(7)
最初いた部屋に戻ると、ほかの2グループはもう部屋にいた。
みんなが調べてきたことを合わせると、この建物の中には体育館やシャワー室、食堂とか図書室とか保健室みたいな部屋まであって、服がいっぱい置いてある部屋や洗濯機のある部屋も見付けたらしい。
私達はカーペットの敷いてある少し小さめの部屋を3つ見つけたけど、同じような部屋はあと2つあったようだ。
私達が調べた部屋は、どこも鍵なんてかけてなかったのに、森さん達が見付けた食堂の隣にある部屋2つには鍵がかかっていて入れなかったようだ。
それに、森さん達が食堂を調べてたら、自分の端末をタッチするところがあってらしい。
そこにある機械をタッチすると、30くらいもあるメニューの中から好きなものを選べて、料理が機械から出てくるのが判ったらしい。
そんなスゴイ部屋もあったみたいだけど、私達が実際に見たほとんどの部屋は何一つないがらんどうだった。
倉庫って感じの部屋のいくつかには掃除用具とかペンキとかカラースプレーなんてものだけあって、保健室みたいな部屋なのにベッドなんてなかったりなんて感じのデタラメさ。
調べたらかえって分からないことばかりになってしまった。
私達が戻ってきて少しすると、男子達がみんな帰ってきた。
「どうなってたの?」
ヒデくんに訊いてみる。
「んー…」
ちょっと困ったような顔をする。
「この建物以外の場所はほとんど行けないみたいだ」
「え?なに、それ?」
ヒデくんの言うことの意味が全然分からない。
「この建物から3分くらい行くと崖で、下は海になってるんだ」
「海?崖?」
訊き返す。
ヒデくんが小さく頷いて
「東と南は海で、北と西は3分くらい行ったところが10mよりも高いコンクリートの壁が立ってるし、遠くは壁より高い森になってて見えない」
と言うので
「えぇ…」
気の抜けたような返事しかできない。
「建物の周りは野原しかないしな」
健ちゃんが言うけど
「…」
もう何も言葉が出ない。
だから、ヒデくんや長谷田くんが前田さんや千賀さんと話してるのを眺める。
「どうしたの、ボーッとしちゃって?」
声の方を見たら美愛だった。
「うん、何だか訳分かんなくて」
「そうだよね」
美愛は私の向かいに座った。
「何なの、一体って思うよ、あたしも」
「うん…」
「だいたい、ここってどこ?」
「うん…」
二人で顔を見合わせる。
美愛とは中学校以来の友達だ。
健ちゃんとヒデくんが小学校から一緒だけど、女子だとやっぱり美愛と一番気が合う。
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