11話 意図せぬ再会 ~ガンマニア~

「ぎゃぁぁぁーー」



 来ないで、来ないで!


 私は逃げるしかなかった。

 グールは一匹じゃない。

 大きな声を出したせいで、他のグールも次々と姿を現す。


 沢山のグールが私目掛けて全力で走ってくる。

 食い殺す気満々だ⋯⋯。



「もう、いつまで追ってくるのよ!」



 と、その時ーー



ドドドドーーピュゥンーードドドドーーピュゥン



「え?」



 音がする方を見るとさっきの男が、煙草を加えながらアサルトライフルを乱射している。


 うわっ、危なっ! 私に当たったらどうすんのよ。そこら辺考えて撃ってるわけ?

 とか思いつつも、内心安堵している私がいる。



「姉ちゃん、どいてな。そんな所いると誤射しちまうぞ」



 私は急いで近くのボロ車の陰に隠れて、銃声が止むまで身を潜めていた。


 すると男は楽しそうに銃を乱射している。

 実際にあんなグール目の前にして、よく笑って銃撃てるよね⋯⋯。


 しばらくすると銃声が止み、男が近付いてきた。



「なんだ姉ちゃん。銃の撃ち方も知らねぇのか? 教えてやるからこっち来な」



 そういうと男は小屋の方に歩き出した。


 私は、銃やV.A.R.T.S.バーツの使い方を教えてもらえると思い、渋々その男に付いて行った。






「まずは姉ちゃんが持ってる銃、見せてみろ」



 私は言われるがまま、持っている銃を渡した。



「へぇ、10mmピストルか。

 まず銃っつうのは安全装置を外さなけりゃ使えない。いくら撃っても弾は出ねぇぞ。

 10mmピストルの安全装置はここに付いてる」



 男はそう言って、持ち手の上に付いたポッチみたいな所を指さした。



カチーー



「ここを下にすると安全装置解除だ。逆に上にすれば安全装置がかかっちまう」



 男はカチカチと上下しながらやってみせた。



「へぇ⋯⋯」



 男から銃を受け取るとカチっと下に動かして安全装置を解除し、一発撃ってみた。



「おいおい、弾の無駄遣いすんなよ」



 なんで助けてくれたんだろう⋯⋯。

 銃の扱い方を教わりながらも私の頭にはそれしかなかった。



「あ、ありがとう」



 まぁでも教えてくれたし一応お礼は言っておく。

 まだ信用したわけじゃないけど。



「そういや姉ちゃん、V.A.R.T.S.バーツも使ってなかったよな? ついでだから教えてやる」



 そう言って男は、Pitboyピットボーイの上に付いているボタンをカチっと押した。


 男の視界は私にはわからないから、時間の流れを感じる事は出来ないけど、どうやら男の中では流れが遅くなっているようだ。



「ここ?」



 私も男の真似をして、Pitboyピットボーイのボタンを押してみた。


 すると時間の流れが遅くなった。

 男に銃を向けて、頭や体に合わせてみると命中率が表示されている。

 すぐ目の前で銃を向けているから、命中率は全部位100%だけど。



「おいおい、俺を撃つなよ?」



 撃つわけないじゃん。人殺しになりたくないし。



「色々⋯⋯ありがとう」



 私はそう言って立ち去ろうとした。



「おい、ちょっと待てよ」



 私は何か要求されるのかと思いヒヤヒヤしていた。

 銃の撃ち方もV.A.R.T.S.バーツも教えてもらったし、何より助けてもらったし⋯⋯。



「な、なに?」



 恐る恐る男に目線を向ける。



「お前ここに来たばかりか? 小屋寄ってかねぇか?」



 私は助けてもらったお礼もしたいし、少しくらいならと思い寄っていく事にした。



「⋯⋯うん」



 男は私の返事を聞くとすぐに、笑顔を見せ小屋の扉を開けた。



「俺はプリンな。よろしく! あぁ、名前は気にしないでくれ。プリンが好きなだけだ」



 そう言って男⋯⋯プリンはゲラゲラ笑い中へ入って行った。

 それにしてもプリンって、ネーミングセンスない。

 まぁ、いいか⋯⋯。



「私はテン」



 私はこんな所にいる暇ないんだけど。とか思いつつも一応名乗る。



「姉ちゃん、料理とか出来てんのか? ゲームの世界でも腹は減る。料理できなけりゃ大変だろ?」



 確かに。この世界来てからご飯まだ食べてないけど。

 どうするか考えないとな⋯⋯。

 最初はお腹減らないって思ってたけど、それは私の勘違いだった。



「ちょっと付いて来いよ」



 プリンはそう言って小屋の外へ歩いて行く。

 そしてインベントリから何かを出した。



「なにこれ?」



 私がそう聞くと、プリンは満面の笑みで答えた。



「これはなぁ⋯⋯サバイバルグッズだ!」



 プリンはどや顔でそう言ったがよくわからなかった。なんでこんなものを持っているのか。



「なに⋯⋯それ?」



 何故こんなものを持っているのかという意味の「なにそれ?」だったのだが⋯⋯。

 プリンは実際に使い方をやって見せた。

 畑に出来ているトウモロコシを一つ取り、サバイバルグッズの一つの簡易料理セットっていうやつで焼き始めた。



「これで焼きトウモロコシができる。これは簡単なやつだけど、これに付いてる鍋を使えば煮る事もできる。こいつは何でもできるぜ?」



 すごい! ゲームだと、この小屋にもある料理鍋を使わないと料理が出来ない。

 それがいつでもどこでも出来るなんて⋯⋯!


 まぁゲームだとお腹が空くって事もなかったから、私はあんまり料理鍋を使った事はないけど。



「次にこれはテントだ。このテントは優秀でボタン一つで一瞬で立ち上がる」



 そう言うとテントに付いているボタンを押した。

 すると本当に一瞬にしてテントが立ち上がった。



「なんでこんなの持ってんだ、って顔してんな?

 まぁそれは秘密って事で!

 このサバイバルグッズやるから理由は勘弁してくれよな」



 そう言ってサバイバルグッズを手渡した。

 まぁぶっちゃけ持ってる理由はどうでもいいんだけど、なんでこんな便利なものくれるのだろうか。



「え、いいの?」



 私が聞くとプリンは優しく微笑み答えた。



「あぁ、持っていけ。別に俺はそんなのなくても生きていけるしな。男だからな。姉ちゃん何も出来ねぇみてぇだから、せめてそれだけでもあれば楽になんだろ」



 少し嫌味っぽかったけど、サバイバルグッズをくれるという事で、私はありがたくそのサバイバルグッズを貰い、自分のインベントリに入れた。



「じゃあな。姉ちゃん町に向かってんだろ? 今度は気ぃ付けな」



 そう言うとプリンはどこかへ歩いて行ってしまった。


 私が思ってる程、悪い人じゃないのかな?

 ただの酒好きのおっさん?

 なんか見た目最悪だったから嫌だったけど、信用できるのかな⋯⋯。


 まぁ、プリンといたくなかったのはもう一つ理由があるんだけどね。



 体格がよくて無精髭、それにいつも煙草を咥えている。

 ⋯⋯大輔に似てるんだよね。大輔も無精髭でいつも煙草を咥えている。それに体格がいい。

 違うのは髪型くらいか⋯⋯?


 だから私は、大輔を思い出したくなかったから一緒にいたくなかった⋯⋯。




 それに大輔に「俺以外誰も信用するな」そう言われていたから。

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