって役立つものね」
「ははは、現金だね」
「まあね。貴方の稼ぎが悪いから、現金にもならざる得ないわ」
器用に料理をパンに挟み、サンドイッチ状にして休みなく食べている。
妖精ってこんなにも贅沢なのかな?
「
「えっと、正面突破だよ。ミニ爆弾を使用して入口を塞いでいる石板を吹き飛ばすんだ」
少し驚いたらしく、食べる手を止めて話しかけてくる。
「リーダーらしくないような気がするわね・・・。まだ少ししか一緒に居ないけど、貴方からの話も合わせて考えると、余り強引なことはしないタイプだと思ってたわ。大丈夫かしら?」
実は僕も気になっていた所だった。
「多分大丈夫じゃないかな?無計画に事を進める人ではないから・・・勝算があると思うよ」
人任せな考えかもしれない・・・・・・。
ナナも不安げな表情で黙り込んでしまった。
僕に何が出来るだろう・・・・・・・・・。
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