24話 惑わしの女 ~ターミナル~

「どこにいようと私の勝手でしょう? あなたたちには関係のない事」



 研究所の入り口で私達に銃を向けていたあの女がいた。



「ふぅ⋯⋯さっきはごめんなさい。人違いだったわ」



 女はそれだけ言うとどこかへ立ち去ってしまった。

 人違い? 誰かを探してるって事? それにしてもこっちは人違いで銃を向けられたんだよ。

 私達の物まで奪おうとしたくせに、人違いで済むと思うわけ?

 でもまぁ、もう行っちゃったし仕方ないか。




「⋯⋯行くぞ~!」



 プリンは急に明るい声でそう言って、長い通路の先に歩いて行った。



「え? ちょっと待って! いいの? 放っておいて」

「好きにさせろ。別に俺達に何かしようってんじゃねぇだろうし」



 いや、何かしようってんじぇねぇし、って⋯⋯入り口で銃向けられたの忘れたわけ? プリンも考えてる事よくわかんないよね。

 まぁ⋯⋯いいか。


 私達は長い通路を左に曲がると右手に大きな扉があった。しかしその扉は、ちょっとやそっとじゃ開かないくらい頑丈だった。

 近くに何かあるわけじゃないし。この扉はどうやって開けるのだろうか。


 そういえばこの世界来て今思ったんだけど、ゲームとは違ってターミナルとかないよね? ロックピックはあったのにターミナル自体がなくなってる。この研究所にもあるはずだし。

 この大きな扉は記憶にないけど⋯⋯。


 スキルにもターミナルのロック解除の項目がまるまるなくなってたし。どうなってんの? スキルっていうかこの世界自体がもの凄い変化してるんじゃないの?


 武器とか防具の改造自体もなくなってるみたいだし。まぁ、改造はプリンから教わって、スキルとかなくても少しなら出来るようになったからいいけど。


 この世界の事まだよくわかんないや。もう結構経ったけど全然理解できてない。

 だから凄いよプリンは⋯⋯何にも動じないっていうかさ。俺は強いから大丈夫って感じが伝わってくる。

 私も強くなりたいな。ゲームではへっぽこだったし⋯⋯いつも大輔に笑われて。だからこの世界では強くなっていきたいな。

 大輔に会った時にバカにされないように。


 まぁ強くなるって漠然と言っても、それは自分次第なんだけどね。そうプリンに言われたし。




「おい、ぼやっとすんなよ。ターミナルは多分二階だ。行くぞ」



 え? この扉やっぱりターミナルで開く仕掛け? しかも二階にあるの? こんな所ゲームにあったかなぁ⋯⋯。



 私達は来た道を戻り二階へ上がった。

 そこはミュートン達が上から私達を狙っていた場所。


 二階から一階が見えるように吹き抜けみたくなっている。そこに白い柵みたいなのがあって、汚れで向こうが見えなくなっている窓が付いた扉が一つある。

 そこに入ると会社とかにありそうな鉄のデスクが一つと、その上にターミナルが乗っている。

 デスクには卓上ファンとなぜか手術用トレイが。トレイの中にはスチムパックが三つと血液パックが一つ、それとメントスが大量に床に零れ落ちている。


 メントスとは言わばドラッグ。この研究所の人は薬中毒だったんだろうね。まぁ私には関係ないけど。興味ないから。

 そしてこの世界ではよく見るロッカー。このロッカーにはドライヤーとパンツ、なぜかこの部屋では使わないものばかりある。この部屋にいた人は何をしていたんだろうって気になるくらい不思議。

 まぁゲームの中の話だから不思議な事も許せちゃうけどね。



「これだ。ん? ロックねぇじゃねぇか。おかしいな」



 やっぱりロックかかってないんだ。また得意のバグ? でもおかしいよね。スキル自体が消失しちゃうなんて。



「じゃあ扉開く?」



 私がそう言うとプリンは無造作に置かれた椅子に座り、ターミナルをいじり始めた。


 それにしてもゲームの中ならわかるけど、よく実際にターミナルいじれるよね。私なら絶対無理だよ。仕組みだって理解してないんだから。


 あ、そういえばプリンはベゼルダの社員って言ってたっけ。じゃあわかって当然か。




「よし、扉のロック解除したぞ」



 凄い! 本当に解除しちゃうなんて。



「じゃあさっそくあの扉に行ってみよう?」



 私はプリンの腕を掴み、扉に向かうべく階段を駆け下りた。

 扉の近くに着くと、プリンの腕を引っ張り先行していた私は、後方に引っ張られ体勢を崩した。



「あうっ⋯⋯!」

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