45話 甘い思考
発見 ブリオニア校舎 EXP100
今日は管理官の依頼で、プリンと二人で古い校舎に来ている。どうやら何かが校舎を荒らしているらしいが。
まぁようは害虫駆除だ。
害虫駆除くらい私一人で大丈夫だと言ったんだけど、プリンが一人じゃ何があるかわからないからって、付いて来たんだよね。
本当、過保護なんだから。
まぁプリンと二人なら何があっても安心できるけどさ。
「結構広いね、この校舎」
見た目はそうでもないが、中に入ってみると案外広い。
パッと見ただけでも5つの部屋と、広い通路があり、中央は広間みたくなっていてそこだけ他の部屋とは違い、一番広くなっている。
一階建てっぽいけど、横長の校舎みたいだ。相当昔に廃校になっていて、中は酷い有様だ。
窓は割れていて、各所に付いていたであろう扉は、ボロボロになり木の破片が床に散らばっている。
おそらく長きに渡りほおっておかれたため、自然に朽ち果てたのだろう。
そんなボロい校舎の入り口からすぐの所に、RADだらけの害虫がわんさかいる。
こいつは私がこの世界に来てから一番最初に出会った、
ざっと見ただけでも5、6匹はいるだろう。ビチビチと嫌な音を出して飛び跳ねている。
「私はこっちから見て回るから、プリンはそっちお願いね」
害虫はRADにさえ気を付ければ、特に危ない事になる事はないだろうから、私達は手分けして、校舎の中をくまなく探索し害虫を殺しまくった。
「まずはここにいるやつからだね」
まず入り口で出迎えてくれたこいつらをどうにかしないと。
こいつらに銃を使うのは弾の無駄遣い。銃を使えば他に敵を呼んじゃう事もあるし。
私はインベントリから薙刀を取り出し、確実に一匹ずつ始末した。
ちなみにこの薙刀は、管理官が用意してくれた設計図を元に、材料を集めてプリンに作ってもらったの。
近接武器はほとんど使わないけど、こういう銃を使うまでもない相手の時には非常に役に立つ。
だから私は近接武器を馬鹿にしない。基本、F.o.D.をやったことある人間は、近接武器なんてあんまり使わないから、重視してないと思うんだけどね。
私は結構使うのよ。弾節約のために。でもケチってると死ぬことになるんだけどね。ゲームではいつもケチってやられてたからね。自慢になんないけど。
「よし、ここは片付いたかな」
私は広間の害虫を始末してから、プリンとは逆の左回りで探索をしていた。
必要なものを集めつつ、害虫がいないかちゃんと目を凝らしながら。
カサカサーー
私はその音と同時に振り返った。これは絶対害虫の音。
本当にゴキブリみたいな音がするの。気持ち悪くて仕方ない。
「⋯⋯どこ?」
音がした方を見ても害虫の姿は見当たらない。
まぁ黒いし、止まってると地面と同化して見づらいから、結構見つけずらいんだよね。
カサカサーー
「もう、どこよ?」
私がキョロキョロと見渡しているその時、害虫が私に向かって勢いよく飛び跳ねてきた。
「うわ! キモ!」
バスーーバスバスーー
私は薙刀を振り回していると、ゴキブリみたいなやつは、飛び跳ねた瞬間薙刀がその体を真っ二つにし、地面に殻が落下した。
「よし。こいつは特に何も持ってないからいいや」
虫以外の敵を殺した時は、その遺体を探るがこいつはその必要はない。
特に何も持っていない上に、持っていたとしてもこいつの胃液とかエキスとかだし⋯⋯。
気持ち悪くてインベントリにも入れたくないね。
気を取り直して次行こう。
私が今いるところの右側は、もう壁自体が崩れていて部屋の境目がわからなくなっている。
私がその崩れている壁の向こうに行こうとしたときーー
ガサーー
また害虫? いや⋯⋯。
私は一瞬害虫がまだ残っていると思ったが、どうやら違ったようだ。
害虫のカサカサっていう音とは少し違うようだ。
物音というか誰かがいる予感がした。
私は銃を片手に恐る恐る部屋に足を踏み入れた。
「撃たないでくれ!」
そこにいたのは、やはり害虫ではなく人だった。
私は、両手を上げているそいつに銃を向けたまま話しかけた。
「ここで何をしているの?」
こいつの事は見た事もないけど、こんな害虫だらけのところで、害虫を退治することもなくいるなんて絶対におかしい。
そう思って、とりあえずこいつが銃を持っていないか調べた。
「後ろ向いて!」
「わ、わかったから撃たないでくれ」
後ろを向いたそいつの体を触り、銃を持っていない事を確認した。
どうやら銃は持っていないようだけど、銃も持たずにこんなところで⋯⋯?
尚更おかしいよね。
でも⋯⋯こいつは特に私に何かしてきたわけじゃないけど、ここで殺すべき?
いや、でも何もしていない善良かもしれない人を殺したら、私はただの悪人だよね?
そいつに銃を向けたままそんなことを考えていると、一瞬の隙に銃を奪われて立場逆転だ。
一瞬の出来事すぎて呆然と立ち尽くす私にそいつはニヤっと笑い話した。
「ふん、悪いね。お嬢ちゃん」
男はそういうと私に銃を向け、話を続けた。
「お嬢ちゃん、誰か男と来てたよな? そいつのところに案内しろ」
またプリン? また知り合いとか?
やっぱりこいつ、殺しておくべきだった。
そう思って歩きだそうとした時ーー
「俺を探してるのか?」
あ、プリン! 本当に絶妙なタイミングで来るよねいつも。
パスーー
そう思った瞬間、プリンはサイレンサー付きピストルで、こいつの頭蓋骨を打ち抜いた。
「お前はなんでいつも、そう甘いんだ?」
いや、なんでって言われても⋯⋯。
「そんなに危険な目に遭いたいか?」
そんなわけないじゃん。危険な目に遭いたい人なんているわけない。
「だって、何もされてないし、善良な人間かもしれないじゃん」
私はそう言って、ちょっと気分が落ち下を向いた。
「いいか、いい事を教えてやろう」
プリンはそう言うと、私に近づき更に続けた。
「何かされてからじゃ、遅いんだよ。それとな、善良な人間は銃口を向けたりしない。
この世界に善良な人間なんつーのはいねぇ。信じれるのは自分だけだ」
そう言いながら、プリンに撃たれて倒れた勢いで床に落ちた私の銃を拾い私に返した。
プリンは少し口元を緩め、私は渡された銃を受け取るとその校舎を後にした。
「ほら、帰るぞ」
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