4話 試行錯誤 ~感動的な世界~

「うわっ⋯⋯まぶしっーー」



 扉が開くと、目を閉じずにはいられない程の光に思わず顔を背け、手のひらを頭上にかざし、少しでもその照りつける太陽を遮断しようとする。


 身をかがめながら一歩踏み出す。



シャッーー



 さらさらの土砂に私の靴が埋もれる。


 体を外に出すと、後方のVULTヴルトの扉がゆっくりと閉まった。

 私はその扉が閉まる様を確認し再び前を向く。


 そろそろ大丈夫そうだ。


 この明るさ、眩しさに慣れて来た頃、頭上に翳していた手のひらを下げ、ようやく細めていた目を見開く。



 そしてその陽光の先にあったのはーー



発見 VULT111 EXP0



 乾いた大地に肌寒い風。

 砂埃が舞うその大地でまず目にしたのは薄汚れたボロ車。

 窓ガラスは綺麗に無くなり、ドアが外れて地面に落ち半分土に埋もれている。

 そんな廃車がいくつか乗り捨てられている。


 そしてそれを囲うフェンス。何か物凄い衝撃でも食らったのか、折れ曲がったフェンスは原型は留めていない。


 その廃車が点在する大地に一際目立つ建物がある。

 無残にも割れた窓ガラスの破片が散らばり、外からでも中の様子が丸見えだ。

 中には機械のようなものが置かれていて、その前に背もたれ付きの椅子が転がっている。

 機械の横には赤くて丸い飛び出たボタンがある。

 これはおそらく、今出てきたVULTヴルトの分厚い扉を開けるスイッチ。


 そしてこの場所はVULTヴルトの検問所だったのだろう。




 私は感動した。

 やっぱり私の望んだ世界だ。


 『ウェスタランド』に散りばめられた異物の数々。

 本来ならこんな世界では誰も過ごしたくないだろう。

 しかし、そんな不必要な異物でも、この世界では必要不可欠なのだ。


 これぞまさに、あのF.o.D.ーー


 私は周りを見渡し、機械があるボロい建物に入った。

 建物って言っても小さいプレハブみたいなやつだ。



「わぁ、すごっ!」



 その小さいプレハブに入ると、外からでは見えなかった位置に縦長の金属ロッカーが置いてある。

 ロッカーの中にはさまざまな薬品類や、武器などもあった。



「あっ、これ銃じゃん! プカコーラとスチムパックまであるよ」



 私はさっそく見つけた物をインベントリに入れようとしたが、今更気が付いた。


 ーーインベントリって、どこ?


 ゲームをやっている時は、入手した後勝手にインベントリに入ってたけど。

 |○(マル)ボタンでPitboyピットボーイを見て、インベントリもそっから見ていたから⋯⋯。


 どうしよう。

 とりあえずPitboyピットボーイを見てみよう。

 何か方法があるはず!



「えっ、ちょっと待ってこれ⋯⋯どうやって項目選ぶの?」



 私はもっと致命的な事に気が付いてしまった。

 それはPitboyピットボーイの中にある項目を選べない事。


 ゲームでは十字キーで選んで、○ボタンで決定だった。でも今はコントローラーなんてないし。


 まじで困った。



「⋯⋯お?」



 どうしようかと考えながら、Pitboyピットボーイのダイヤルを回してる時だった。

 画面に指が当たり項目が切り替わった⋯⋯。



「これ、直接選ぶの?」



 試しにダイヤルを防具覧に合わせて、今着用してる服の所をポチッと押してみた。

 ちなみに今はVULTヴルトのジャンプスーツを来ている。それ以外は何も。


 するとーー



「えっ?」



 ちょっと、なんか下着だけになったんだけど。

 ジャンプスーツ脱いだって事?

 嘘でしょ? 寒いし下着の趣味悪いし。オバサンくさい。


 私はすぐに、同じ事をしてジャンプスーツを着用した。

 もう、なんでこんな所で下着姿にならなきゃなんないのよ。変態じゃないんだから。


 でもこれでPitboyピットボーイの操作方法はわかった。次はインベントリ⋯⋯。


 私はPitboyピットボーイのインベントリ覧に、バックの形をしたアイの文字が書いてあるアイコンを見つけた。

 試しにそれを押してみると⋯⋯。



「うわっ! なにこれ?」



 目の前に、半透明の四角い枠のようなものが現れた。

 これにアイテム入れろって事? 嘘でしょ⋯⋯。

 しかし半透明の枠に触ってみても何も起こらない。手をその枠を通るように振り回しても特に何も。


 再びIのアイコンを押すと、半透明の枠は消えた。


 これってやっぱり、枠にアイテム入れるの?

 私は半透明の枠を再び出し、試しに近くにあったプカコーラを枠に近付けてみた。



「⋯⋯消えた」



 プカコーラを枠に近付けた瞬間、プカコーラは目の前から消えた。



「これで、インベントリに入ったの?」



 Pitboyピットボーイのインベントリ覧を確認してみる。

 するとプカコーラと書いた項目があった。やっぱりこれにアイテムを入れるんだ、と思った私はとりあえず必要な物を枠に入れた。


 まずはスチムパック、それと銃。あれ? 銃はわざわざインベントリに入れなくても、そのまま持てばいいよね。


 銃を手に持ち、Pitboyピットボーイの武器覧を見ると、銃の横にEマークが付いた。これは装備してるという記号。

 試しに武器覧の銃を押してみるとEマークは消えた。そして手に持っている銃も消えた。

 どうやら装備を外すと勝手にインベントリに入るようだ。

 そして再び装備すると、手に銃が現れた。



「すごっ⋯⋯勝手に持ったよ」



 よし、これで大丈夫だな。

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