#4 天使と悪魔 ~Bianca~ 2004/05/20
エアフィールド69には「空中の天使」と「地上の悪魔」がいる。天使の名は飛鳥。悪魔の名はビアンカ(Bianca)。2人が共に飛ぶとき、戦場はどうなるのだろうか。
ビアンカは
高度5000フィートに達すると急降下を始めるとFLAK GUNが射撃を始める。
「対空砲がこんなにあるなんて聞いてないぞ!」
FLAK GUNによって1機墜とされたが残りの4機で無誘導爆弾を投下する。爆弾は目標である建物や車両に命中する。
「ビアンカ!俺は生き残った!」
「地上の悪魔と飛んで、私生き残ってる!」
味方の傭兵がたいそう嬉しそうに喋っていると、SAMが発射される。
「SAM!散開しなさい!」
4機はSAMを回避しようとするが、F-5Eは全て墜とされ生き残ったのはビアンカと左主翼に穴が空いたF-4Gだけだった。
「また、パイロットが闇へ墜ちていく。」
(ビアンカは南へ旋回してエアフィールドへ戻る。)
飛鳥は早朝出撃のため、眠れずにいて基地の中を散歩しているとオープントップのハンヴィーに乗っているグリンチ(Grinch)という整備兵を見かけて彼のところへ歩いていく。
「お、飛鳥、眠れないのか。」
グリンチは飛鳥の気配を感じて空を見上げたまま彼女に話しかける。
「ええ。今日は娘の誕生日なの。」
飛鳥も空を見上げるが、彼女は涙を浮かべていた。
「娘か・・・いくつになるんだ?」
グリンチは飛鳥の方を向いて話すと飛鳥は指で4を表す。
「そうか・・・娘も母さんに会いたいだろうな。」
グリンチは再び空を見上げる。
「飛鳥!」
アシュレイは飛鳥の真後ろで彼女を呼ぶ。
「待っていろって言っただろ。」
飛鳥は後ろを振り向かずに「うん。」と返事する。
「頼むぜ。・・・・・・おはよう、グリンチ。」
アシュレイはため息をついてからグリンチに挨拶する。
「おはよう。」
エアフィールド上空で着陸態勢に入ったビアンカのF-4Gがやってくる。
「地上の悪魔のご帰還か。・・・あいつ、左主翼に穴が空いてるぞ。」
F-4Gが着陸に成功するとグリンチはオープントップのハンヴィーのエンジンをかけて駐機場へ向かう。
夜が明けて飛鳥とアシュレイ、
飛鳥とアシュレイは時々基地への帰投を繰り返しながら基地周辺の革命軍を掃討している。
飛鳥はF-4Eで敵のF-5Eを追いかけ回してISMでロックオン、機銃を発射してF-5Eを仕留める。一方、アシュレイはF/A-18Cで敵の
夕方になり帰投の最中にアシュレイは飛鳥に話しかける。
「もうクタクタだ。シャワーあびてベッドにバタンキューしたいな。」
「明日からの早朝出撃、無理に付き合わなくてもいいよ。」
アシュレイは口笛を吹く。
「お前には付き合い切れんよ。とは言ってもついて行っちゃうけどな。」
飛鳥は右旋回して基地へ戻る。基地ではビアンカ、マクラーレン、グリンチが彼女のF-4Gについて話している。
「ビアンカ、新しいのにしたらどうだい?こいつはファントムⅡワイルドウィーゼルにしたって純正パーツの入手は難しいんだ。整備料だけでナイトホークが買えるぞ。あんたにはずいぶん儲けさせてもらってるから、安くしとくよ。」
ビアンカはマクラーレンの話を聴きながら指輪を見ていた。
「この機体がいい。金は倍払うわ。整備してちょうだい。」
「わかった。マクラーレン、パーツを頼む。」
「ああ。」
夜になり傭兵たちは夕食を摂っていた。食事は1食あたり、10センチクレジットで献立が決まっている。
ハイジという料理人でグリンチの妻はアシュレイにトールシ山盛りで盛りつける。
「えーーーーっ。野菜、嫌いなんだよなぁ。」
アシュレイは嫌そうな顔で言う。
「パイロットには好き嫌いなんてないの!」
「それは偏見だぜ!」
「野菜が嫌いなのも偏見だね。次!」
ハイジはアシュレイを論破すると友三にトールシを少なめに盛り付ける。
「少ないぞ!」
「あんたはパイロットじゃない!」
この日の献立はイラン料理でナン、トールシ、コフテ、粉ふきじゃがいも、ニンジンとアスパラガスを蒸したもの。アーシュ、冷水
「全く・・・食わねぇと、強くなれないぞ。」
「わかってる。」
友三たちのテーブルの隣のテーブルにビアンカがやってきて座って食べ始める。
友三はマクラーレンから耳にした噂をアシュレイに訊ねる。
「おい、なんで地上の悪魔なんて呼ばれてるんだ?」
「ビアンカは対地攻撃の天才なんだ。どんな激戦地でも必ず1人で還ってくるからやっかみでそう言われている。」
友三とアシュレイが小声で話している時にビアンカの向かい側に飛鳥が座りコップをもって水を飲む。
「ビアンカ、次もあの機銃のないファントムで飛ぶの?」
