#5 希望という名の積荷~Jewelry~ 2004/07/16

 飛鳥とアシュレイ、F-4EファントムⅡF/A-18Cホーネットはサダトの命令で深夜に東部戦線の哨戒飛行をしているとHQ69のレーダーサイトが東部戦線の方向で敵の機影を捉えた。ちなみに2人の武装は機銃とISMのみである。

「レーダーサイトからの報告は、間違いないな?」

 サダトはパソコンのキーボードを打つ手を止めてアリーに話しかける。

「確かです。C-130ハーキュリーズとそれを護衛するMIRミラージュ-2000-5、6機を捕捉しました。」

 サダトはパソコンでレーダーサイトに伝令を打ちながら少し考える。

「あの空域には、飛鳥とアシュレイがいる。二人に任せておけば、間違いないのだが、しかし、奇妙な編隊だな。」

 アリーはC-130の積荷が何か予想してみる。

「何か重要なものを運搬しているのでしょうか。」

 HQ69は飛鳥とアシュレイに通信を試みる。

「こちらHQ69。飛鳥、アシュレイ、そちらの空域に輸送機と戦闘機6機がいる。墜としてくれ。」

 飛鳥とアシュレイはレーダーをアクティブにして機影を確認する。

「こちら飛鳥。10時方向、機影確認。」

「こちらアシュレイ。飛鳥よりたくさん敵を墜としてやる。できなかったら朝食奢る。」

 飛鳥はアシュレイに手で合図を送り、敵のいる方へ旋回する。アシュレイは彼女について行く。2人は息を合わせるように護衛のMIR-2000-5、2機をISMでロックオン、発射して撃墜する。残りのMIR-2000-5は散開して2人を狙う。アシュレイは単独で飛んでいるMIR-2000-5を機銃で撃ち落とそうとする。

「アシュレイ、奢ってもらうよ。」

 2機のMIR-2000-5が飛鳥にISMを発射する。

 飛鳥は、ミサイルアラートが鳴っている中、アシュレイの獲物をISMで横取りする。

「お互い生きていればね。」

 飛鳥は急旋回でISMを回避する。2機のMIR-2000-5がしつこく狙うのをアシュレイはISMを1発ずつ発射して敵を撃墜する。

 飛鳥はインメルマンターンで残り2機のMIR-2000-5を狙う。1機はISMでもう1機は機銃+ヘッドオンで仕留める。

 C-130の側面に装備されているM60Cが飛鳥に向かって射撃を始める。飛鳥も機銃で応戦してC-130の右主翼に9発弾丸を当てる。C-130の右エンジン2つが火を噴きながらM60Cで飛鳥に6発当てる。飛鳥のF-4Eは被弾してエンジンが停止する。

