第5話 じわじわと迫りつつあるイヤなやつ
ちわっす、あたいだよ。
世間の十連休は終わっても、あたいの連休は終わる予定がないから、心身に影響なんて出ないよって、高を括っていたけど、もろに影響あったわ。
ほら、あの「白鳥」っていう苗字しかわからない、新任のケースワーカーからさ、いつ何時かかって来るか見当もつかない、いわば“予告なく来るであろう予告の電話”をこれから先、区役所がやっている平日の午前八時四十五分から夕方の五時まで、お昼休みの一時間を除いて、絶えず待機してなくちゃいけないってわけさ。だいたいが、電話嫌いで、かけることはほぼ不可能。受け取ることは出来なくもないけど、今はスマホ一本槍だから、ディスプレーに電話番号しか表示されていなかったら絶対に出ない。区役所の番号は登録してある。でもって、あたいに電話して来るのって、実父くらいなもので、それも三ヶ月に一回あるか否か。普段、スマホはすんとも鳴らないの。メールだってお一人様しか登録していないし、頻繁に連絡するほどキャピキャピした女子高生じゃないからさ、スマホってなくてもいいんだよね。もちろんLINEなんてものはダウンロードもしてないし、信用もしてない。しかも独り身で割引サービスがなんにもないから“お月謝”が高いんだよ。実父がスマホにしたらしいんだが月額三千円とか言ってたな。年寄り割引だろうね。あたいも、たぶんもっと安くできるんだと思うんだが、スマホの店に行って、半分素人の若造店員の説明を二時間近く受けるのがあまりにも苦痛で行く気にならねえ。なんでさあ、スマホショップの店員ってさあ、みんな手際が悪くて、イライラさせるんだろうね。プロフェッショナルに当たったのは一回きりだね。そん時は、こっちが躁病の絶頂期だったのに、うまく受け流してくれたよ。でも、それにしたって時間は結構かかったね。仕組みが煩雑すぎるんじゃないか? 根本的に見直しをしてくれよ。それっきりあたいは七年以上、iPhone4Sだよ。3Gだよ。もう、修理してもらえないらしいよ。インターネットに接続すると電源落ちちゃうよ。まあいいか。
そうそう、あんたがたは脳みそが暴走することないかい? あたいはねえ、時々あるのさ。他の人は知らないけれど、あたいは寝ている時以外は脳の中でだれかとずっと会話している。今だってしているよ。ぼーっとしてても、飯食ってても、お手洗いに行っても、とにかく会話している。唯一、他人と話している時は……ごめん、間違えた。やっぱり自分の中でも会話しているわ。
普通はその会話、きちんとキャッチボールが出来ているんだけど、たまに、向こう側が勝手なことをなんの脈絡もなく喋って来るときがある。まるでゲリラ豪雨のようだ。そうなると、目をつむってもうるさいくらい言葉を浴びせて来るから寝ることもできない。あたいは向こうが落ち着くのを待つしかない。これを「脳みその暴走」ってあたいは呼んでいるの。パニックの発作に似ているけど、恐怖感はないから違うものだな。理由はわからない。
それが今朝起こったのよ。
それに、今日は朝から何も食べていない。自律神経の調子はいいから関係ない。もしかして「苦行モード」に入ったかな? そうなると、なんかきっかけがないともう食べない。まあ、多少はダイエットになるからいいかな。栄養はたっぷり皮下脂肪に備蓄しているからね。
でさあ、「脳みその暴走」が終わったら、今度は眠くて仕方ない。自然のリカバリー効果だと思っているんだけど、体の方も狂ってるのかね?
まあ、あんたたちも、五月病なんていうのには気をつけておくれよ。芽吹き時は、意外と心身を消耗するんだよ。陽気はいいのにさあ、おかしなもんだ。冬の疲れでも出るのかね?
はい、さようなら。
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