53話 烈火の中のオートマン ~選択~
管理官から頼まれた仕事を終え、菜園に着くと予想もしなかった事態が私を待っていたーー
「ただいまーーっ」
レーダーがいた街から帰ってきて菜園に着き、私を出迎えてくれたのはあのうるさい管理官――ではなく、知らない男の人達だった。
「おかえり、ねぇちゃん⋯⋯」
「え⋯⋯?」
そこには男が三人と女が一人⋯⋯私に銃を向けて机に座っていた。
菜園の建物の中は男達が荒らしたのか、鉢植えは床に落ち割れていて、机や本棚⋯⋯あらゆる物がひっくり返っていた。
私が知っている菜園ではなくなっていた。
「あんた達⋯⋯誰?」
私がそう問うと男はフンと鼻で笑うと話始めた。
「俺が誰かなんてどうでもいい。お前は俺の仲間を殺したんだ。それだけでここを襲う理由は十分だろ? 違うか?」
「何、言ってんの⋯⋯?」
全然意味がわかんない。誰の事言ってるのかもわかんないし⋯⋯。
私は殺してなんかない。
「わからないなら教えてやろう。古い校舎で誰かに会わなかったか? とぼけても無駄だぞ」
古い校舎って⋯⋯もしかしてあのプリンが殺した男の事かな?
でもあれはあいつが襲ってこようとしたから⋯⋯。
私は弁解しようとしたがこの人達には効果がないようだ。私が話そうとするや否や、遮るように話を続けた。
「言い訳は聞かない。無駄だ、と言ったはずだ。お前は俺達の仲間を殺した。その事実だけで十分だ。だろ?」
こいつ何も聞く気がないみたい。じゃあ⋯⋯ここで戦う? いや、でも⋯⋯。
「ロ、ロボット達はどうしたの?」
ここは元はロボット達が暮らしていた菜園。私は管理官に救われた。住む場所がなかったら私は今頃どうしていたのかもわからない。
ここに住めているのも管理官達のおかげ⋯⋯。
さすがにいきなり来て皆殺しにしてるって事はないと思うけど⋯⋯。
「あぁ、あのうるさいロボットか⋯⋯」
そういうと男は机から降りて立ち上がり、奥の部屋に歩き始めた。
何も言わずに部屋の扉を開けた。
「え⋯⋯」
その部屋の扉を開けると、そこには中の部品が飛び出して黒く焦げているロボット達が微動だにせず倒れていた。
そこには管理官の姿もあった。
「ね⋯⋯ねぇ。みんな⋯⋯」
そう言って私がロボットに近寄ると、男は鼻で笑い話し始めた。
「フン⋯⋯無駄だぞ。こいつらはもう動かねぇからな。畑の管理しかできねぇ無能なロボットの機能を俺が停止してやった。フッフッフ⋯⋯役立たずなロボットがいなくなっても何も変わらねぇ。だろ? 畑の管理しかできないんだからな! フッハハハハハ!」
こいつ腐ってる⋯⋯。
何かって言えばレモネードを作ってるしか言わない、ちょっとうるさいロボットだけど私とプリンに家をくれた大切な⋯⋯家族だったのに。
「なんだその目は⋯⋯?」
ロボット達を殺されて男にキツイ目線を送ると、男の表情が変わりこっちにゆっくりと近づいた。
ドンーー
「うっ⋯⋯」
私は銃の先端でどぎつい一撃を食らった。
鈍い音と衝撃がいつまでも脳裏に響く。
「俺に逆らわないほうが身のためだぜ?」
ガガーーカチャーー
私が殴られた勢いで管理官の上に勢いよく倒れた時だった⋯⋯。
今まで微動だにしなかった管理官の腕が少し動き音を鳴らしている。私が聞いた事があるウイーンという音ではなく、機械が壊れたような音だった。
「管理官⋯⋯?」
「や⋯⋯やめ⋯⋯暴力は⋯⋯いけませんよ⋯⋯」
管理官はようやく動く腕を私に伸ばしそう言った。私をかばっているようだ。
「くそっ⋯⋯まだ生きてやがったか」
男はそう言うと管理官に銃を向けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます