23話 惑わしの女 ~新たな刺客?~

「あ、いた! プリ⋯⋯ン?」



 ブトリック研究所に着くと、入り口にプリンと知らない女の姿が。



「ちっ⋯⋯来たか」



 何やら険悪な雰囲気で女はプリンに銃を向けていた。



「⋯⋯? あなたの仲間?」



 女がそう言うとプリンはかぶりぎみで言葉を放った。



「あん? ⋯⋯誰だ?」



 え? プリン⋯⋯どういう事?

 女は口をクイッと引き上げ笑顔を見せた。



「ふん⋯⋯どうやら仲間のようね。そこの子、荷物を全部ここに置いて立ち去りなさい!」



 え? 私⋯⋯?

 何がどうなってこういう事になってるのかわからなかった。



「テン⋯⋯帰れ」



 プリンは私のほうをチラッと見てそう言い放った。

 そしてインベントリから沢山の物を地面にばらまいた。



「テンって言うの? あなたもよ」



 私は二人に近付きインベントリを開こうとした。


 その時ーー




 プリンは女が私を見た一瞬の隙に、女から銃を奪い、その銃を女の頭に当てた。



「⋯⋯誰だお前? 目的はなんだ?」



 女は驚き戸惑っている。



「くっ⋯⋯殺すなら殺しなさい。ここはそういう世界なのだから」



 その言葉を聞いたプリンは銃口を下げた。

 どうやらプリンは女を殺す気はないみたいだ。



「どっか行け」



 そう言ってプリンは女を突き飛ばした。



ーードサッ。



「いいの? 今ここで殺さなくて」



 突き飛ばされた女は尻もちを付き、地面に座りながらそう言った。

 プリンは女の言葉を無視するように、床にばらまいた物を、再び自分のインベントリに入れた。



「⋯⋯行くぞ」



 プリンは私を一目見て研究所の扉の中に姿を消した。

 そして私も女から目を離さないようにプリンの後を追い、駆け足で扉の中へ入った。






「いいの? あの人」



 中に入った私が問うとプリンは鼻で笑い更に奥へと歩いた。



 どうやら敵のリポップはまだしていないみたいだ。前に来た時に倒したから、その死体が転がっている。

 プリンが横たわっていたあの場所を見ると、血がべっとりと床にこびりついていた。



「お前は右から⋯⋯いやいい。やっぱり一緒に回るぞ」



 そういうとプリンは、一階の飾り物の車を起点に左右に別れた通路を右に歩いて行った。

 右に行くと細長い通路のすぐ左側に上り階段があり、その右手には二つの扉が。

 そして突き当たりには左に曲がる通路がある。



「ここから入る?」



 私はそう言いながら一番近い右手の扉を開いた。



「どけ!」



 私が扉を開いた瞬間にプリンは私を突き飛ばし、中にいたミュートンの頭にどぎつい一発を入れた。



「ご、ごめん」



 私はすぐに立ち上がり、部屋の中を覗いた。

 そこには長机の上に沢山のパソコン? デスクトップ? が並べられ、その端っこには教壇のようなものが置かれていた。


 そのデスクトップのほとんどが画面が割れていたり、床に落ちたりしていて使い物にならない。

 さらに机の上はぐちゃぐちゃに荒らされていた。



「あ! このミュートン、ミニユーク持ってるよ!」



 私はさっきプリンが殺したミュートンに近寄り死体を漁った。

 ミニユークとは重さ0で高値で売れる貴重なもの。


 私はミニユークをインベントリに入れ、部屋の探索を再開した。

 荒らされた机の上には鉛筆やクリップボード、マグカップや卓上ファンなどが乱雑に置かれている。


 部屋の壁際には縦長の金属ロッカーが数個置かれていて、中にはロッカーの扉が開いて倒れているものもあった。

 ロッカーの中にはキャップが数個と戦前のお金や、野球帽など軍服も入っていた。

 でもその帽子や軍服自体は能力が低く、重量ばかりあって売値が低いから特に持って帰っても意味がない。


 私はロッカーからキャップ数個だけを取り、その部屋を後にした。



「あんまり収穫なかったね」



 プリンはこの部屋にあったものには手を付けず、そそくさと次の部屋に向かった。

 だから私がキャップとか全部取っちゃったんだけど、本当にいらなかったのかな?


 私はそう思いながら次の部屋へ行くと⋯⋯。




「なぜここにいる? 帰れって言ったじゃねぇか」



 そのプリンの声に驚き私が隣の部屋に入るとそこにはーー

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