第7話 「利益は折半です」
激闘冷めやらぬヤクトの森を後にした僕達は、結果を報告するためコブセ村に立ち寄っていた。
村長の所に赴き事の次第を説明する。最初は半信半疑で聞いていた村長も、詳細な内容を聞いているうちに僕達が信用に足る冒険者であることを認めてくれたようで、非常に感謝され村からの御礼としてコインが詰まった小袋を手渡してくれた。また、今回の件は単なる討伐クエスト以上の価値があるとし、村からの礼状として職業支援センター宛の書簡をしたため手渡された。大袈裟だと思い断わろとしたが、マリー姉さんからチームのためになるかもしれないと言われ受け取ることにした。
村長に別れを告げた後、僕達は依頼主であるククとココの兄弟の家に向かった。
勿論、結果を報告するためだ。
昼間と同様2人の母親が玄関から現れた。
「冒険者様そのお姿は・・・」
昼間と打って変わりボロボロの僕達を見て驚きの声を上げる。
「お子さん達のお手柄でした。本当にゴブリンの集団が森に隠れていましたよ。なんとか討伐出来たのですがこの様です」
「本当ですか?」
目を見開き口に手を当てて驚いている。
それもそうだろう、村の大人達が捜索して見つからなかったのだから、如何に自分の子供達でも見間違いと思っていたに違いない。
「やっぱりいたんだ」
「僕達の言った通りだったでしょ、ママ」
家の奥から依頼主のククとココの兄弟が現れた。
「やあ、2人のお陰で村の人達に怪我人が出る前に倒せたよ。本当に2人とも偉いね。メルキアの職業支援センターに知らせてくれてありがとうね」
精一杯の子供向け笑顔を浮かべ2人を褒める。
「うん、兄さん達も頑張ったね。ゴブリン達をやっつけてくれてありがとう」
「ねえねえ兄ちゃん、この人達傷だらけだけど、本当にやっつけてくれたのかな?もしかしたら、やられて逃げてきたのかもしれないよ」
「ココ、言い過ぎだぞ。いくらボロボロで逃げてきた様に見えても、僕らのため傷ついたんだからお礼ぐらい言うんだよ。こんなに怪我してるんだから、聞こえたらヘソを曲げて二度と来てくれないぞ」
昼間と同じようなやり取りが聞こえる。小声で話しているつもりなんだろうなー。
(一応冒険者ですからね、子供相手にムキになりませんよ)
「分かった。兄ちゃん達ありがとう」
兄に促されたココ君がペコリと頭をさげる。
悪意のないココ君の頭を撫で、「2人でお母さんを守れるように強くなってね」と言ってみる。
(きっとボロボロの僕が言っても心に響かないんだろうな)
「もし良かったら上がっていきませんか?うちの子達に是非武勇伝を聞かせてください。大したものは出せませんが、お夕飯をご用意いたします」
「お心遣い感謝致しますが、今日中にメルキアに戻りたいと思います。もうこの村を発ちますので、お気持ちだけ頂きます」
きっと気を遣ってくれたのだろう。子供達に真実を話し名誉挽回のチャンスをくれようとしたに違いない。けれど疑惑を晴らすよりもメルキアに戻りマリー姉さんの治療を優先させたいのが本音だ。
本当に申し訳なさそうにお礼を言う母親に全く気にしていませんと嘘をついて立ち去る。
(・・・・・・怪我の痛みが和らぐならいいか)
村の外に出ようとした時、一台の馬車が僕達の横で急停車する。
「冒険者様ー」
手綱を操っていた初老の御者が声をかけてくる。
「なんでしょうか?」
「マクドネルが、いや、村長が貴方様方をメルキアまで送るようにとのお申し付けなもんで。儂の馬車に乗っては頂けませんかね」
とても有難い申し出だった。
さっきの態度は別にして、やはりマリー姉さんの怪我の具合は良くなく、少し左足を引きずりながら歩いている。