「Mayday! Mayday! エンジン停止!」

 飛鳥はすぐにエンジンの再始動を試みる。

 飛鳥はエンジンに関するスイッチを全て作動させる。高度1000フィートでスロットルレバーを全開にするとエンジンが再始動して操縦桿を手前に引いて高度を上げる。

「飛鳥!大丈夫か?」

 飛鳥は息切れをしながら「ギリギリで助かった」と言う。

「輸送機の墜落は確認できなかったぜ。」

 飛鳥はマスクを外して左手で汗を拭う。

「そっか。アシュレイ、状況報告お願い。」

「了解。こちらサクリファイス19(nineteen)、アシュレイ=ダイソン。敵戦闘機全機撃墜。ただし、輸送機も被弾したが墜落は確認できない。以上。」

 飛鳥は操縦桿を見つめていると先ほどの出来事がトラウマになりフラッシュバックで甦る。

「飛鳥!」

 飛鳥はアシュレイの声で我に返る。

「アシュレイ、助けてもらった方が朝食を奢る約束だっけ?」

「え・・・あ・・・お、おう、サンキュー。」

「こちら飛鳥、帰投する。」

 2人は基地へ戻りそれぞれの部屋で朝まで眠る。

 昼になり1機のF-5EタイガーⅡが1機基地へ戻ってくる。

「暑い中、ご苦労なことで。」

 マクラーレンはパラソルの下で空を見上げている。

「プロキシーのタイガーⅡだな。」

 グリンチも空を見上げる。

陽炎かげろうなのによく見えるな。」

「見えるんじゃない。音で分かるのさ。彼の燃料ポンプは純正じゃあない。お前さんから買ったパチモンだからな。時々咳き込む。」

 グリンチは長いこと整備兵をやっているので経験論のようにマクラーレンに話しかける。

「あれは敵さんの残骸から拾ったものだ。咳き込みもするさ。」

 F-5Eが着陸して給油してもらう。

「燃料と増槽を満タンにしてくれ。武装は機銃とISMだけでいい。」

 プロキシーは何か焦っている様子だった。

「任務以外の出撃は自費だぞ。プロキシー。」

 整備兵の一人が給油しながらプロキシーに伝える。

「構わないから、できるだけ急いでくれ。」

 ほかの整備兵も武装を補充するために車でF-5Eのところへ向かう。

「プロキシーはもう一回飛ぶんだとよ。」

「ご苦労なことだ。」

 マクラーレンは少しにやけ面になり「金の匂いがするなぁ。」と言いプロキシーのところへ向かう。


 To be continued...


 ※M60C・・・M60軽機関銃のバリエーションの一つ。航空機搭載型でリモートコントロール(遠隔操作)式。7.62x51mm NATO弾を使用。


 Tips! No.9~MIR-2000-5~

 Mirage-2000-5

 汎用性の高いデルタ(三角)翼の戦闘機。デルタ翼機の中では安価かつ高性能であるため、たくさん生産されている。

 武装

 機銃・・・440発

 ISM・・・76発

 フレア・・・3×10回


 特殊兵装

 4連装空対空ミサイル・・・28発

 誘導貫通爆弾・・・36発

 長距離空対艦ミサイル・・・28発

 クラスター爆弾・・・28発

 長距離空対地ミサイル・・・28発

 4連装空対地ミサイル・・・28発


「よいしょっと」

 マクラーレンは梯子でプロキシーのF-5EタイガーⅡによじ登る。

「タイガーⅡの純正パーツは高くていかんわい。」

 マクラーレンは手をうちわのように扇ぎながら呆れた顔で言う。

「上がってこいとは誰も言ってないぜ。じいさん。」

「上がってくるなとも言われてないぞ。なあ、燃料代1割持つから、教えろよ。」

 プロキシーはため息をついて「何のことだ」と言う。

「とぼけるな!クソがつく程暑い中、自費で飛ぶつもりなんだろ?何かワケがあるだろ?」

「ただ空が飛びたいだけなのさ。」

「そうかい。ならお前さんは酒もタバコも5割増しだ。」

 プロキシーは絶望した顔で「勘弁してくれよぉ。」と言う。

「仕方ない。行くとするかな。」

 マクラーレンは梯子で降りようとする。

「燃料代、2割持ってくれるなら、話してもいいんだぜ。」

「モノによってはな。話してみな。」

 プロキシーは小声で「クソっ。金の亡者め。」と呟く。

「仕方ねーな。誰にも言うなよ。さっきの出撃でゴードン(Gordon)が墜とされてベイルアウトしたから機体を探していたんだ。敵の地上部隊が急ぐように走っているのが見えた。ところが、こっちは弾切れ。SAM撃たれるのも嫌だから離脱しようとしたんだ。すると敵の無線が聞こえてきたんだ。」

「探せ。近くに・・・るはずだ。・・・そうきの・・・ールド、・・・ヤモンドが。」

「我が軍の損失。そこで思い出した。深夜に飛鳥が墜とした輸送機。それにはゴールドとダイヤモンド。何かの暗号かもしれない。」

「そうか。ゴードンは?」

 マクラーレンは納得した様子である。

「あいつはしぶとい。あと1日放置したって死にはしないさ。しぶといひげ面と宝石。どっちを取る?」

 マクラーレンは当然のことのように「宝石。」と答える。

「プロキシー。補給終わったぞ。」

 整備兵がプロキシーに補給が終わったことを知らせる。

「よし、出るぞ!」

 マクラーレンはため息をついて「今のじゃ2割は持てんな。」と言う。

「話したんだ。2割持てよ。」

「まけても1割5分かな。」

 マクラーレンは梯子で降りる。

「何かいいことでもあったのか?」

 グリンチはマクラーレンに訊ねてみる。

「何、儲け話を聞くと顔がにやけるのさ。」

 マクラーレンの口の軽さで続々と噂としてプロキシーの話が広まる。

 飛鳥とアシュレイを除く味方の傭兵たちが「自分を先に飛ばせてくれ!」と言わんばかりに管制塔に文句を言う。

「よろしいのですか?勝手に行かせて。このままだとパイロットは飛鳥とアシュレイだけになってしまいます。」

「アリー。彼らは俺の命令を素直に聞いてくれる連中じゃないだろ。それに君は興味ないのかい?昨夜、戦闘機6機で護衛していた輸送機のことだが。連中は俺の命令ではあそこまで熱心に調べてくれないだろうからね。」

