#7 王女と既婚者~Princess and The Married~ 2004/10/07
HQ69、サダト、アリーはレーダーを見ていてそこには点が九つ映っていた。
「現在の対象までの距離、100マイル。」
レーダーに映っている九つの点は時計回りにゆっくり回っている。
「会敵より15分経過。撃墜14。残り2.」
「助けて!喰いつかれた!」
女性パイロットの声が聞こえてくる。
「7時だ!エマ(Emma)!」
アシュレイは敵がエマの左斜め後ろにいることを伝える。
「どこ!見えない!」
「下だ!下!」
「フレア!フレア!フレア!」
別の男性パイロットがエマにフレアを使うように言う。
「残ってないわ!」
「俺が右から追い詰める!」
「振り切れない!」
「こちらアシュレイ、武装は全て弾切れだ!ポール(Paul)!」
「同じく弾切れ!」
「こちらレオ(Leo)、トリガー引いてもダメだ!」
「そんな・・・」
全員が弾切れの状態で2機の
「こちらアシュレイ、奴らのガスとISMも怪しいはずだ。なんとか逃げ切れ!レオ!エマを援護するぞ!」
「OK!」
敵のF-20Aがエマの
「ロックオンして驚かせてやる!」
「こちらダブルエックスレイ、F-16Cを1機補足。新手だ!」
「こちらモルジアナ(Morgiana)、政府軍を援護する。FOX1、発射!」
赤紫色の
「こちらアシュレイ、エマ!大丈夫か?」
「私は大丈夫です。それより、あのミサイルは誰のでしょうか?」
敵のF-20AがモルジアナのF-16CをISMでロックオン、発射するがモルジアナはフレアを撒いて回避するとハイ・ヨー・ヨーでF-20Aの背後を取り機銃を発射、F-20Aを撃墜する。
アシュレイ(F/A-18C)、レオ(F-5E)、ポール(F-4E《ファントムⅡ》)、エマ(MIR-2000-5)の編隊の中にモルジアナ(F-16C)が割り込む。
「こいつはアクロバットチームも真っ青だな。」
「あら、これは挨拶のつもりだったけど。」
5機がエアフィールド69へ着陸すると屋外の駐機場へ誘導される。モルジアナがヘルメットを脱ぐとパイロットも整備兵もみんなモルジアナに注目する。
「やれやれ。識別コードくらいちゃんと返してくれなきゃ、間違って撃墜していたら・・・。」
エマはため息をつく。
「あら、政府軍を援護するって言ったじゃない。それにお嬢ちゃんが私を撃ち落とすって言うの?」
「お、お嬢ちゃん!?その言い方気に入りません!子供扱いしないでください!」
モルジアナはエマにヘルメットとアタッシュケースを持たせる。
「サダト司令のところへ。案内してくれる?」
「何で私が?!」
エマは嫌そうに言う。
「タイガーシャークを追い払ったのは、誰だったかしら?」
エマは反論できずにサダトのところへ案内する。
飛鳥は図鑑を見て次の機体を決める。
「新しい機体は決まったかい?」
マクラーレンが電卓を持ってやってくる。
「ええ。Su《スホーイ》-27
飛鳥はマクラーレンに新しい機体とカラーリングを説明しながら色鉛筆で塗った紙を見せる。
「わかった。特殊兵装はどうする?」
マクラーレンはSu-27の特殊兵装のラインナップを見せる。
「無誘導爆弾と4連装空対空ミサイルを32発ずつ。」
「はいよ。機体が35万
マクラーレンは電卓をピコピコ叩いて354160という数字を飛鳥に見せる。
「はいはい。私の通帳から引いてちょうだい。」
「毎度あり。あと、注文の品のことじゃが・・・革命軍がナセル王国の領海の半分を海上封鎖しちゃってよ・・・そこを通る商船を全て臨検して政府軍のものを爆破しちゃうのじゃ。・・・なんとかバラして空輸できねぇかと算段をつけているが、まぁ1週間はかかりそうじゃ。」
「わかった。新しい機体、楽しみにしているね。」
飛鳥が倉庫を出ると味方の傭兵や整備兵が倉庫へ押しかける。
「マクラーレン、バラはないか?」
「宝石!俺は宝石だ!」
マクラーレンが「なんじゃあお前ら?!」というと彼らは一斉に「女!」と言う。
※FOX1・・・セミアクティブホーミングの空対空ミサイルを撃つ時の合図。セミアクティブホーミングでは、発射から敵機に命中するまでミサイルを誘導しなければならないので、誘導中の挙動に制約がある。
※ハイ・ヨー・ヨー・・・目標機を追う際に自機の速度が相手より速い場合に余った速度を上昇することで高度に変換し一旦速度を落とし、そこから降下することで再び速度を得ながら追随する空戦機動。
(Wikipediaより抜粋、一部改変)