肩を貸すと何度も言っているのだが「まだまだユウ君に助けられるわけにいかない」と、よく分からない理由で断られていた。馬車に乗せてあげられれば大分楽になるだろう。
「マリー姉さん、お言葉に甘えましょう」
「うん」
凄く素直だ、相当辛いのだろう。
「申し出有難うございます。是非乗せて下さい」
「そうこなくっちゃね。ささ、乗って下さい」
マリー姉さんを後ろの幌付き荷台に乗せる。幸いにして荷台には清潔そうな干藁があったので、御者の人に断り簡易ベットとなるよう整える。路頭に迷っていた時の技術が活きることもあるんだ、なんて考えながら準備を終える。
「マリー姉さん、短い時間かもしれませんけど横になって休んで下さい」
「ありがとうユウ君」
マリー姉さんを寝かせた後、僕は御者の人の横に座らせて貰った。僕が側にいないほうが、マリー姉さんが気楽に休めると思ったからだ。
御者の人はダストンと名乗り、村長は従兄弟だと教えてくれた。言われてみればどことなく似ているような気がした。
ダストンさんは、普段頼まれないような事をお願いされたので、村長は余程僕達の事を気に入ったんじゃないかと頻りに言っていた。
徒歩で1時間の距離も、馬車だと20分ぐらいで着いてしまう。
ダストンさんからコブセ村七不思議という興味深い話しを教えて貰っている最中に、メルキアの南門に到着した。馬車に乗せて貰ったおかげで予定よりも早く、午後4時過ぎに到着することができた。馬車を降りダストンさんに丁重にお礼を述べ別れを告げる。
「次からは相方を守れるようしっかり鍛えるんだよ」
相方って?マリー姉さんはそんなんじゃないと言う間も無く
「ええ、しっかりと強くなって貰います」
嬉しそうに横で答えるマリー姉さん。
顔を赤くし狼狽える僕は完全に尻に敷かれているように見えたのだろう、ダストンさんは励ますように僕の肩を叩くと、大きく手を振り去って行った。
高くそびえ立つメルキアの外壁を見つめると、戻ってきた実感が湧いてくる。門の手前で街に入るための受付を済ませる。直ぐに終わる手続きに、ジョブカードの便利さを改めて実感する。
5メートルはある門を潜り街の中に入る。
「帰ってこれたね。職業支援センターに報告しに行こうか」
「そうですね、職業支援センターに向かって、まずはマリー姉さんの治療をしましょう。報告はその後でも間に合います。先に治療施設に向かいましょう」
「ふふっ、気にしてくれてありがとう。リーダーの指示に従うわ」
街の中心部に向かうメインストリートを2人で並んで歩く。
冬が近付き日が短くなってきているせいか、午後5時前にも関わらず辺りは薄っすらと暗闇に包まれている。中心部には歓楽街があり、多数の飲食店が立ち並んでいる。
ナナは疲れたのか、「チキポンを忘れないように」と念を押して先に自宅に戻ると去っている。
大理石造りの建物の前に辿り着いた僕達は、職業支援センターの一階奥にある治療院に向かう。
ここの治療院は一般の人も利用することが出来るが、ジョブカードを所持していれば格安かつ優先で利用できる。
受付のお姉さんに、マリー姉さんの方から先に見てもらえるようお願いし、待合室で待機する。
「痛いのかな?」
「・・・えっ」
「・・・治療院って苦手なの。・・・私の戦闘スタイルは守りが主体じゃない?それって・・・痛いのが嫌いだからなの。即効性の有るハイポーションは、本当にとっておきだったんだから」
不安そうな表情を見せるマリー姉さん。ハイポーションは通常のポーションよりも効果が高く、ポーションでは瞬時の回復が出来ない深い切り傷や刺し傷、骨折や打撲も回復してくれる。マリー姉さんが僕の背中にハイポーションをかけてくれたおかげで、棍棒による痛打のダメージは
「それじゃあ、今回は特別治療をお願いしましょう」