飛鳥は悲しそうな目でビアンカを見る。F-4EとF-4Gの違いは機銃の有無である。
「古くても慣れた機体の方がいいのよ。」
ビアンカはナイフでコフテを一口大に切りその一つをフォークで刺す。
「悪魔も墜ちれば、ただの人よ。」
ビアンカは即答で「私は違うわ。」と言いコフテを口へ運ぶ。
友三は飛鳥とビアンカの2ショットを撮っている。
「アシュレイ、野菜、手つかずだぞ。」
アシュレイは頬を赤くする。就寝時間になると友三は兵舎の廊下に出てカメラのシャッターを開き続けていると、基地守備兵がやってくる。
「誰だ!」
守備兵は友三に懐中電灯を照らす。
「まぶしいぜぇ!」
「なんだ、あんたか、何してる。」
「寝静まった兵舎を撮りたくてね。けど、2人寝てくれないんだ。」
明かりが点いている部屋が2つ向かい合っている。
「それは無理だ。ビアンカと飛鳥の部屋だからな。」
「どいうこと?」
「悪魔は寝ないのさ。天使は娘に手紙を書いている。」
ビアンカがうなされ始める。
「あんたも早く寝ろよ。」
守備兵はその場を素早く去る。
「ビアンカ!」
「助けてーーー!」
「Mayday!Mayday!」
「私死にたくないよぉーー!」
ビアンカの脳裏には彼女より先に死んでいった女性パイロットたちの叫び声や断末魔、ミサイルアラートが鳴り響く。夢の中でビアンカは最愛の部下の名前を呼ぶ。
「アンナ(Anna)!諦めないで!一緒に帰るの!アンナーっ!アンナーーーーーっ!」
ビアンカが目を覚まして起き上がると、朝になっていて飛鳥のF-4Eが離陸しようとしていた。
「アンナ・・・」
ビアンカは指輪を見つめる。
「もうすぐ・・・もうすぐ会える。」
ビアンカはまるで自分の死が近いと悟ったように言う。
To be continued...
※ナイトホーク=F-117A・・・ステルス攻撃機、隠密行動に優れているが速く飛べない。
※ナン・・・インドなどで食べられているパンの一種。
※トールシ・・・ピクルスに近い酢漬けの野菜
※コフテ=キョフテ・・・ミートボールやミートローフに近い肉料理
※アーシュ・・・イランの伝統料理で香味野菜と豆のスープ
Tips No.6~F-5E タイガーⅡ~
F-5E TigerⅡ
Other Sikesの世界ではMiG-21bisの次に多く生産された戦闘機。
武装
機銃:560発
ISM:54発
フレア:3個x10回
特殊兵装
無誘導爆弾:16発
ロケットランチャー:8×10回
ナパーム爆弾:12発
高機動空対空ミサイル:12発
4連装空対地ミサイル:16発
エアフィールド69の司令部は昨夜攻撃に行った部隊との無線記録とフライトデータを再生する。
「何だあれは?!」
その音声の次の瞬間、攻撃部隊の低解像度カメラには上空で何かが光ったところが映って映像が途切れる。
「どうだ!革命軍の力を思い知ったか!」
ここで無線も途切れる。
「以上です。」
HQ69はデータを巻き戻す。副司令官のアリー(Ali)は何かが光ったシーンでデータを一時停止させる。
「この通信は目標の12.5マイル手前です。」
「3機同時に撃墜。あの光は何だろう?そしてあそこには何があるのだろう?」
夜になり飛鳥が帰ってきてしばらくすると、ブリーフィングが始まる。
「今回の作戦目標は南部戦線、ここから南東へ240マイル進んだところにある第16補給基地だ。」
味方は高を括っていて「楽勝だ。」なんて言い始める。
「そう思って昨夜コロン(Colon、:)たちを攻撃に行かせたが、12.5マイル北西の地点で全機撃墜された。その時の映像がある。」
サダトはコンピュータを操作して映像を流す。
「以上のようにいかなる防空システムがあるかわからない。が、この基地を叩けば、敵の北部、西部戦線の補給をストップさせることができる。だから何としても攻略したい。例外的措置になるが、報酬は30万クレジットを生還した数だけ山分けする。希望者は左手を挙げよ。」
「固定ターゲットに30万クレジット!?」
「乗った!」
味方の傭兵が次々に左手を挙げるが、ビアンカが左手を挙げると落胆するように挙げた手を下ろす。
飛鳥とアシュレイも左手を挙げる。
「他にはいないか?」
味方の傭兵3名が左手を挙げる。
「よろしい。君たち6名に任せよう。」
今回の編成は、
飛鳥の
アシュレイの
そして、ビアンカの
「同じファントムで飛ぶのは久しぶりね。けど、みんな私より先に死んでいく。」
ビアンカは指輪を見ている。
「死んでいくんじゃない。生きたくても、殺されたのよ。」
飛鳥はビアンカの指輪を見て自分の意見を述べる。
アシュレイがやってきて「行くぞ!」と言いF/A-18Cに乗る。
To be continued...
