(8)

 「まず、ご飯に行こっか?」

「え?」

「何かさ、5時半からは食堂?の機械動くみたいで、もう行っちゃってる人もいるよ」

「はー…」

 ちょっとビックリするし、笑ってしまいそうになる。

 私はさっきから何も考えれないし、お腹も別に空かない。

 思わず、笑いももれそうになる。

 だって、前田さんとか榮川さんみたいなしっかり者がいるのも頼もしいけど、こんなとこがしっかりした人もいたるんだから。

 「ホントに出てくるのか試してみたいじゃない」

「うん」

少しだけ口の端が上がったと自分でも判った。

(美愛の明るさにはいつも助けてもらってるなぁ)


 食堂に行ってみると

「健ちゃん?」

もう食べ始めてたのは健ちゃんと野村くんと田月くんの3人だった。

 「やっぱりなぁ」

「お、何だ、美結。もう来たのか?」

「もう来たのかって、先に来てたのは健ちゃんの方だよ」

「おお」

右手を上げて応える健ちゃん。

 隣で美愛が笑ってる声が聞こえるけど、たぶん私も笑ってるはずだ。

 「こんなとき誰が食べに行ったのかと思ったら、やっぱり健ちゃんだ」

 ただ、隅っこの方では森さんと三田さんと矢口さんの3人も食べてるようだった。

 美愛も私もオムライスを選んでテーブルに戻る。

 「スゴイねぇ、どーゆー仕掛けになってるんだろ」

「裏で何かになってるみたいだよね」

「うん」

説明書きどおりにしてメニューを選んでみたら、ちゃんとベルトに乗って出てきたのだ。

 「・・・・・」

健ちゃん達から2つ離れた席に美愛と向い合せに座ったら、いつのまにか隣に榮川さんが来ていた。

 「…隣に座ってもいい?」

「いいよ」

「…」

榮川さんは、トレイをテーブルに置いてから私と健ちゃんの間の席に座った。

 「榮川さんのは何?」

「野菜天ぷらと白飯と味噌汁…」

「そっかぁ」

一応私の問い掛けに答えてくれたけど、何となく空気が固かったので、それ以上話し掛けるのはやめた。

 「味はまあまあ食べれるくらいだね」

「うん」

美愛の言葉で、またちょっと笑ってしまった。

 「あんなベルトに乗って出てくるんだし、絶対裏で冷凍かなんかをチンしてるんだよ」

「そうかも」

1分くらいで出てきたし、美愛じゃないけど自販機みたいな仕組みなんだろう。

 「あたし、でも、冷凍のおかずとかキライじゃないよ」

「そう?」

「美結はキライなの?」

「好きって程じゃないだけだよ」

「そっか」

 ちょっと見回すと、私と美愛が食べ始める頃には、大体の人達がご飯食べに来ているようで、席は半分以上埋まっている。

 クラスは30人だから、食堂の席は40か45くらいあるみたいだ。

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