#6 19時間~Bailout~ 2004/09/12

 敵が本腰を入れ始めたのか第4世代ジェット戦闘機を本格的に導入し各戦場へ配備・運用している。政府軍も負けじと機体を調達しようとするが国の大半が革命に賛同し、政府支持派を差別する地域まで現れ始めているため資金調達が困難になった。飛鳥も古いものにオーバーホールや近代化改修を行った機体を使っているため敵の撃墜が難しくなった。

 飛鳥はこの日もF-20Aタイガーシャークに苦戦して1機も倒せずにエアフィールド69へ着陸する。

「飛鳥、また撃墜なしだって?これで3日連続だぞ。」

 友三は飛鳥のF-4EファントムⅡを撮りながらグリンチに質問する。

「敵が第4世代を戦線に送ったらしい。」

「敵さんも必死だな。」

 グリンチは何かを考えている様子でF-4Eを見ていた。

 飛鳥はF-4Eに燃料とISMを補充してもらっていると味方の傭兵がイヤミを言いにやって来る。

「トップエースも手ぶらのご帰還かい。」

「尻尾巻いて逃げてきたのかよ。」

「そんなにマクラーレン儲けさせてどうすんだよ?」

 3人は笑いながらその場を去る。

 グリンチが梯子で飛鳥のところへ行く。

「飛鳥、エンジンの調子はどうだ?」

「大丈夫。問題ないわ。」

 飛鳥はグリンチからタオルを受け取って汗を拭き畳んで彼にタオルを返す。

「相手はタイガーシャークとファルクラムだ。オーバーホールしなきゃならん機体であまり無茶するなよ。」

「わかっている。もう一回行ってくる。」

 グリンチは梯子から降りるとF-4Eから離れる。

「あいつは墜とされる。」

 グリンチはタキシングするF-4Eを見て友三に告げる

「おい、まだ飛んでないぞ!」

「音で分かる。」

 F-4Eはまた空へ飛び立つ。

 飛鳥はF-4Eで敵のMiG-29Aファルクラムを追い回し機銃を撃つも全く命中しない。

「こちらHQ69。敵の造園を捉えた。すぐに離脱せよ。」

 飛鳥はISMでロックオン、発射してMiG-29Aを1機撃墜すると離脱して敵の造園に対処する。

 敵のMiG-29AがF-4Eをしつこく追い回し機銃を発射する。飛鳥はなんとか旋回で回避したもののエンジンが停止しその間に敵がISMを発射すると飛鳥のF-4Eに命中し炎上する。

 飛鳥は急いでレバーを引いて座席ごと射出して脱出する。

 F-4Eは爆発したものの飛鳥は無事で座席が外れるとパラシュートが開くがそのまま砂嵐に突っ込んでしまう。砂の地面に着地すると飛鳥はパラシュートを切り離して近くの岩を盾にして砂嵐が通りすぎるのを待つ。

「飛鳥が撃墜された?」

 サダトは報告書を見ながらアリーにそう質問する。

「はい。援護に向かったゴードンがパラシュートを確認したそうです。しかし、砂嵐が通りすぎるまで当分レスキューチームは出せませんな。」

 アリーは心配そうにそう言う。

「何で飛鳥が墜とされたのに捜索に出ないんだ!」

 友三はアシュレイにそう質問する。

「俺やサダトだって捜したいのは山々だが砂嵐が来るから、今は待て。」

「その砂嵐で飛鳥がくたばったらどうするんだ!」

 アシュレイが答えられずにいるとグリンチがランドクルーザーを運転してマクラーレンの倉庫へ向かう。

「グリンチのやつ・・・飛鳥を捜しに行くんだ!お前やサダトとは大違いだ!」

 友三はマクラーレンの倉庫に向かいアシュレイはそれをみて舌打ちする。

 グリンチはランドクルーザーに水や食料をトランクルームに入れている。

「その代金、飛鳥の口座から引いておくよ。」

 マクラーレンが電卓で計算していると友三がやってくる。

「グリンチ!飛鳥を捜しに行くんだろ?俺も載せてくれ!」

「乗るのは構わんがこいつはタクシーじゃないぞ。」

 グリンチはトランクを閉めて運転席に座る。

「誰も飛鳥を捜しに行こうとしないんだ。」

 友三は助手席に座りそう言う。

「人の生死も飯の種だな。」

「そういうことだ。行こうぜ。」

 グリンチはエンジンをかけて広い砂漠へ向かう。

 夕方になり砂嵐が弱くなるがアシュレイは飛鳥が心配で食欲が少しなくなっていた。

 夜になり飛鳥は目を覚ますとマスクを外してコンパスと地図を頼りに基地のある北西へ向かう。

「19時間ね・・・早く基地へ向かわないと・・・」

 飛鳥はコンパスと地図をしまって歩き始める。

 翌朝になり砂嵐が通りすぎるとサダトはアシュレイとゴードンを飛鳥の捜索に行かせ他の傭兵は基地で待機させる。

 正午ごろになり飛鳥は脱水症状に襲われ始め、1時間ほど歩くと意識を失いうつぶせで倒れる。


 ※ランドクルーザー・・・トヨタのSUV(Sports Utility Vehicle)ここでは1998年式の70系を指す。


 Tips! No.12~革命の経緯~


 飛鳥はナセル王国政府軍の傭兵として革命軍と戦っている。

 今回はその革命について説明する。


 ナセル王国で起きた革命は民主化革命で「ナセル王国王族の全員公開銃殺刑」と

「軍隊主導による国内の復興、その後国民主権による民主政治」を主張している。

 革命支持者は「王族が生きている限り国民に自由はない」とか

「王族が国外亡命しても彼らを地の果てまで追い抹殺する必要がある」

 と本気で言っている。


 経緯

 2002/01/25 知識人や若者を中心に民主化を訴えるデモ行進が始まるが、即日警察に鎮圧される。逮捕者多数。うち主犯20名に国家反逆罪として死刑または無期懲役。

