第3-3話 相談(3)
「ああああ! だからごちゃごちゃうるさいと言ったのに!
「わたくしは悪くありません。
白衣を着た女性――
「ううぅ……我が科学部PRのために、せっかく生徒会から貰った中庭掃除の仕事なのに……! 貴様の邪魔のせいで校長の銅像が粉砕してしまったではないかッ!」
「あの、そもそも何をどうミスしたら銅像の上半身が消滅するんですの……? 彼方の持ってるソレ、一体なんなんですの?」
「超次元圧縮式空間消滅砲だ」
「掃除ですよね!? 中庭を消滅させる気だったんですの!?」
「そんなわけあるか! この機械はかなり細かい対象設定が可能でな、中庭に存在する微細なゴミだけを消滅させるつもりだったのだ。しかし、貴様のせいで設定が狂って対象範囲が銅像の上半身にズレてしまったのだ!」
「どういうズレ方をしたらそうなるんですの!?」
「後一メモリ間違えれば半径数キロメートルの人間の手足を完全消滅させるところだったんだぞ!」
「それはわたくしの責任ではありませんからね!?」
白衣の女性――彼方は苛立たしげに金髪のお嬢様へ指を突き立てる。
「ほんと、貴様は何の目的があって私に付きまとうのだ!」
「バカですの? わたくしの目的なんて貴女の邪魔以外ありえないですわよ?」
「やはりお前のせいじゃないか!」
愛結はやれやれと被りを振った。
「まあ、仕方ありませんね。この件については、わたくしにも落ち度がないわけではないですし。お詫びとして、この銅像を修復してさしあげますわ」
「はっ! 魔法でもあるまいし! そんなことできるわけがあるまい!」
「あら、わたくしが魔法使いだということを忘れていませんの?」
そう言うと、お嬢様は黒いスカートの内側から魔法のステッキを取り出し、杖先を大破した銅像へと向ける。
「わたくしの魔法を見て驚くがいいですの! ――汝、在るべき姿を取り戻し、我が前に顕現したまえ! みらくる☆レスタレイションですの!」
詠唱を終え、お嬢様がぱちんと指を鳴らすと……どこからともなく数人の黒服が現れた。
黒服たちが無線でなにやら命令を交わすと、数秒して学校の上空に荷台を積んだヘリコプターが一台、超高速で飛んできた。黒服はヘリコプターから吊るされて落ちてきたブルーシートで包まれた何かを受け取め、代わりに大破した銅像をロープに結び替えた。銅像のあった台に何かを載せ、ブルーシートの中身を確認すると、黒服はお嬢様にぐっと親指を立てて音もなく去っていった。
愛結がシートをはぎ取ると、そこには綺麗に仕上がった銅像が復活していた。
「見事に成功ですの」
「待て待て待て!? 今のはなんだ!?」
「魔法ですの」
「明らかな物理現象だったよな!?」
「MP《マネーポイント》を消費して超常現象を引き起こす、どこからどう見てもれっきとした魔法ですの」
「え、え……ええ!? 魔法とはなんだ!?」
「お金の力ですの」
愛結は言い切った。
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