 屋外の駐機場には飛鳥のF-4EファントムⅡとアシュレイのF/A-18Cホーネットを残して残りは空へ飛んでいった。友三はその風景を写真に収める。

「遅いぞ!カメラマン!」

 アシュレイは写真を撮っている友三を呼ぶ。

「飛鳥!アシュレイ!お前ら行かないのか?」

「俺たちは宝石に興味ないからね。」

「私、今日はゆっくり過ごしたいからね。」

 2人は自分たちが行かない理由を簡単に説明する。

「あなたこそ、行くべきじゃないの?取材で来ているならスクープになるけどね。」

「そ、そうだな。でも俺が撮りたいのはそういうものじゃないからな。」

 3人が話していると車でマクラーレンとグリンチがやって来る。

「飛鳥!アシュレイ!今夜の作戦は中止だ。」

 グリンチは2人にそう言うと飛鳥は「わかった。」と答える。

「ちょうどよかった。マクラーレンじいさん。国際電話、まだダメかな?」

 友三はマクラーレンに話しかける。友三は世界中を飛び回るため携帯電話を持っていない。

「話はつけてある。オペレーターにお金を握らせれば大丈夫だ。」

「そうか、ありがとよ!ちょっと通信社と電話してくる。じゃあな!」

 友三は電話がある所へ向かう。


 To be continued...


 Tips! No.10~Other Skiesの兵器事情~


 Other Skiesの世界では、拳銃からMOAB(大規模爆風爆弾兵器)まで兵器は世界共通であり様々な民間企業に生産を委託している。


「ああ、分かってる。こっちは砂まみれ汗まみれだ。ひじ掛けの椅子でパソコンしているあんたには分からないだろうけどな。・・・金なんてとっくに切れた。色々と仕掛けたいんだ。頼むよ。・・・おいおいそんな風に言わなくてもいいだろ。俺以外の誰に撮れるっていうんだ?・・・そうそう。その辺を一つ頼むよ。じゃあまた。」

 友三は国際電話を切り自室でカメラのメンテナンスをする。

「最初は注文通りの写真を撮ってこんなところをおさらばするつもりだった。なかなか難しいな、あんたの依頼は。その上にモデルとしても面白いときた。調子狂うなぁ。」

 飛鳥はマクラーレンの倉庫で特殊兵装を新しく買ってお会計をしていた。

「ISMと機銃満タン。(0Cr)そしてセミアクティブ空対空ミサイル12発(1発60Cr×12発=720Cr)と4連装空対空ミサイル16発(1発80Cr×16発=1280Cr)。飛鳥はいいお得意さんだから1割まけて1800Crだな。明日の朝に届く。」