特別治療とは早期に回復する治療を依頼する代わりに割増の治療費を支払う制度であり、結果として魔法やポーション類による治療、即ち痛みが伴わない治療方法が選択される。
「えっ・・・いいの?今回のクエスト、赤字なんでしょ?」
言葉とは裏腹に嬉しそうな笑顔。
「勿論です。マリー姉さんのとっておきを使ってしまったのは僕なんですから」
治療院の受付のお姉さんに、マリー姉さんの分は特別治療にして欲しいと伝える。
(それにしても痛いのが嫌いって、そりゃ僕も嫌だけどそれであんな凄い剣技を身に付けたってどんだけだよ)
「マリーさん」
マリー姉さんが受付の人に呼ばれて治療室に入っていく。
暫くするとさっきの様子とは打って変わり、いつものシャンとしたマリー姉さんになって現れた。すっかり傷も回復し、足取りも軽やかになっている。
「ユウ君お待たせ、ありがとうね。おかげですっかり良くなったわ」
なんでも今日は当たりの日らしく、高名なヒーラーの人が当番日だったらしい。
「ユウさん」
僕も受付の人に呼ばれ治療室に入る。
「そこに座ってね」
高名なヒーラーと聞いて勝手に想像していた初老の紳士ではなく、美しいエルフの女性が白衣を身に纏い座っていた。
「あっ、よろしくお願いします。」
「よろしく。それで症状は?」
「左腕に力が入らないのと、全身の打撲による痛みです」
「脱いで」
「へっ」
「上半身だけでいいわ」
「は、はい」
(別に何かあるわけではないのに・・・女性の前で上半身裸って、抵抗があるな)
少し顔を赤らめながら言われたとおりにする。
ひとしきり僕の体を眺める治療士の女性。
(恥ずかしいかも)
「この左腕は何をしたの?たぶん骨が折れているわよ」
道理で腫れてて痛いと思った。
「ホブゴブリンの槌の一撃を盾で受け止めてしまいまして」
「ふーん。盾で受け止めてね・・・技と身体、両方とも鍛練が足りないわね」
治療士の女性は治療を受けるために提示している僕のジョブカードを手に取り見ている。
「
そのとおりに死にかけている。
「ところで、さっきの金髪の女の子は君の彼女なの?」
早く治療を始めて欲しいと思っていた矢先にまさかの質問。
「君の事を凄く心配していたけど、違うの?」
「あ、姉の様な存在でして、その、先生が思っているような関係とはちょっと違うというか」
狼狽えてしまう質問。今日何度目かの誤解に何度目かの弁明。
(その割に弁明がぎこちないとか僕は何をしているんだ)
「成る程ね。本当の兄妹ではないけれどってところかしら。・・・実はね、お姉さんからも君の事を特別治療にして欲しいって要望があったわ、代金は自分が払うからって。どんな関係かと思ったけど、微笑ましい話しだわ。いいわ、今回は私からの激励として代金は通常料金にしてあげる。しっかり鍛えてお姉さんを守れる男になりなさい」
事務的な表情から一瞬優しい微笑みを浮かべると、目を閉じて呪文の詠唱を始める。先生の足下からエメラルドグリーンの光が立ち昇る。
「森に住まわし精霊達よ、風に宿りし精霊達よ、貧弱な人の身に起きた様々な災厄を取り払い、痛みを打ち消し立ち上がる力を分け与えたまえ。シルフィードブレス!」
詠唱の終了と共に僕の全身が暖かなエメラルドグリーンの光に包まれる。
「!!」
光が消えた途端、痛みも嘘のように消えていた。左腕の腫れも引いている。
治療魔法って凄い!
「治療魔法も万能ではないわよ。怪我をしない事が大事なんだから、それに次は有料だからね」
(考えていた事が見透かされたような・・・・・・僕は考えが顔に出やすいのかな?)
「次の人を呼ぶから上着を着て治療室から出なさい。スティルによろしく伝えて、良いメンバーを見つけたわねって。フィルからの伝言よ」
(リーダーの知り合いってこと?)