Tips! No.15~エマ~
エマ=リッチー(Emma Richie)
TACネームは「ハニー」(Honey)。
1986/4/16生まれ。ムスタファ帝国出身。
顔を芸能人に例えるならば永野芽郁さん。
声は釘宮理恵さんに似ている。
髪型は赤毛ミディアムボブ。
148cm/46kg/Cカップ
まだ子供っぽさが残る女性パイロット。
辛い食べ物に弱い。
3つの正六角形のエンブレムで、趣味はお菓子作り。
搭乗機はMIR-2000-5で機体の番号は011。
Mirage-2000-5
武装
機銃・・・440発
ISM・・・76発
フレア・・・3×10回
特殊兵装
4連装空対空ミサイル・・・28発
誘導貫通爆弾・・・36発
長距離空対艦ミサイル・・・28発
クラスター爆弾・・・28発
長距離空対地ミサイル・・・28発
4連装空対地ミサイル・・・28発
カラーリング
全身森林迷彩。
モルジアナは司令官の部屋に入りサダトの前で気をつけの姿勢で立っている。
「王族だからといって特別扱いは・・・」
「必要ありません。私は、革命の鎮圧と王族の再興のためだけに正規軍から転属しましたから。」
サダトはため息をつく。
「わかった。着任を認めるが、
「失礼します。」
モルジアナはサダトに脱帽敬礼して司令官の部屋を出ようとする。
「アイシャ!・・・あの・・・就寝時は部屋の鍵を閉め忘れないように。」
「兵舎のドアには端から鍵なんてついていないでしょ、サダト司令?」
アイシャが部屋を出て兵舎に向かうとアリーが彼女のプロファイルを手に取る。
「アイシャ=マンスール(Aisha Mansour)。・・・またクセの強い奴が来ましたな・・・。」
「ああ、とんだじゃじゃ馬娘に育ったものだ。・・・私の姪でこの国の王女だよ。」
飛鳥は兵舎に入り男たちの行列を見るもそれを無視して自室へ向かう。
「やつはアスカ=イザヨイ。アール人で一児の母だ。腕は一番いいが先月墜とされちゃってよ・・・。」
ゴードンがアイシャの隣の部屋に入る飛鳥について説明する。
アイシャは苦笑いしながらたくさんのプレゼントを受け取り部屋へ入る。
「レディーに声をかける時はプレゼントの前にシャワーをあびましょう?」
アイシャは部屋の明かりをつけプレゼントをベッドに置くと「悪くないね」と呟きベッドに座る。
「ねぇ、教えて?敵の銃弾を受けるって、どんな気分?私、一度も墜とされたことないし、子どもを置いてわざわざ撃ち落とされに来たんじゃ意味ないわね。丘に降りたパイロットほど野暮な連中はいないわ。・・・」
男たちがシャワールームでシャワーを浴びているとアリーの声が聞こえてくる。
「本日2200(フタフタマルマル)時、各員ブリーフィングルームへ集合。以上だ。」
2200時になり味方の傭兵がブリーフィングルームへ集合する。
「明日の日の入りより当基地より北東へ300マイルすすんだ地点で正規軍による大規模な制圧作戦が行われる。我々の任務はその空域の制空権を確保しそれを維持することだ。」
味方の傭兵が少しずつ文句を言う。
「サダト・・・正規軍の被害を小さくするために先に制圧しろってか?」
アシュレイがサダトにそう質問すると「そういうことだ。」と答える。
「フン!そんなパシリみたいな真似、できるかよ!」
ゴードンは怒って任務を拒否する。
「残念ながら今回は全員参加だ。ただし、飛鳥は機体がないため、例外だ。そしてアイシャ、お前にも外れてもらう。作戦行動以前に航法を覚えてもらうのが先決だ。以上。解散。」
翌朝になり飛鳥とアイシャ以外は各々の機体に乗って離陸する。
アイシャは朝から懸垂している。
「地べたをISMで叩くなんて・・・こっちから願い下げよ!」
空襲警報が鳴るが飛鳥は機体がないため発進できない。
「アイシャ?!」
アイシャは
「タワーよりHQ69へ。アイシャがタキシングに入りました。」
サダトは「単機で出るつもりか。」と呟く。
「発進は許可していない!戻れ、アイシャ!」
管制塔はアイシャに戻るように促す。
「言ったはずよ!私は革命の鎮圧のためにここへ来たって。」
「こちらタワー。アイシャが離陸しました!」
「こちらサダト。飛鳥を呼び出せ!」
アイシャは巡航速度で敵との接触を試みる。
「敵は9機だ!一機ではどうにもならない。戻れ、アイシャ!」
アイシャは無視して4連装空対空ミサイルで左半分の
Tips! No.16~Su-24~
Su-24 Fencer
可変後退翼の攻撃機。
対地攻撃に優れるが対空攻撃力も侮れない。電子戦機仕様も存在する。