Tips No.7~作者からのコメント~
Other Skiesをご愛読いただき、誠にありがとうございます。
Other Skiesの裏設定などを知りたい方、どしどしコメントお願いします!
これからも引き続き、よろしくお願いします。
3機の
「敵の防衛圏内に侵入。」
「ターゲット視認!30万クレジットは俺のものだ!」
「いや、俺のものだ!」
「いやいや、俺のものだぜ!」
「お化けとスズメバチを置いて先に行くぜ!」
味方のF-5Eが加速し始める。ビアンカが「隊列を崩さないで!」と怒鳴る。
味方は「お先ーーー!」と言ってアフターバーナー全開で目標に接近する。飛鳥、アシュレイ、ビアンカは巡航速度のまま飛んでいる。
「こちら飛鳥、この先はコロンたちの撃墜ポイントよ。警戒して。」
「こちらアシュレイ、了解した。」
敵の基地は空襲警報を鳴らす。
「我々の防空システムの餌食になりに来たとは、懲りない奴らだ。電気槍を放て!」
「電圧上昇中。80%で安定。All systems green.電気槍、準備完了。」
「墜ちろ!傭兵ども!」
敵の基地司令がボタンを押すと、対空機銃くらいのサイズの砲台から極超音速で弾丸が発射され弾丸は3機のF-5Eの真上で炸裂してEMPとなる。電気系統がイカれたため、F-5Eたちはコントロールを失い墜落する。
アシュレイはインメルマンターンで回避するが、飛鳥とビアンカはそのまま突っ込んで爆撃コースに入る。
「おい!飛鳥!」
敵の基地司令は「お前らざまぁ、マジざまぁ!」というように墜ちていったF-5Eを罵る。
「どうだ!政府軍の豚どもめ!」
「2機通過!別の1機は友軍の撃墜に向かいました!」
「何?!」
飛鳥とビアンカは激しい対空砲火を浴びながらナパーム爆弾を投下するタイミングを見計らっているとビアンカのF-4Gが6発ほど被弾する。
「ビアンカ!大丈夫?」
「大丈夫よ。投下して!」
飛鳥とビアンカはナパーム爆弾を16発ずつ全部投下すると、敵の基地はわんさか大炎上する。
2機が方位320(ほぼ北西)に合わせて機体を水平にしていると、敵のF-16Cが4機やってくる。
「アシュレイね・・・ありがとう。」
アシュレイは気にするなと言うように「俺はこのことを考えてハエ叩きをしていただけだ」と言う。
「30万クレジットは、2人で分けなさい・・・」
ビアンカはマスクを外して息を荒くする。
「ビアンカ!」
「弾丸を6発食らったみたい。3発はエンジン、もう3発は・・・ゲホッ!」
ビアンカの体にも弾丸が命中して彼女は吐血してしまう。彼女のF-4Gも高度が下がる。
「友達は作りたくなかった・・・飛鳥・・・部屋の明かりを・・・消してほしい・・・グフォッ!」
ビアンカの機体は徐々に高度が下がり2回目の吐血をする。
「ビアンカ!諦めないで!一緒に基地へ戻るのよ!」
「アンナ・・・ようやく、あなたたちの笑顔が見える・・・」
ビアンカは息を引き取りF-4Gは墜落する。
飛鳥は泣きながら「Return to base.」と言い基地へ戻る。
「出撃数6、未帰還機4.苦しい戦いだったな・・・。」
サダトは朝焼けを見ながらポロっと呟く。
飛鳥は基地へ戻るとビアンカの部屋に入り、部屋の明かりを消す。
「ビアンカ・・・おやすみ、安らかに、眠ってね・・・」
飛鳥はビアンカの部屋を後にする。
※All systems green.≒オールグリーン…システムがすべて正常に動作していること
※EMP( ElectroMagnetic Pulse)=電磁パルス・・・本来ならば、高高度や宇宙空間で核を起爆することによって発生するもの。人体に影響はなく、電子機器を使い物にならないようにする。それによって経済的に大きな痛手を負わせることができる。
Tips No.8~ビアンカ~
ビアンカ=モーリ(Bianca Moli)
対地攻撃の天才。
TACネームは「ルナ」(Luna)。
1967/06/26生まれ。テレジア連邦共和国出身。
顔を芸能人に例えるならば眞鍋かをりさん。
声は皆口裕子さんに似ている。
髪型はブロンドセミロング。
153cm/54kg/Eカップ。
仲間を大切にする、過去にとらわれがちな性格。
暗闇の密室に弱く、時々ボーイッシュな喋り方である。
爆弾を抱えたお化けのエンブレムで、対地攻撃の天才として「地上の悪魔」と恐れられた。
搭乗機はF-4Gで機体の番号は004。
F-4G PhantomⅡ Wildweasel
ビアンカの搭乗機。
機銃:なし
ISM:58発
フレア:3個x10回
特殊兵装
ナパーム爆弾:16発
無誘導爆弾:20発
4連装空対地ミサイル:16発
カラーリング
全身森林迷彩
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