少し頭が混乱したまま、とりあえずお礼を言い治療室を出る。
受付の人から
マリー姉さんに治療士の先生がリーダーの知り合いで、特別治療代をサービスしてもらった話しをする。
「良かったね。それにしても、私達のリーダーって顔が広いのね」
僕の分については言及していないので、マリー姉さんの優しさが先生の気持ちを動かしたとは言えず、相槌を打つだけに留める。
(それにしても、今日一日マリー姉さんにはどれだけ助けられたのだろう。これは当分の間頭が上がらないな)
「依頼達成の報告がまだじゃない?」
「そうでしたね。行きましょう」
一階の中央付近、クエスト掲示板の横にあるクエスト報告窓口。僕達はそこに行きコブセ村の依頼達成報告を行う。職業支援センターの係員は始めにこのクエストを受けた冒険者がいることに驚き、次にゴブリンの一団が実在したことに再度驚き、最後にコブセ村の村長からの書簡を手渡す事によりトドメの衝撃を受けていた。衝撃から立ち直ると、依頼主からの依頼達成証明書(今回は母親が代筆してくれた)を受け取り手続きをするので暫く待つように告げられた。その間に戦利品があれば換金してきても良いと言われ、そうすることにした。
治療院とは反対方向にある職業支援センターが運営する換金所。ここでは、冒険中に手に入れた様々な品を鑑定し引き取ってくれる。金銀財宝は勿論、モンスターが所持していた武器や防具から装備の素材となりそうなモンスターの体の一部まで、最近では
換金所まで辿り着くと、クエスト帰りの冒険者達が換金のための順番待ちをしている。丁度混み合う時間帯かもしれない。
「もう少し高くならないのか?」
獣人族の戦士が職業支援センターの職員に懇願している。
「申し訳ございませんが今提示させて頂きました価格が限界です」
丁寧だが毅然とした口調に獣人族の戦士は犬耳と尻尾をグニャリと垂れ下げ、悲しそうな声で了承していた。
「少し可哀想だね」
「そうですね。期待が大きい分だけ落差にショックを受けますよね」
「今回のクエストの件、私達のチームには明日報告で良いよね」
「そうしましょう。チームハウスに誰も居ないかもしれませんし」
順番待ちをしている間、他愛も無いことを話す。
いよいよ次という時にマリー姉さんが耳打ちしてきた。
「たぶん次は右カウンターの男の人が対応してくれると思うから、私1人で行くわ」
マリー姉さんは自分が十分に美しく異性を惹きつける事を理解している。今回はそれを活用しようとの魂胆だろう。
「いいですよ。マリー姉さんには頼りっぱなしですし、換金も経験の一つです」
残念そうなマリー姉さんだが、そんな事にマリー姉さんの魅力を利用するのはいけない気がした。
「次の人」
予想通り右カウンターに呼ばれた。
僕はバックパックから旧王国銀貨10枚と水晶のカケラ3片を取り出しジョブカードと一緒に手渡す。
「お願いします」
「少しお待ちください」
職業支援センターの職員の人は受け取った戦利品とジョブカードを籠に入れ、カウンターの奥に入っていく。奥で鑑定専門の職員が品定めをしているらしい。暫くの後に先程の職業支援センターの職員が戻ってきた。
「旧王国銀貨は1枚1,000ルピア、水晶の欠片は紫色の物が5,000ルピア、他はそれぞれ1,000ルピア、全部で17,000ルピアで如何でしょうか?」
水晶の欠片が思ったよりも高額となり、治療費の割引を考えれば黒字になるかもしれない。内心喜んでいるとマリー姉さんが横から交渉を始める。
「紫水晶は最近需要が増えて市場価格が高騰しているはずよ、それに黄色水晶は同じ大きさの物が先日1,500ルピアで引き取られていたわよ。ちゃんと確認して」
「分かりました」
再度カウンターの奥に入っていく。
「ユウ君、戦利品の相場はある程度頭に入れておかないと損をするよ」
そういえばマリー姉さんはチームでの換金をよく担当していたっけ。僕は経理担当なのに、イマイチ換金の流れを理解していなかった事を恥ずかしく思った。
カウンターの奥から先程の職員が再度現れる。
「大変失礼致しました。紫水晶の方は7,000ルピアで引き取らせて頂きます。黄色水晶の方は相場が下がっておりまして、今は1,000ルピアでしかお受けできません。全部で19,000ルピアでお願いできませんか」
カウンターの下でVサインを出しているマリー姉さん。
「分かりました。ユウ君もいい?」
頷く僕。
「では、それでお願いするわ」
相手の職業支援センターの職員は、ハンカチで額の汗を拭きながらカウンターの奥に戻って行く。
「凄いですね。一声2,000ルピアなんて」
「やったね。お祝いに夕食は何処のレストランでディナーと洒落込もうか?」
ナナの顔が一瞬過るがこの流れには逆らえそうにない。
「一度家に戻って着替えてから出かけましょう」
(ナナへの謝罪方法を考えよう)
「お待たせしました」
職業支援センターの職員が100ルピアコインの詰まった小袋を持ってきた。
「1、2、・・・、189、190っと。確かに19,000ルピア受け取りました」
