52話 意外な相棒 ~待ちぼうけ~

「ココ ツイタ」



 高い崖に挟まれた細い道をしばらく歩くと一つの建物が出てきた。

 古い駅のようにも見えるが、こんな所に駅なんてあるはずがない。俺はもう少しそこへ近づいてみた。


 これは建物というより地下へ繋がる階段を覆っている外壁だな。

 どうやら目的の銃の在処は地下にあるらしい。


 俺達は地下へと続く階段の先にあるマンホールから、梯子を伝って地下へ降りた。


 地下へ降りるとトンネルのようになっていて、歩くスペースはさほど広くはないが両脇に扉が点々とあり、トンネル自体は長く続いているようだ。


 俺は探索も含めて全部の部屋を見て回る事にした。まず入り口から一番近い左手の扉を開き、中へ入った。



「グリーンはそっちを頼む」



 この狭い部屋を二人で探索するのは効率的ではないと思い、グリーンには別の部屋を見てもらった。


 俺が入った部屋にあったのは、金属の棚が縦に3つ繋がっている棚に、弾薬箱とプカコーラがいくつか置かれている物だった。



「ラッキー。弾薬箱あるじゃねぇか」



 俺は弾薬箱から弾を全て取り、棚に置かれていたプかコーラをインベントリに入れ、部屋の外に出た。



「おい、そっちはどうだった?」

「ジュウ ナンテナイ」



 ここはハズレか。


 こうして俺とグリーンは手分けして、目的の銃がないかトンネル内をくまなく探した。


 途中、トンネルが二つの分かれ道になっていたが、その分かれ道からでも見える程近くに土砂が崩れて行き止まりになっているのが見えた。

 俺達は土砂崩れを起こしていないもう一つの道を真っ直ぐ進んだ。



「ちっ⋯⋯銃なんてどこにもねぇじゃねぇか」



 とうとうトンネルの最後まで来てしまった。残りの部屋はあと一つ。

 そのトンネルは不思議と出口はなく、トンネルの終わりには正面にどでかい扉が付いた部屋があった。


 俺は99%確信していた。そこに銃があると。あとここにたどり着くまでは運よく敵に出くわさなかったが、この奥に赤いマーカーが付いている。

 俺は銃を構えてその重そうな扉を静かに開けた。



バチバチバチーー



 予想的中だな。扉を開けた瞬間、中から巨大な蜂が出てきやがった。



「これは⋯⋯デスモークだな」



 ゲームの中でも登場した、これは間違いなくデスモークだ。

 デカくて広い羽を羽ばたかせて、蜂みてぇな体をしている⋯⋯ただ、デカさは蜂の数百倍はあるけどな。

 羽をバタバタする音がリアルの蜂みてぇな音がするんだよな。

 その音も数百倍うるさい。



 デスモークは俺達を見つけるなり、いきなり胃液らしき液体をぶっかけてきた。



「うぉっ!」



 俺は咄嗟に避けその液体を回避した。これに当たったら多分ひでぇ事になるな。体が溶ける予感がする。



「ギャァァァァァ!!」



 その声に驚いてグリーンのほうを見ると、一瞬でかけられた液体を避ける事ができなかったようだ。グリーンの腕はもの凄いスピードで溶け始めて徐々にただれていく。



「くそっ⋯⋯グリーン、これ使え」



 俺は瞬時にインベントリからスチムパックを取り出し、グリーンに投げ渡した。



「ウ⋯⋯ウゥ⋯⋯」



 グリーンは苦しそうだ。スチムパックを使ったとはいえ、すぐには応戦出来そうもない。

 こいつは俺一人でどうにかしないと⋯⋯。



バババババーーパンパンパンーーカシャ



 俺はデスモークがとめどなくぶっかけてくる胃液をかわしながら、アサルトを弾切れまでぶっ放して、左手で持っていたピストルをデスモークの頭に撃ち込んだ。


 連続でいくつもの弾丸を撃ち込まれたデスモークは、バチバチうるさかった羽を止めそのまま地面に落下した。



「よし。おい、大丈夫かグリーン」



 俺は地面に落ちるデスモークを確認してから、グリーンの元へ走った。



「オデ⋯⋯ダイジョウブ。プリンノオカゲ。ウデガ スコシトケタ。ソレダケ」



 そう言うグリーンは元気がなさそうだ。スチムパックのおかげで少ししか被害がなかったが、これは放っておいたら、おそらく全身溶けるかもしれねぇな。


 俺達は扉の先の部屋へ足を運び、目的の銃を探した。その部屋の中は道具箱が乱雑に捨てられていて、四角くデカいデスクの上に、武器を改造できそうなデカい機械が乗っている。

 管理官が言っていたのは多分これの事だろうな。

 その他にも何に使うのかわからないが、さまざまな機械がそこら中に置いてある。


 それより肝心の銃を見つけないと改造できねぇよな。



「ミツケタ」



 俺がデスク周りのボックスを調べていると、グリーンが何かを見つけて俺を呼んだ。

 グリーンのほうに行くとそこには壁に設置された金庫があった。


 俺は一瞬にしてこれだと思った。なぜなら、俺なら大事なもんは金庫に入れるから、だ。


 しかしこの金庫開けられるのか? 俺は試しにと思って、金庫の側にあったヘアピンの箱からヘアピンを一つ取り出し、金庫の鍵穴に差し込んでカチャカチャと動かしてみた。


 するとーー



カチャーー



 どうやら開いたようだ。まさか俺にこんな技術があったとは驚きだが、これもこの世界に来てからだろう。

 俺はスキルはとにかくロックピックを先に取る派だ。そのおかげでこうして金庫を開けられたわけだ。


 そして金庫を開けてみると、中には予想通り銃が一つ入っていた。キャップも少量入っていたが、今はそれはいいだろう。



「よし、多分これだな」



 俺はこれが目的の銃だと思い、部屋の中央にある器具の所へ持っていき、改造の設計図を広げた。



「俺は今からこの武器を改造するから、お前はそこら辺で休んでろ」



 グリーンにそう指示して、さっそく改造に取り掛かった。

 まずは銃を全て分解して⋯⋯こいつと交換っと⋯⋯。

 思ったより時間がかかりそうだな。



カチャカチャーー



「おい、グリーン⋯⋯これが終わったらお前はどっかに行けよ。お前を菜園に連れて行くわけにはいかねぇ。わかるよな?」



 俺は機械をいじりながら、グリーンにそう言った。



「オデ イクトコナイ。デモ プリンニ メイワクカケナイ。ココニイル。イツデモアイニキテ」



カチャカチャーーブイーンーー



 俺は改造に集中している為、グリーンの顔は見れなかった。それでもその表情が想像できる程悲しい声だった。

 グリーンの気持ちも理解してやりてぇが仕方のねぇ事だ。


 テンや管理官達がいるあそこに連れて行ったら、敵扱いされて撃たれかねねぇからな。可哀そうだがこれもグリーンの為だ。



カチャカチャーー



「たまに顔見にくるからよ、そんな悲しい顔すんな」

「オデ ズット マツ。プリン クルノ マッテル」



ブイーンーーガチャーー



 後でテンにも事情を説明して一緒にくるか。


◆◆◆

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