 マクラーレンは電卓をピコピコ叩いて1900という数字を見せる。

「ちょっと、高くない?」

「まあまあ落ち着け。田村というカメラマンのことだが・・・スポンサーは通信社じゃないらしい。興味あるだろ?」

 飛鳥は電卓の「AC」をおして1800と打ちマクラーレンに返す。

「おいおい。折角の忠告を・・・」

 マクラーレンは呆れた顔になると友三がやって来る・

「おい!飛鳥!俺を載せて飛んでくれないか?あんたの見ている空を撮りたいんだ!」

 飛鳥は友三をF-4EファントムⅡの後部座席に乗せアシュレイと彼のF/A-18Cホーネットと一緒に空を飛ぶ。

「飛鳥のファントムによく乗せてもらえたな。」

「そうね。今日は地上でゆっくりしたかったけど、カメラマンが乗せてくれってしつこく言うからね。友三。もしベイルアウトしても命の保証はないわ。」

「そうだな。命の保証と特殊兵装はないよな。」

「こちらアシュレイ。安く値切ったんだろ?」

「あんたの燃料代も持ったんだ。値切った意味ないよ。」

「こちら飛鳥。私にとってはとんだ誕生日プレゼントよ。」

「こちらアシュレイ。飛鳥は今日で26だからな。」

 飛鳥は左斜め宙返りを始める。友三は小学生の男の子がジェットコースターに乗った時のように苦しむ。

「ところであなた、何で私を追い回すの?」

「同じアール人どうしで固いこと・・・うわあっ!」

 今度は右ロールしながら降下そしてハイGターンで水平に戻す。

「素人相手に無茶しやがる。あいつゲロ吐くぞ。こちらアシュレイ。HQ69が敵のF-5EタイガーⅡを3機捉えた!こっちに向かっている!」

「こちら飛鳥、了解。友三。私の空、見せてあげる。」

 飛鳥は3機のF-5Eに自分の存在をきづかせようと突っ込む。3機がF-4Eを追いかけそのうち1機がISMを発射する。

「飛鳥!ミサイルだ!ミサイル!」

 飛鳥はフレアを使わずにただ空を飛んでいる。そのままF-5Eの後ろを取りその敵機を追い越すとISMはF-5Eに命中する。

 残りの2機は飛鳥の前と後ろをとり機銃を発射する。飛鳥はそれをロールで避けて2機のF-5Eを機銃で撃ち合わせてそして正面衝突させる。

「あんたの空が少し見えてきたぜ。」

 友三は鏡越しで飛鳥の顔を写真に収める。

「こちら飛鳥。アシュレイ、帰るよ。」

 F-4EとF/A-18Cが基地へ戻り夜になると味方が続々と帰ってくる。

「マックス(Max)機、帰還しました。」

 整備兵の一人がサダトに報告する。

「まだ帰投しないバカが4人いるとは・・・未帰還機4と記録しておけ。」

「アイアイサー。」

 整備兵はポケベルでHQ69に報告する。

「やれやれ。みんな機体に無理させやがって。俺たち整備兵は徹夜だな。」

 グリンチはため息をつく。

「また部品が売れるな。」

「おーい!ゴードンが帰って来たぞ!」

「味方のUH-60ブラックホークだ!」

「ひげ面生きていたのか!」

 UH-60がヘリパッドに着陸すると小太りなおじさんが一人降りてくる。

「地上の悪魔は俺みたいなおじさんは要らんとさ。」

 ゴードンが大きなくしゃみをするとみんな面白くて笑う。

「死に損なったな、ゴードン。」

「しかし、堕ちた挙句にサバイバルキットを失くしてよ、輸送機の残骸がなかったら、くたばっていたぜ。」

 ゴードンは鼻をこする。

「輸送機!?金とダイヤモンドは!」

「敵の大事な金とダイヤモンドは!」

 味方がゴードンを質問攻めにする。

「金?ダイヤ?そんなもんねーよ。将校の老夫婦が死んでいただけだ。」

「やはり、ジュエル(Jewel)夫妻が積荷か。」

 サダトが割って入る。

「そうだサダト。ブリーフケースにそう書いてあった。あんたの知り合いか?」

「革命軍の最高幹部だ。ゴールドが夫でダイヤが妻だ。彼らが死んだとなると戦いが大きく変わる。あ!書類は。ブリーフケースはどうした?」

「ああ、ヘリの中にあるぜ。あと、ボイスレコーダー、フライトレコーダーもな。」

 ゴードンはヘリの中から重要なものだと思い持ち帰っていてそれをサダトに渡す。

「ゴードン。よくやった。とりあえず風邪を治すといい。これで、革命軍を鎮圧できる!」

「田村さん。大丈夫かい?」

 アシュレイは少し笑いながら友三に問いかける。

「ああ。戦争が終わったら飛鳥はどうする?アール連邦に帰るのかい?」

 飛鳥は無視する。

「俺もまだまだだな。葬式の時には困らないほど撮れたが、あんたの欲しい一枚はまだだぜ。有村さんよ。・・・」


 ※Cr=クレジット・・・Other Skiesの世界共通の通貨単位


 Tips No.11~ゴードン~


 ゴードン=グレー(Gordon Grey)

 TACネームは「バックショット」(Buckshot)。

 1970/02/27生まれ。エスカルゴ共和国出身。

 顔を芸能人に例えるならば佐藤二朗さん。

 声は高木渉さん(子供バージョン)に似ている。

 髪型は黒髪坊主。

 150cm/84kg/。

 頭が悪い天然で、指示通りのことしかできない人。

 対空ミサイルに弱い。

 散弾銃(SPAS-12)のエンブレムで、趣味は戦車狩り。対地攻撃が得意。

 搭乗機はF-5Eで機体の番号は088。


 F-5E TigerⅡ

 ゴードンのほかにもみんなが最初に使う戦闘機の一つ。


 機銃:560発

 ISM:54発

 フレア:3個x10回


 特殊兵装

 無誘導爆弾:16発

 ロケットランチャー:8発×10回

 高機動空対空ミサイル:12発

 4連装空対地ミサイル:16発

 高積載空対空ミサイル:30発


 カラーリング

 全身深緑色

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