受取証にサインをして返す。ジョブカードを返してもらい、ホクホク顔の僕達はクエスト報告窓口に向かう。
クエスト報告窓口に着くと、先程の職業支援センター職員が現れた。側に用意してあったのだろう、報酬の100ルピアが入った小袋を手渡してくれ、労いの言葉をかけられる。報酬については辞退しようとしたが、子供達の気持ちでもあり、子供達の手元に戻るわけでもないから受け取るよう説得された。
受け取った袋の中身を一応確認する。1ルピアコインが
「お小遣いを貯めてたんだね」
「ええ、今度お土産でも持って行きましょう」
額面以上に重みのある報酬を受け取り少し胸が熱くなる。
「以上で手続きは終了ですが、最後に。コブセ村の村長からの手紙には、君達への感謝の念が多く綴られていました。これに対して、近く職業支援センターから感謝状が君達に送られることでしょう。また、君達が発見した地下通路の探索依頼も記載されていました。恐らくこちらは君達チームへの優先受託権が付与される見込みです。少しの時間的猶予はありますが、その気があれば準備をしておいて下さい。クエストお疲れ様でした」
職業支援センター職員の人にお辞儀をされ、こちらもペコリ。感じの良い人に当たってよかった。
職業支援センターは人気の高い職場で、各地の秀才が集まって来るらしい。勿論、己の腕一本で成り上がるぜ、なんて人達は冒険者や職人を目指すし、己の才覚で世の中を渡り歩くぜ、なんて人達は商売人として
(今日は皆良い人で良かった)
「シャワーを浴びて来てもいい?治療も済んだしサッパリしたいんだ」
「そうですね。帰る前にシャワーを浴びておきましょう。治療費の支払いも済ませておきますので、入口側のブースで待ち合わせましょう」
2人はそれぞれ二階にある男性用シャワー室と女性用シャワー室に向かう。これらも職業支援センターの施設であり、ジョブカード所持者は無料で利用出来る。時間帯によっては一般人も利用可能だが、こちらは有料となる。
シャワー室の入口でジョブカードを提示し脱衣所に入る。
端の方には汚れた装備類を洗浄するスペースもある。
ゴブリンの死体から回収したナイフを洗浄する。次いでショートソード、レザープレート、バックラーと、全て返り血や自分の血で汚れていた。
改めて今日生き延びれた事に感謝する。マリー姉さん、ナナ、2人のお陰で生き延びれた。
錆びないよう水気を拭き取り装備類をバックパックに仕舞う。それから素早くシャワーを浴びて、施設利用の精算所にへと向かう。
「御利用ありがとうございます」
窓口の職員が丁寧に挨拶する。2枚のレセプトを提示し精算を依頼する。
「お願いします」
「少しお待ちください」
2枚のレセプトから精算金を計算している。
「1,000ルピアになります」
1人500ルピアの計算となる。本当に基本料金だけの超サービス価格のようだ。100ルピアコインを10枚取り出し手渡す。
「領収書の宛名はチーム名になさいますか?」
「個人名でお願いします」
スラスラと領収書を書き上げ手渡される。
「ありがとうございました」
職業支援センター職員にお礼を伝え、入口付近のブースに向かう。
入口付近には衝立に囲われたブースが左右に三箇所ずつ設置されており、職業支援センターで使用していない時は、ジョブカード所持者は自由に使用してよく、使用予約も可能である。マリー姉さんは未だ来ていないようなので、空いている三番ブースで待つ事にした。
待っている間に今日の収支を計算する。コブセ村の村長さんから頂いた小袋には100ルピアコインが詰まっていて丁度100枚入っていた。収入は村長さんからの特別報酬10,000ルピア、戦利品換金代の19,000ルピア、クエスト報酬の100ルピアで合計29,100ルピア。
支出が、マリー姉さんのハイポーションとポーション3個で13,000ルピア、僕のポーション3個とチームの備品使用料が5,000ルピア、それに2人の治療代が1,000ルピアで合計19,000ルピア。
差し引き利益が10,100ルピアだから1人5,050ルピアだ。
村長さんからのお礼が丸々収入となった計算になった。今回のクエストの目的はお金じゃないけれど、これは嬉しい誤算だ。
「お待たせ。サッパリしたわ」
シャワーを浴び終わったマリー姉さんが現れた。僕と同じ様に装備類はバックパックに仕舞っているようだ。
「お疲れ様です」
僕は今まで行なっていた収支計算を説明し、マリー姉さんの取り分である経費と利益の合計18,050ルピアを手渡した。
「今日はユウ君が凄く活躍したんだから、私は経費分だけでいいわ」
「いえいえ、クエストの利益は等分分配が僕達のチームルールです。今日はチームでのクエストではありませんが、それでも僕達はチームメンバーですので。受け取って貰えないと次に誘い辛くなります」
「分かったわ、ありがとう臨時リーダー」
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