 2002/04/17 デモがある度に警察に鎮圧されることを見るに耐えかねたナセル王国軍の将校を含む若者を中心に王族による政治の腐敗を理由に民主化革命が起こる。

 2002/04/18 ナセル王国政府は革命の鎮圧と国内緊急事態法の施行を決定。満20~29歳の男女に緊急召集令状を配布。兵士として育て上げる。

 2002年下半期 政府軍と革命軍の兵力の比率が逆転し始める。

 2002年12月 政府軍は兵力補充のため、外人傭兵部隊の募集を決定。

 2003年7月 革命軍は革命達成後の指針を決定。

 2003/12/28 十六夜飛鳥が有村燐の策略によりナセル王国政府軍の外人傭兵部隊に入隊させられる。


 友三はグリンチが運転するランドクルーザーから景色を見ていると何か光ったのに気づく。

「止まってくれー!」

 グリンチが急ブレーキをかけると友三は急いで光った方向へ走る。そこにはヘルメットを被ったまま意識を失っている飛鳥がいた。

「飛鳥だ!意識がない!」

 グリンチは車を飛鳥の近くに停める。

「田村!飛鳥をリアシートへ運ぶぞ!」

 グリンチは友三と共に飛鳥をランドクルーザーの後部座席に座らせビーコンのスイッチを入れると友三にエアフィールド69へ連絡させる。

「こちらエアフィールド69のカメラマン、田村友三だ!飛鳥を発見した!繰り返す、飛鳥を発見した!ただし、意識不明。救助ヘリを要請する!」

「こちらHQ69、了解した。救助ヘリを向かわせる。座標はビーコンで確認した。ヘリが来るまでその場で待機してくれ。HQ69アウト。」

 グリンチは飛鳥のフライトスーツの上半身を脱がせタンクトップ姿にして飛鳥の身体を冷やすと彼女の意識が回復し始める。

「・・・れ・・・・・・な・・・み・・・みず・・・・・・」

「れな?とにかく、水だな?ゆっくり飲むんだ。」

 グリンチは水をコップに注ぎ飛鳥に少しずつ飲ませる。飛鳥は三杯目の水を飲み終えるとゆっくり目を開く。

「美味しい・・・水がこんなに美味しいなんて・・・」

「水の本当の美味さを知ったなら、お前は砂漠で生きていける。」

「生きていける・・・生きている・・・私は、生きている・・・。」

 飛鳥はフライトスーツを着なおしてグリンチと友三を見る。

「2人が天使に見える・・・。」

 すると上空でアシュレイのF/A-18CホーネットとゴードンのF-5EタイガーⅡが飛んでくる。

「こちらアシュレイ。飛鳥はどうした?」

「こちらグリンチ。田村が発見した。救助ヘリも向かっている。」

 10分後にUH-60ブラックホークがやってきて飛鳥を載せてエアフィールド69へ向かう。


 翌日の昼になりグリンチと友三が戻ってくる。

「田村、アリムラという女から電話だ。」

 国際電話のオペレーターが友三に話しかける。

「わかった今行く。」

 友三は電話に出る。

「もしもし、何の用だ?電話は傍聴されているんだぞ!」

「そう怒らないでよ。飛鳥が撃墜されたと聞いたけど、彼女は死んだ?」

「死にかけたところを助けに行ったのさ。」

「そっか。君は飛鳥の死に顔を撮るために派遣したのに助けに行った。」

「君はクビよ。」

「そうか・・・俺も断ろうと思っていたんだ。」

「わめくと思ったけど、お金はいらないの?」

「金は惜しいけどな。」

「欲がないカメラマンね。まぁいいわ。」

「有村は電話を切る。傍聴していたオペレーターは事前にマクラーレンから買っていた情報と傍聴のメモを照合させると内容が一致した。」

「何!?田村は飛鳥の死に顔を撮りにここまで来ただと!?」

 アシュレイはオペレーターの両肩を握りながら驚く。

「ホ、ホントなんだ!さっきの電話で情報を確かめていたんだ。」

 オペレーターは怯えている。

「確かめていた?何を?」

「マクラーレンから買った情報の信憑性だ。情報はホントだったんだ。」

「どんな情報だ?」

「田村のスポンサーは通信社でも革命軍でもない。・・・国連軍の女だ。」

「国連軍?名前は分かるか?」

 サダトが割って入る

「アリムラ・・・アリムラ=リンという女です・・・。司令、ご存知なんですか?」

「ああ、飛鳥のかつての友で今は最大の敵とみている。」

「田村の奴、ただじゃおかねぇぞ!」

 アシュレイは怒り始めて友三を殴りに行こうとする。

「アシュレイ、落ち着け。奴を追放する。」

 サダトは友三を国外追放する文書を作成する。

 夜になりブリーフィングルームへ全ての兵士を集結させ友三を追放するということとその理由を知らせると飛鳥はショックでめまいが起きる。

 味方の傭兵は友三の撮影機材を彼の前で燃やす。

「やめろ!やめてくれっ!」

 友三の機材を燃やした後で小型輸送機で彼を首都「スーフィー」まで送りこの騒動は終結した。しかし、革命軍掃討はまだまだ続く。


 Tips! No.13~田村友三~


 田村友三(Tomozo Tamura)

 1970/6/14生まれ。アール連邦出身。

 顔を芸能人に例えるならばジミー大西さん。

 声は野島健児さんに似ている。

 髪型は茶髪マッシュルームヘッド。

 176cm/66kg。

 執念深い人。

 民間人。

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