武装
機銃・・・500発
ISM・・・74発
フレア・・・3×10回
特殊兵装
長距離空対艦ミサイル・・・28発
マシンガンポッド・・・1500発
4連装空対地ミサイル・・・28発
ECMポッド・・・10秒×12回
無誘導爆弾・・・32発
サダトは飛鳥を呼び出し彼女は全身灰色の
「特殊兵装は間に合わなかった。機銃とISMのみだが、いけるか?」
飛鳥は左手の親指を立て「大丈夫よ。」と言う。
「じいさん!どいてくれ!」
整備兵がマクラーレンに降りるように促す。
「あぁもう、急かせるなぁ!」
マクラーレンは急いで降りる
「こちらサクリファイス17、十六夜飛鳥。アイシャの援護に向かう!」
F-5Eのキャノピーが閉まり離陸する。
アイシャは2機の
「吸い込んだ!?」
アイシャはF-16Cのスロットルを全開にするが加速しない。
「ブーストが上がらないわ!」
敵のMiG-29Aがアイシャの背後を取りISMを発射する。ISMがアイシャに命中する4秒前にF-5Eが機銃でISMを破壊する。
F-5Eはアイシャの左斜め上につきアイシャに「来るよ!」というと彼女は「言われなくても!」と返事する。
アイシャは残り2機のMiG-29Aに追い回され機銃掃射され3発被弾して高度が下がっていく。
飛鳥は2機のMiG-29Aのうち1機をISMで撃墜すると少しずつ黒鉛が出ているF-16Cを見て「アイシャ!そのまま基地へ着陸して!」と言う。
「こちらタワー。アイシャ、高度が低すぎる。機首を上げろ!」
アイシャはギアをおろして着陸態勢に入る。
「無理だ!機体を捨てて射出しろ!アイシャ!」
アイシャは管制塔の指示を無視して「下ろしてみせる!」と言う。
アイシャはタッチダウンに成功するが、機首部分のギアが壊れて鼻からスライディングする形で減速すると滑走路の外の砂地で停止する。
アイシャはキャノピーを開けてマスクとヘルメットを外すと空を見上げてF-5Eが最後のMiG-29AをISMで撃墜するところを見る。
「ISMを機銃で墜とせるパイロットもいるなんて・・・。」
「こちらHQ69.脅威の全滅を確認。」
HQ69が敵の反応が消えたことをレーダーで確認する。
「滑走路をふさぎませんでしたな・・・あの娘、なかなかやりますな・・・。」
アリーがサダトにアイシャのことを褒めるとサダトは司令室を出る。
F-5Eが着陸しマスクとヘルメットを外して機体から降りるとアイシャが飛鳥に話しかける。
「翼をもがれるなんて・・・最悪な気分・・・。」
「それでも、生きて帰った。命と四肢があればまた飛べるわ。」
「気になる人。」
アイシャが飛鳥にそっと近づく。
この匂い・・・娘と同じ・・・大人になった娘みたいな人ね。」
飛鳥はアイシャに向かってニコッと微笑むとアイシャは兵舎へ戻る。
それを遠くから見ていたマクラーレンは「今日はヤケ酒が売れるぞぉ・・・。倉庫からありったけ出しておくか。」と呟き倉庫へ戻る。
※エアインテイク=air-intake・・・空気取入口。ちなみジェット機のエアインテイクなどの人工構造物に鳥が入ったりぶつかったりすることで起こる事故の総称を「バードストライク」(Bird strike)という。
Tips! No.17~アイシャ~
アイシャ=マンスール (Aisha Monsour)
TACネームは「モルジアナ」(Morgiana)。
1982/1/13生まれ。ナセル王国出身、ナセル王国王女で次期国の女王
顔を芸能人に例えるならば西野七瀬さん。
声は西野七瀬さんに似ている。
髪型はネイビーブルーロングストレート。
163cm/49kg/Dカップ
男勝りな女性パイロット。
虫に弱い。
手枷足枷のエンブレムで、趣味は筋トレ。
搭乗機はF-16Cで機体の番号は016。
F-16C Fighting Falcon
武装
機銃・・・600発
ISM・・・72発
フレア・・・3×10回
特殊兵装
無誘導爆弾・・・28発
4連装空対地ミサイル・・・28発
4連装空対空ミサイル・・・28発
長距離空対地ミサイル・・・24発
ロケットランチャー・・・8発×18回
セミアクティブ空対空ミサイル・・・20発
高機動空対空ミサイル・・・20発
誘導貫通爆弾・・・28発
高積載空対空ミサイル・・・36発
空対空炸裂弾頭ミサイル・・・20発
カラーリング
背中を赤紫色。腹側を白色。垂直尾翼を黄色。
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