#2 運命のくじ引き~Fate~ 2004/02/13
1ヶ月の訓練を終えて4年間のブランクを取り戻した飛鳥はナセル王国内での所属先を決めるくじ引き大会に参加させられていた。
「傭兵諸君。これより諸君の配属を決めるくじ引き大会を行う。ナセル王国は砂漠の国だ。ベイルアウトしてから水なしで生きていられる時間は19時間といわれている。「生きるために殺せ」これを肝に銘じておけ。くじの内容だが、60~69の番号で所属先が決まる。60は、訓練飛行場教官、生存率80%。61~65は正規軍へ編入、生存率50%。66と69は戦闘機基地、生存率、66は80%、69は10%。67は輸送機、68は爆撃機の基地、生存率50%ずつだ。生存率が低い順に報酬が高くなる。くじの当たる確率は10%ずつで同様に確からしいようにしてある。それでは、くじを引け!」
この時飛鳥を含め傭兵は20人。同じ基地での同期は2人だけである。飛鳥は12番目にくじを引く。そして結果は・・・69という数字が記されていた。飛鳥は涙目になりながらくじをポケットに入れる。次の人がくじを引くと、失神してしまう。右手に持っていたくじの番号は69と記されていた。失神した人は医務室に運ばれる。
「え、嘘・・・あの人も?」
飛鳥は同期ができたことにホッとしつつ生きて帰れるのかと不安に思う複雑な気持ちになりながら全員がくじを引き終えるのを待つ。
「では諸君の武運を祈る。出発は2時間後、解散!」
飛鳥は自室へ戻り、荷物をまとめて2時間後に屋外の駐機場へ向かうと自分のF-4Eの機首を撫でている。
「しかし、暑いね~。」
飛鳥は汗を拭いながら腕時計の時刻を確認して
「飛鳥!出発の時刻だ!」
整備兵の一人が飛鳥に向かって言うと飛鳥はF-4Eのエンジンをスタートさせキャノピーを閉めるとヘルメットとマスクを装着する。
「タワーからエアフィールド69(Air Field Six-nine)へ向かう機へ。離陸を許可する。」
「こちら十六夜飛鳥、了解。さっき失神した人、ついて来てよ。」
さっき失神した人は1時間前に目を覚まし飛鳥のF-4Eの後ろを
「わかっているって。とりあえず俺はアシュレイ=ダイソン(Ashley Dyson)だ。」
飛鳥とアシュレイはランウェイ4から離陸して東にある敵対勢力に最も接近した空軍基地、エアフィールド69へ向かう。
「アシュレイ・・・ね・・・私は十六夜飛鳥。飛鳥って呼んで。詳しい紹介は後よ。レーダーが12時方向に敵機を捕捉したわ。数6。」
飛鳥はスロットル全開で会敵しに向かうと、ターゲットコンテナにMiG-21 bisと表示される。コンテナの数字が6000になるとISMでロックオンして1発発射する。右隣の
「FOX3!」
アシュレイは飛鳥がISMを発射するタイミングを見計らって4連装空対空ミサイルを4発発射する。放たれた6発のミサイルは全て命中して敵機はレーダーからロストする。
「アシュレイのF/A-18Cなかなかやるね。もうすぐエアフィールド69よ。」
あと2分飛べば基地を目視できる距離に達する。
「こちらコントロールタワー69、ダブルエックスレイ(Double X-ray)だ。エアフィールド60から来た隊だな?話は聞いている。着陸を許可する。」
飛鳥とアシュレイは管制塔に応えるようにフラップを展開しギアを下ろす。着陸に成功し着陸に成功し屋外の駐機場に誘導されトーバー付きのハイラックスに牽引されながら2機は主翼を折りたたむ。
「ふぅ。着いた。アシュレイ、イケメンなのね・・・」
飛鳥とアシュレイはキャノピーを開けてマスクとヘルメットを外す。
歓迎に来た他の傭兵や整備兵は珍しい生き物を見るように飛鳥に注目する。飛鳥はたくさんの視線に対して少し顔を赤くしながら急いでヘルメットを被り司令官に着帽敬礼をする。
「やあ、君たちが新しい傭兵だね。私はこの基地の司令官、モハメド=サダト(Mohammed Sadat)中佐だ。60の司令から情勢は聞いたと思うが、2年前に君主制に反対する反政府革命が始まり正規軍の6割が革命に参加した。このままでは、王族である私や祖父母、伯父、娘たちが処刑されてしまう。そうなる前に革命軍を鎮圧せよ。私のことは司令でも、呼び捨てでも構わない。機体の改造や武器の購入はマクラーレン(McLaren)の倉庫に行くといい。じゃ、頑張ってねぇ~。」
飛鳥はなんか面白そうな司令だなと思いながら他の傭兵たちに兵舎を案内してもらう。兵舎に着き用意された部屋に入るとエアコンのスイッチを入れてベッドに寝転がる。
「玲奈・・・今、何しているの?」
※FOX3・・・空対空ミサイルの発射の合図の一つ。ここでは〇連装や高機動空対空ミサイルの発射の合図で使用する。
※トーバー・・・Tow bar、飛行機の前側のギアと牽引車両を繋ぐための棒
※ハイラックス・・・トヨタのピックアップトラック
※ISM=International Standard Missile・・・世界中で採用されている対空/対地ミサイル。この世界の戦闘機の主力装備で赤外線追尾式。
Tips No.3~ナセル王国~
ナセル王国はこの世界の東の大陸に位置する海に面した砂漠の国である。
首都はスーフィー、ラテン文字表記だが、アラビア語が公用語である。
面積約1.5億平方キロメートル、人口約6億人、東の大陸最大の産油国である。(世界の石油可採年数は300年以上世界大戦が可能なほどと推定されているが、ナセル王国周辺には世界の40%の石油が埋蔵されている)
19世紀から続く伝統的な君主制国家であるが2002年、若者を中心に王族による政治の腐敗を理由に王族全員公開銃殺刑(すなわち王族の根絶)と民主化を訴える革命が起き内戦状態にある。
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